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【TYPE09】塔




主人公:アルヴィ(男)

ジェイル・バード(男)

近江(蜥蜴女)

吉野(兎男)

シエリナ・ロシェ(女)





フィルナ王国には、遙か昔から立つ古い塔がある。
その塔からは、時折魔物が現れ、人を襲うが、その都度騎士団によって退治され
ていた。

過去、歴代の王達が塔の攻略を試みたが、常に失敗に終わっていた。
編成された探索隊はついに戻ることはなく、何時しか、「塔の最上階は地獄につ
ながっている」
と噂されるようになった。
十年前、王子が塔に入ったまま行方不明になり、王と王妃は心痛のあまり亡くな
ってしまう。
この事件をきっかけに、探索は打ち切られ、今は王妃の弟が国を治めていた。
今では、触らぬ神に祟りなしと放っておかれ、時折の魔物の襲撃さえ、人々は「
不幸な天災」と考えていた。

◆アルヴィは、フィルナ王国の騎士だ。
剣術では右に出る者はなく、自らの命を省みない勇敢さと、敵に対して容赦のな
い性格で、有名だった。
孤児のアルヴィは、「思い残す事もない」と言っては、魔物の襲撃の際には率先
して出撃し、
命を捨てるような行動にでる。
身体に刻まれた傷跡が増えるのを、むしろ喜んでさえいた。

アルヴィは他には替えがたい「大切なもの」を持っている。それは、友人である
宮廷魔導師のシエリナ。
シエリナを「シェル」と呼び、「俺が死んだら泣いてくれる、唯一の存在」と言
っていた。
自分を男扱いするアルヴィに、シエリナは憤慨するが、アルヴィは「俺の愛情表
現だ」と笑って、改めようとしない。
アルヴィは、何時の日か塔の最上階に昇るのが夢で、シエリナに「その時は、お
前も一緒に行こう」と言っていた。

◆ある日、魔物襲撃の知らせを受けた騎士団が現場に駆けつけると、村人が野生
の熊を魔物と勘違いしただけだと分かる。
お詫びに騎士達を歓迎する宴を開くという村人。他の騎士を残して、アルヴィは
先に城に戻る。
暇つぶしにシエリナの部屋に遊びに行くと、血だらけのシエリナが床に倒れてい
た。
驚いて駆け寄るアルヴィ。シエリナを抱き起こした時、突然警備兵が部屋の中に
入ってくる。
医者を呼ぶよう求めるアルヴィだが、警備兵に犯人と間違えられ、捕らえられて
しまう。

すぐに誤解が解けると考えていたアルヴィだが、裁判もなしに、謀反とシエリナ
殺害の罪で「死刑」を宣告された。
謀反を企て、それを知ったシエリナの口を塞ぐ為に襲ったのだという。
驚くアルヴィ。無実を訴えるが、誰も耳を貸さない。
「シェルは親友だ!!俺は親友を手に掛けたりしない!!」

◆牢につながれたアルヴィ。処刑の日が間近に迫ってくる中、彼に命令が下され
た。
それは、例の塔を攻略する事。
塔の最上階には秘宝が眠っているという情報があり、その秘宝を持ち帰れば、恩
赦が下るというものだった。
「つまりは使い捨ての駒って訳か・・・。確かに、死刑囚なら最適だな」
塔の秘宝に、死者を生き返らせる力があるという噂を耳にするアルヴィ。それさ
えあれば、シエリナを生き返らせて、
自分の汚名を晴らせると考える。
「待ってろよ、シェル。俺が必ず生き返らせてやる」

◆タイムリミットは10日間。
アルヴィには爆弾を仕込んだ首輪がつけられる。期限内に戻らなければ、爆弾が
作動するという。
同じく首輪をはめられた死刑囚と共に、アルヴィは塔に送られた。

◆塔に着き、一通り自己紹介をする。
ジェイルは、殺人罪で死刑が決定していると言う。
アルヴィは、ジェイルに「えん罪か?」と聞くが、「本当の事だ」と言われる。
近江と吉野は「不敬罪」。異形の姿をし、「神」だと名乗った為だと言う。
近江は、蜥蜴の顔に人間の女の身体をしている。吉野は、小さな白い兎の姿で、
羽織袴を着ていた。
「本当に神様なのか?」とおもしろがるアルヴィに、吉野は「土着の神だ。旧す
ぎて、お主などには分からぬだろう」と言う。
フィルナ王国が領土を拡大した時に、住処を追われたのだという。
「神のくせに爆弾で死ぬのか?」「神が死なぬと誰が決めた?」
アルヴィはジェイルに、下の名前も教えておいてくれと言う。
「もしかしたら、墓に刻むことになるかも知れないからな」
「バードだ。ジェイル・バード」
何の冗談だ?と聞き返すアルヴィ。ジェイルは「籠」、バードは「鳥」、ジェイ
ル・バードで「籠の鳥」、
つまり「虜囚」を表す騎士の言葉だった。
ジェイルは肩をすくめただけで、アルヴィの問いには答えなかった。

