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【TYPE08】転生の記




語り手:如月(男)(ヒト型)

主人公:飛天(男)(獣型)

敵:淡雪(女)(鳥)

大神(おおがみ) 雛(女)(女子高生)




この物語は、如月によって語られる。

帝国が支配する世界、双月。
ここでは、狼の姿をした「ニューマン」が暮らしていた。
かつていた「ヒューマン」は、帝国によって絶滅させられていた。

狼の姿で二足歩行をする獣型と、狼の耳と尾と手足を持つ、ヒューマンに近い姿
をしたヒト型。
獣型は、ヒト型を一段下に見ている。


◆獣型の将軍、飛天は、「帝国の平和を守る」ことを大切にしている。

どのくらい大切にしているかというと…
約二十年前、帝国が世界を統一する為に、前線でめざましい活躍を見せ、
皇帝直属の親衛隊の将軍に抜擢されたほどである。
唯一皇帝に面会する事を許されており、飛天以外に皇帝の姿を見た者はいない。
今でも、皇帝に背く者には容赦しないと、恐れられている。

統一戦争の最中に、自分の子どもをヒューマンに殺されたことで、ヒューマンに
近い姿をしている
「ヒト型」に対する差別意識を持っている。
ヒト型ながら医務局長を務める如月を、目の敵にしていた。


◆ある時、双月には存在しない「鳥」の姿をしたニューマンの淡雪に、
帝国は襲われる。

◆淡雪による破壊は日に日に激しさを増し、帝国は高度な軍事力を持って対抗す
るが、
全く歯が立たず、飛天も返り討ちにあう。

◆帝国の平和を取り戻すために、飛天は立ち上がる。

飛天は、「学者どもに任せてはいられぬ」と、自室に籠もって研究を重ねる。
如月達もまた対抗策を考えていたが、ある日、飛天によって、
「鳥型」を倒すための「兵器」の作り方が発見された。
如月に先んじたことを自慢し、「所詮、ヒト型はその程度なのだ」と、せせら笑
う飛天。

その「兵器」は、「ヒューマン」の血を元に造られるという。

「ヒューマン」は既に絶滅したと指摘する如月に、飛天は「サンプルも残してい
ないのか」と激怒する。
「何としてもヒューマンを発見しろ。出来なければ、お前をヒューマンに改造し
てやる」と言い捨て、再び自室に籠もる飛天。
今度は、如月が、双月の平行世界である「地球」を発見する。そこは、「ヒュー
マン」が暮らす世界だった。
飛天にせっつかれ、開発されたばかりの「亜空間転移」を試みる如月。
「下手したら、原型をとどめない姿で転送されるかも知れませんよ」という如月
に、「兵器」を作る分の血は残しておけという飛天。

そして、ランダムで選ばれた雛が転送されてくる。
事態を飲み込めない雛は、飛天の命令で囚われ、拘束衣を着せられる。
「化け物!」と騒ぐ雛に腹を立てた飛天は、「今すぐ血を搾り取ってやる」と抜
刀するが、
周りに止められて、渋々雛を生かしておく事にする。
「黙らせておけ」と言って立ち去る飛天。如月は、雛を薬で眠らせる。

「ごめんよ・・・。あんたに恨みは無いんだけどねえ。運の無い子だ」
雛の所持品を探り、「大神 雛」という名前を見つける。
「おおがみ・・・おおかみ。嫌な繋がりだねえ」
如月は雛の血を採り、「兵器」を作り出す。

雛の体力を考慮し、一つしか作らなかった如月に、飛天は「ヒューマンに肩入れ
するのか」と笑う。
全ての部隊に行き渡るよう命じる飛天に、それだけの数を作るには、雛の回復を
待たないといけないと主張する如月。
だが、飛天は、「培養すればいいだろう。必要なのはあれの血であって、命では
ない」と言う。
如月は、「将軍が発見した資料からすれば、一つで十分なはず」と主張。「将軍
は、ご自分の発見に自信がないのですか?」
激怒した飛天は、自分が一撃で仕留めると言う。

そして、淡雪が襲撃してきたとき、飛天がその「兵器」を打ち込んだ。

◆すると淡雪は死んでしまった。
地面に落下し、ぴくりとも動かない。
歓喜する周囲。飛天もまた、珍しく如月を労い、その肩を叩く。
上機嫌の飛天は、囚われの雛を解放するように言う。
「元の世界に返してやれ。原形をとどめた姿でな」
拘束を解かれた雛が連れてこられる。おびえる雛の頭を撫でながら、怖がらせた
侘びを言う飛天。
「ヒューマンであっても、礼を尽くすべきだな。お前のお陰で、帝国は救われた
のだから」
これですべてが終わったかのように見えた。

