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【TYPE06】海鳴り




語り手:孫娘と祖母

主人公:柊(男)

囮の敵:空木(男)

本当の敵:藤乃枝(ふじのえ)(女)





◆この物語は語り手、孫娘と祖母によって語られる。

孫娘にねだられ、祖母は昔話をはじめる。
それは、海にある祠にまつわる物語だ。

昔々、柊という勇敢な若者がいた。
柊は、自分の名を世に広める為、妖怪退治を請け負っていた。
ある村で、海の祠に巨大な蛇の妖怪が住み着いていると聞き、
蛇が寝ている隙をついて退治する。

そして、祠に囚われていた藤乃枝を助け出し、妻に迎え、そのまま村に住み着く。

大蛇を退治したことで、柊は英雄として扱われていた。

空木は、そんな柊を妬んで、陰口を叩いている。
空木の恋人が、柊に夢中になり、最近つれなくされているとこぼす。
柊は卑怯な手を使って大蛇を退治したか、そもそも退治したことさえ疑わしいと言い、
「蛇のうろこ」も、自然に落ちたものを拾ってきただけではないか、
大蛇がいなくなったのは、偶然だと言いふらしている。


柊は、他には替えがたい「大切なもの」を持っている。
それは、英雄という名声であり、その象徴が「蛇のうろこ」だ。
これは、柊が蛇の化け物を退治したとき、記念に剥ぎ取ったものである。

「蛇のうろこ」を持って、各家を飲み歩き、退治した様子を話して回る。
村人の賞賛を聞いては悦に入り、家に帰らないことも多かった。

そんな時、何者かによって、柊のまわりから「蛇のうろこ」が奪われた!


評判を聞きつけた殿様が、柊にうろこを持って城に来るように言ってくる。
このままでは、ほら吹き扱いされてしまう。


「蛇のうろこ」を取り戻すために、柊は立ち上がる。

柊は、いつも自分の悪口を言いふらす空木が、自分を困らせるために「蛇のうろこ」を隠したのだと考えた。

柊は、空木を敵だと思い込んで追い詰める。

空木は、「お前と一緒にするな」とあざけり、
「俺は、やりもしない退治話をでっち上げたりしないし、それをネタにただ酒を飲んだりしない。
お前みたいな下品な男、うろこがなければ、誰が相手にするか」と言う。

柊が、大蛇退治はでっち上げではない。現に大蛇はいなくなっただろうと反論すると、空木は、「証拠はないんだろう?」とあざ笑う。

村人達も、「蛇のうろこ」に触ればご利益があると言うから、柊をもてなしたのだ。
うろこがなければ用はないと、柊に冷たく当たる。

ところが、空木は敵ではなかったのだ!

そして、本当の敵、藤乃枝が姿を現わす。
藤乃枝は、柊が退治した蛇の化身だったのだ!
あの蛇は、実は土地神で、村を災厄から護っていたのだ。
一方的に自分を悪者と決めつけ、いきなり退治した柊を憎み、
復讐の機会をうかがっていたのだ。

藤乃枝は、柊への復讐のために
「蛇のうろこ」を奪ったのだ。

ショックを受ける柊に、藤乃枝は「うろこを返して欲しくば、祠まで来い」と言い残し、姿を消してしまう。

意気消沈し、祠に行く気力も沸かず、家に帰る柊。
誰もいない、寒々とした家を覚悟していたのに、戸を開けたら、
囲炉裏に火が起こしてあり、食事の支度がしてあった。
鍋を覗くと、雑炊がある。
柊は、慣れない手つきで雑炊をすくい、一口すすって「うまいな」と呟き、涙を流す。

村人が寝静まった頃、祠へと向う柊。


祠に行くと、藤乃枝がいた。
柊は、自分の行いを謝り、愛している、そばにいてくれと懇願する。

藤乃枝は、紙で折った人形と短剣を柊の足元に投げ、
愛しているのなら、この短剣で手首を切り、人形に血を含ませろ。
一滴残らず搾り取れたら、真人間になるだろうさ、と言う。

柊は躊躇うことなく、短剣を首筋に当て、
「真人間になれたら、一緒に暮らそう」と言い、首を切る。

だが、傷一つ付けられず、驚く柊。
藤乃枝は涙を流し、「どうして?」と問いかける。
愛しているから、と答える柊に、藤乃枝は泣きながら、
「私も、愛してる・・・・愛してるから・・・憎んで欲しかった」
そして、藤乃枝の首から血が噴き出す。
驚き、止血しようとする柊に、藤乃枝は「幸せでした」と言い残し、絶命する。

藤乃枝の亡骸を抱き、号泣する柊。
その声は祠の中でこだまし、村まで響き渡る。
声の限りに泣き続けた柊は、ついに命を落とすが、
泣き声だけは、いつまでも祠に反響していたという。


「今でも、潮が満ちると、男の泣き声が響いてくるのさ」
祖母の言葉に、耳を澄ます孫娘。
それに応えるように、悲しげな音が海から響いてきた。