吉野が、マーカーをつけた場所に物質を転移させられる能力があるので、塔の近
くの廃屋を拠点に攻略する事にした。

塔の入り口には魔力による封印が施されていたが、近江が封印を解く。
内部に足を踏み入れた瞬間、魔物が襲いかかってきた。
何とか撃退するアルヴィ達。だが、次から次へと魔物が溢れてくる。
迎え撃ちながら、塔の中を駆け回り、次の階への道を捜す。

限界まで探索し、吉野の能力によって廃屋へと戻り、短い休息ですぐに前回攻略
した地点まで戻る。
アルヴィは相変わらず命を省みない行動に出るが、誰からも異議は出ない。
むしろ、三人はアルヴィを盾にするようになり、アルヴィもまた、率先して囮に
なった。
傷を受ければ、近江が回復させる。
アルヴィは、心おきなく危険な役回りを引き受けていた。

ある晩、珍しく吉野が「一晩休憩したい」と言い出す。
疲労が溜まりはじめ、転移能力が落ちてきているというのが理由だった。
「突然、目の前に見知らぬ光景が広がっていて欲しくはないからな」
急に出来た長い休憩時間に、手持ちぶさたになったアルヴィは、吉野に問われて
、自分のことを語る。
孤児院の前に捨てられていたアルヴィ。家族を持たないと決め、ファーストネー
ムだけで通している。
「自らを粗末に扱うのは何故だ?」
「いらないからさ。俺を必要としてる奴なんて、この世に一人もいない」
当たり前のように話すアルヴィに、吉野は、「本当にいないのか?」と問いかけ
る。
「俺が死んで、泣くような奴はいない」と答えるアルヴィ。
「何だそれは。お主、ろくな人間関係を築いていないな。いかにも友人が少なそ
うだが、本当に一人もいないとは思わなかったぞ」
ずけずけと言う吉野。更に、「仕方がないから、お主が死んだときは私が泣き役
を務めてやろう。せいぜい派手に泣いてやるから、
光栄に思え」
その言葉に、苦笑するアルヴィ。だが、ふと思いついたように、
「あ、一人、いる・・・いや、いた」
何故過去形なのかと聞かれ、「死んだからだ」と答える。
「殺された・・・俺が殺した事になってる。いい奴だった・・・友と呼べるのは
、あいつだけだ。
俺は、必ず秘宝を持ち帰って、あいつを生き返らせる」
アルヴィは、急に怒りを露わにして、
「俺は殺していない。他に犯人がいるはずなんだ。そいつは今も、のうのうと生
きてやがる。
俺は必ずそいつを見つけ出して、殺してやる。シェルの仇を取るんだ」
突然近江が笑い出し、「その前にやることがあるんじゃあないかい?」と言う。
「先ずは、その娘の為に泣いてやる事だね。それから、秘宝を持ち帰る算段をし
な」
そう言って、近江はさっさと自分の部屋に行ってしまった。
ぽかんとするアルヴィに、吉野は「明日は早いぞ」と言って、部屋に追い立てる


自分用の部屋に戻ったアルヴィは、ベッドに腰を掛け、窓から夜空を眺めた。
「そうか・・・俺は、お前の為に泣いてなかったな、シェル」
満月を眺めながら、独り言を呟く。
「今夜は満月だな。お前の好きな、いい月夜だ」
シエリナとの思い出を回想するアルヴィ。
「シェル・・・何で死んだ・・・何で、俺を残して・・・シエリナ・・・」
アルヴィは涙を流し、声を殺して泣いた。

翌日から、再び塔の攻略を開始する。
だが、アルヴィは、囮になるような行動はやめると宣言する。
「秘宝を見つける前に死んじまったら、元も子もないからな」
非難を覚悟していたが、あっさりと了承され、肩すかしを食らう。
そして、攻略の途中、アルヴィは三人の戦闘力の高さに気付いた。
特に吉野と近江は、圧倒的な剣術と魔術を見せつけ、アルヴィは、二人が「神」
を名乗るだけのことはあると、圧倒される。
ジェイルもまた、アルヴィに引けを取らぬほどだった。
「そんなに強いのなら、最初からやる気を出してくれよ」と言うアルヴィに、「
お主が好きで盾になっていたのだろう」と
答える吉野。