◆しかし、次の瞬間、淡雪が息を吹き返した。
淡雪は生きていた!
そして、恐慌に陥った周囲を尻目に、飛び立つ淡雪。

突然、飛天は如月と雛を捕まえ、淡雪の後を追う。
そして、そのまま行方をくらませてしまった。

飛天は、帝国領の奥地にある、地下シェルターへと二人を連れてくる。
いくつもの扉のある部屋に通される二人。混乱する如月と雛の前に、扉を開けて
、一人の少女が現れた。
年は十歳くらい、背中に白い羽が生えている。
あの「鳥」だと気づく二人。だが、飛天は「陛下」と呼びかけた。

驚く如月に、飛天は、淡雪が本当の「皇帝」なのだと語る。
現在、皇位は不在なのだ、と。
どういうことかと詰め寄る如月に、飛天は真相を話した。

「統一戦争」の最中、かなりの高齢だった皇帝は、突如息を引き取った。
混乱を恐れた周囲は、皇帝の死を隠した。
「当時、皇后は妊娠していた。出産と同時に皇位を引き継げばいいと思っていた
のだ。誰もが」
だが、生まれたのは、存在しないはずの「鳥型」のニューマン。
皇后はショックのあまり気が触れ、数ヶ月後に亡くなった。
飛天は、淡雪を守る為に、その事実を知るものを全て殺し、淡雪を地下シェルタ
ーに匿った。
そして、自分以外の者に皇帝への謁見を禁じ、身の回りの世話すらさせなかった

「もっともらしい理由を考えるまでもなかった。私に逆らう者などいない。皆、
私を恐れていたからな」
淡雪は先天的に病弱で、このままでは、近いうちに命を終えてしまう。
皇族の血を絶やすわけにいかないと、飛天は研究を重ね、ついに「意識を移植す
る方法」を発見する。
新しい身体に、そっくり意識体を移し替えるという。最初はクローンへの移植を
試みたが、
拒否反応が激しく、ついには「暴走」してしまったという。

淡雪が帝国を襲ったのは、「暴走」の結果だと語る飛天。

「今の陛下の身体は、クローン培養した肉体だ。薬で抑えてはいるが、すぐに拒
否反応が現れる」
そうなれば、また帝国を襲うだろうと言う飛天。

あの「兵器」の話は嘘だったのかと如月に問われ、飛天は「自分のでっち上げだ
」と言う。
偽の兵器を発見した振りをして、ヒューマンを捜させるためだった。
飛天は、最初から如月と雛を誘拐し、ここに連れてくるつもりだったのだ。

雛は、それが自分とどう関わるのかと聞く。
「ニューマンでは暴走が起こってしまう。だが、ヒューマンなら、あるいは」
自分の身体を使われると知り、驚く雛。
今の自分はどうなるのかと問う雛に、消える、と答える飛天。
「必要なのはお前の身体であって・・・意識ではない」
そんなのは嫌だと、如月にしがみつく雛。
反射的に雛を背後にかばう如月だが、飛天に「皇帝を守るため」だと言われ、動
けなくなる。
何故自分なのかと叫ぶ雛に、「他の者では駄目なのだ」と言う飛天。
「皇帝とのシンクロ率が一番高い者を選別した結果が、お前だった。ランダムで
選ばれた訳ではない」
転送装置にまで細工をされていたと知り、ショックを受ける如月。
「皇族の血を絶やすわけにはいかない。帝国のためだ、如月。分かってくれ」

動かない如月に、雛は必死で命乞いをする。

その時、淡雪が飛天の前に立ちふさがり、両手を広げ、
「ショーグン、お姉ちゃんをいじめたら駄目なの。それはワルイコトなの。ショ
ーグンがワルイコトをしたら、悲しいの」
飛天は「陛下の仰せのままに・・・」と呟いて、部屋を出て行った。

淡雪は、飛天を許して欲しいと言う。
「ショーグンは、私のこと助けようとしてるの。でも、それはむつかしいことな
の。ね?
私は、ショーグンがそばにいてくれればいいの。だから、お姉ちゃんとお兄ちゃ
んを帰すよう、
ショーグンにお願いしておくの。それまで、スキにしてて。ね?」

淡雪がいなくなった後、如月と雛は、シェルターの中を探索し始める。
入り口はロックされているが、居室部分は入り込めた為、二人は一つの部屋に入
り、椅子に座った。
「あのヒト、将軍なんだ」と呟く雛に、如月は笑って、
「ヒトなんて言っちゃあ、いけないねえ。将軍は、獣型であることに誇りを持っ
ているから」
雛に、双月の世界について説明する如月。
獣型とヒト型のニューマンがいて、ヒト型は全てにおいて差別される事、特に飛
天は強硬派だと話す。
「いつだって、あたしを目の敵にしていた。ヒト型でありながら、要職について
いるあたしを」
ひどい奴だと怒る雛に、如月は笑って、
「いや・・・ひどくないよ。ひどいのは、分かっていながら、それに甘んじたあ
たしのほうさ」
いぶかしがる雛に、如月は、飛天の行動が、部下の獣型のにとってはガス抜きに
なり、ヒト型にとっては
自分に同情する種になると話す。
如月の両親は獣型で、自分はまれに生まれる「キメラ」なのだと言う。
「たまにあるのさ。遺伝子のいたずらがねえ」
「キメラ」の他、障害を持って生まれた者は「規格外」とされ、施設に収容され
るのが決まりだった。
如月もまた、生まれてすぐ両親と離され、施設に収容された。
弟もいたらしいが、こちらは獣型で、生まれてすぐ亡くなったらしい。
「母親は随分前に亡くなったらしいけどねえ。あたしは、葬儀に顔を出すことさ
え許されなかった」
その後も、父親が陰ながら面倒を見てくれたと言う如月。
両親が高い地位にいたため、自分もヒト型でありながら順調に出世をした。
そのことをねたむ者も多かったと言う。
だが、飛天が差別感情をむき出しにして如月を責め立てるほど、周囲は如月に同
情を寄せた。
「お陰で仕事がやりやすかった」と言う如月。
「不満は全て、将軍が代弁してくれる。皆は、あたしに同情の言葉を吐いていれ
ばいいだけ。
偽善者どもの集まりさ、あそこは」
本気だったのではないかと指摘する雛に、如月は笑いながら「そうかも知れない
」と言う。
「時々分からなくなるね・・・将軍の本心が」
それから、雛の世界について話して欲しいと頼む。
雛は自分の家族について話し、「将軍を見ていると、お父さんを思い出す」と言
う。
「頑固で、堅物で、世界は自分を中心に回ってると思ってるのよ!」
父親への反発を口にする雛に、如月は、名前を聞く。
「お父さんは大神 誠。お母さんは有希子。子どもは私一人」
家族に会いたいかと聞かれ、雛はうつむいて「会いたい」と言う。
自分はどうなるのかと問う雛に、如月は「大丈夫だ」と言う。
「皇帝陛下の命令は絶対なのさ。特に将軍にとってはね」

◆雛と如月が連れてこられてから数日が経つが、飛天はその間殆ど姿を見せなか
った。
代わりに、淡雪があれこれと話をする。
淡雪は、飛天が如月の事を話していたと言う。
「ショーグンはいつもあなたのこと褒めてたの。ゆーのーなケンキュウシャだか
ら、私が皇帝になったら、ふさわしい扱いをして
あげなさいって。ショーグンは、獣型もヒト型も、同じように扱われる、サベツ
のない世界にならないと駄目だって言うの。
私なら、それが出来るって。でも、私は皇帝になれないの。ね?私は、ええと、
もうすぐシぬのね。ショーグンはイッショーケンメー
だけど、でも、とてもむつかしいわね?私は、ショーグンが一緒にいてくれたら
、それでいいの」
雛は、淡雪に「将軍が好きか」と問う。淡雪はにっこり笑って「大好き」と答え
た。
「ショーグンはとっても優しいの。私、今度生まれるときは、ショーグンの子ど
もになるの。皇帝より、そのほうがいいわね?」
再び、飛天を許して欲しいと言う淡雪。
「ショーグンには昔、こどもがいたの。でも、ヒューマンが殺しちゃったの。だ
から、お姉ちゃんに怖い事言うかも知れないけど、
本当はとっても優しいの。私から、お姉ちゃんの事許してって言うから、お姉ち
ゃんもショーグンのこと許して。ね?」
淡雪の言葉に、動揺する雛。如月は、「あんたが殺した訳じゃない」と慰める。

ある日、雛が簡易キッチンで食事を作っていると、ふらりと飛天が現れる。
警戒する雛に、飛天は家族の事を尋ねる。
雛は、「将軍は、お父さんにそっくりだ」と言う。
ここぞとばかりに、飛天をののしる雛。
「何時だって、自分が正しいと思ってるのよ!人の事はお構いなしで、自分の都
合ばっかり押しつけて!!」
父親が嫌いかと聞かれ、「大嫌いだ」と言う雛。
「会いたいか」と聞かれ、雛は突然涙を流しながら、「会いたい」と言う。
「会いたい・・・お父さんとお母さんに会いたい・・・帰りたい・・・お願い・
・・何でもする・・・
何でもするから・・・家に帰して・・・」
泣きじゃくる雛に、飛天は再び「父親が好きか」と尋ねる。
「・・・大好きよ。もう喧嘩しない。ちゃんと言う事聞く。だから・・・会いた
い・・・」
飛天は「そうか」と言って、部屋を出て行った。

飛天は如月の元に現れ、「何を考えている?」と問う。
「あの子の両親のことを」と答える如月。
「きっと、気も狂わんばかりに心配し、捜しているでしょう。何処に行ったの?
早く帰っておいで。これからは優しくする、
怒ったりしない、だから帰っておいで、と。多分、あの子の好物を用意して」
ヒューマンに、そんな情があるのかと呟く飛天に、
「親の愛情に変わりはないでしょう。種族が違っても」

飛天は、如月と雛を鍵のかかった部屋へと連れてくる。
中には、大型のコンピューターがいくつも並んでいた。
「亜空間転送装置」だと気付く如月。飛天は、雛の腕をつかんで、装置の中に押
し込んだ。
混乱し、助けを求める雛に、飛天は、「記憶を消し、元の世界に帰す」と言う。
その言葉にほっとする雛、だが、淡雪はどうなるのかと聞く。「助ける方法は見
つかったのか」と問う雛。
「見つかった」と答える飛天に、突然「嘘つき!」とガラスを叩いて叫ぶ雛。
「嘘つき!!見つかってなんかないくせに!!お父さんと同じ!!嘘付くときの
顔が、お父さんと一緒!!」
ガラスを叩き、出してと叫ぶ雛。
「私一人、蚊帳の外にしないで!!一緒に考えたら、何か思いつくかも知れない
じゃない!!」
嘘つきと責め立てる雛に背を向け、飛天は操作を始める。
如月は、なおも騒ぐ雛に近寄り、「将軍を許して欲しい」と言う。そして、飛天
と操作を交代すると言う。
「あの子に、ちゃんと説明してあげて下さい。ご自分の言葉で」
飛天は雛に近寄り、ガラス越しに雛の手に自分の手を重ねる。
「怖い思いをさせてすまなかった」と謝り、「父君と仲良くな。お前が愛する以
上に、お前の事を愛しているよ」と言う。
何で分かるのかと問う雛に、「私も、かつて親だったからだ」と答える飛天。
「親の愛情に変わりはない。例え種族が違っても」
その言葉に、「子どもの事・・・聞きました」と言って、泣き出す雛。
「ごめんなさい」と繰り返す雛に、「お前が謝ることではない」と言う飛天。
「済んだ事だ。私は、お前を憎んではいない」
装置の作動する音に、雛は、「まだ名前を聞いてない」と叫ぶ。
「飛天だ。良かったら、覚えておいてくれ」
泣きながら、「絶対忘れない」と言う雛。装置が作動し、雛の姿は消える。

静かになった部屋で、二人で考えれば、淡雪の事もなんとかなると言う如月。
「大丈夫ですよ。これだけの設備を、誰にも知られずに用意した将軍なら」
だが、飛天は首を振って、「もういいんだ」と言う。

◆飛天は、如月を淡雪の元へ連れてくる。
ベッドに横たわる淡雪は、うつろな目を向けて、「ショーグン?」と弱々しく言
った。
「ここにいますよ」と答え、淡雪の手を取る飛天。如月は、淡雪の目が殆ど見え
なくなっていることに気付く。
あまりに急な悪化に、「どうして・・・」と呟いてから、はっとして飛天を見る

「まさか」
飛天は答えず、淡雪の手を握り、そっとさする。
「ショーグン・・・ここは寒いの・・・あっためて・・・」
弱々しく呟く淡雪の身体を抱きしめる飛天。淡雪は「あったかい」と呟く。
「ショーグン・・・今度・・・生まれたら・・・私の・・・お父さんになって・
・・くれる・・・?」
「お心のままに」と答える飛天。淡雪は笑顔を浮かべて、「大好きよ」と言う。
「すまんが、二人だけにしてくれないか?」
飛天に言われ、如月はそっと部屋を出る。
「どうして・・・そうやって、何でも一人で背負い込むんですか」
如月は涙をこぼしながら、絞り出すように言った。



数ヶ月後。如月は、局長室で書類を整えながら、飛天の様子を思い返していた。
捕らえられた飛天の裁判は、驚くほどの早さで結審する。
判決は流刑。
帝国と皇帝に対する侮蔑の言葉を吐き、自分こそが神だと叫ぶ飛天。
雛と如月をさらったのは、自分が帝国と「ヒューマンども」の双方を支配するた
めに「改造」する為であり、
「あの無礼な小娘」は、切り刻んで喰ってやったと話す。
当事者であった如月は証言を求められ、「すべてその通り」だと認め、同時に、
自分は、もう少し救助が遅れていたら、
自らの命を絶つつもりだったと話す。
帝国への忠義を口にする如月に、周囲は口々に褒めそやした。

皇帝が既に亡く、皇族の血が絶えた事に帝国は震撼し、それはそのまま飛天への
極刑を望む声へと変わる。
最後までふてぶてしい態度を崩さなかった飛天に、当初は死刑が当然とされてい
たが、如月の提案により、流刑へと変わる。

如月の提案とは、飛天を「地球」へ転送し、ヒューマンとして暮らさせる事だっ
た。
誇り高い将軍に、これ以上の屈辱はないだろうという如月の言葉は、熱狂的に受
け入れられた。

自分の手で処刑したいという如月の願いは通り、如月は処刑直前、飛天と二人だ
けで話す機会を設ける。
「狂った頭で、どのような思考をしているのか、興味がある」と言い、「部下が
立ち会えば、口を割らない恐れがある」
と言って、監視カメラを切り、二人きりにするよう要求した。
万が一を想定して、盗聴だけするように命じる。
部屋の中、強化ガラスを隔てて向き合う二人。
如月は冷ややかに「ヒューマンになる気分はどうですか?」と聞く。
拘束衣を着せられ、椅子に縛り付けられた飛天は、床に向かって唾を吐くと、「
必ず戻ってくる」と言う。
「その時は、真っ先に貴様を引き裂いてくれる」
そう言いながら、飛天は唯一動く足で、床に文字を書く。
「楽しみですよ」と言いながら、足の動きに注意を払う如月。
『めいわくをかけたなすまなかった』
その言葉に、如月の目に涙が溢れる。
「所詮ヒト型のお前に、私の崇高な理想は理解できないのだ」と、吐き捨てなが
ら、飛天はゆっくりと足先を動かす。
『わたしをにくんでいるか?』
如月は首を振り、涙を流しながら、必死で声を繕う。
「あなたの狂気見抜けなかったことは、反省していますよ」
ふんっと鼻を鳴らす飛天。「所詮、その程度なのだ」
『げんきでな』
如月は飛天を見つめ、指でガラスに文字を書く。
『からだにきをつけて』
一瞬ためらってから、再び指を動かす如月。
『おとうさん』
不意に飛天の顔が緩む。
『ありがとう』
それが、二人が交わした最後の言葉だった。

如月は、手にした書類に目を落とす。
処刑方法は如月に一任された為、如月は「研究の為」と称して、部下を使わず自
分一人で全てを処理した。
飛天の考案した、「意識を移植する方法」を使い、意識レベルを落とし、ヒュー
マンの女性の受精卵に移植する。
無事に誕生した赤子は、元気な男児であった。

もう一人、如月は意識の移植を施す。
飛天と如月によって秘密裏に運び込まれた、淡雪の「意識体」を、時間軸を移動
し、
飛天より三十年後の世界で、こちらも受精卵に移植する。
難産で生まれた赤子は、両親にとって大事な一人娘となる。

如月が手にしているのは、二つの命に関する報告書。
そこに記された名前は、「大神 誠」と「大神 雛」だった。