攻略の最終日。
上の階に上った途端、魔物の姿が消えた。
訝しがる一行。その階は、奥に扉があり、黒い鎧が扉の前に立っていた。
警戒しながら近づくアルヴィ達に、突如鎧が動き出し、襲いかかってくる。
すかさず反撃するが、鎧はあらゆる攻撃をはじき、傷一つつけられない。
日が沈むまでに戻らなければ、首輪が爆発してしまう為、焦るアルヴィ。
その時、近江がアルヴィに耳打ちする。
「扉の中へお行き。あたしの勘が正しければ、奥に装置があるはずさ。それを壊
しておいで」
「装置?」
訝しがるアルヴィだが、近江に促され、扉へと向かう。
鎧がアルヴィの動きに気付き、攻撃を仕掛けてくる。アルヴィは傷を負いながら
も、間一髪で扉を押し開け、中に滑り込んだ。
鎧は中には入れないのか、扉の入り口で吉野達を攻撃している。
アルヴィの目の前には、銀色の球体が浮いていた。
これが装置かと、剣を振りかぶるアルヴィ。だが、見えない壁にはじかれ、球体
に触れる事が出来ない。
何度も剣を打ち付けては、その度にはじかれる。
苛立つアルヴィ。その時、同じく隙を見て、吉野が部屋の中に滑り込んできた。
球体の前に立つと、前足を顎にあて、考えるポーズを取る。そして、アルヴィに
向き直ると、
「お主、命を捨てられるか?」
唐突に言われ、驚くアルヴィ。シェルを生き返らせるまでは駄目だと言うアルヴ
ィに、吉野は頷いて、
「分かっておる。だから、そ奴の為に死ねるかと聞いておるのだ」
死ねる、とためらわずに答えるアルヴィに、吉野は球体を示して、
「これに剣は効かぬ。魔法もな。素手で触ることだ。指一本でも触れられれば、
壊す事が出来る」
「壊したら、シェルを生き返らせることが出来るのか?」
「私を信じろ」
吉野の言葉に、アルヴィは手を球体に伸ばす。その瞬間、火花が散り、アルヴィ
の指先を焦がした。
アルヴィは反射的に手を引っ込め、黒く焦げた指先を見る。
「だから、命を捨てられるかと聞いたのだ」
こともなげに言う吉野。アルヴィは、今度は両手を球体へと向けた。
激しい火花と激痛に顔をゆがめながら、全体重を掛けて球体へとつっこむ。
指先が触れた瞬間、閃光がほとばしり、アルヴィは気を失った。

◆アルヴィが意識を取り戻したとき、目の前に近江の顔があった。
近江の膝に頭を乗せていることに気付くアルヴィ。
そのまま自分の手を見れば、綺麗に治っていた。
「礼ならいらないよ、ぼうや」
そう言って、近江はアルヴィの身体を起こしてやる。
目の前に、吉野とジェイルが立っていた。
鎧はどうなったのかと聞くアルヴィに、「動かなくなった」と答える吉野。
「装置を壊してしまったからな。あれもこれも、全部がらくたになった」
吉野が示した先には、動かなくなった鎧と、山と積まれた様々なアイテムがあっ
た。
あの装置はなんだったのかと聞くアルヴィに、近江は魔力増幅装置だと答える。
「あの装置で、この塔自体を維持していたのさ。おそらく、頭のおかしい魔導師
が、自分の宝を隠すためにね」
その本人も、もう生きてないだろうがね、と付け加える近江。
秘宝は?とアルヴィが聞くと、近江は山となったアイテムを指さして、
「装置を壊した影響で、効果が消えてしまったよ。置物にはいいかもね」
状況が飲み込めないアルヴィに、吉野は自分の首を示して、
「ほれ、首輪もはずれておる。これでもう、わざわざ恩赦を受ける必要もなくな
ったという訳だ」
だが、アルヴィは呆然とアイテムを見つめ、「全部がらくたか?」と聞いた。
そうだと答える吉野。
「この中に、死者を蘇らせる効果のあるものがあったか?」
「あったかもな」
「壊したら、シェルを生き返らせられると言ったじゃないか」
「言ったな、そういえば」
けろっとして答える吉野。
「ま、間違いは誰にでもあろう」

◆「シェルは生き返らないのか・・・」
次の瞬間、アルヴィの目から涙があふれ出した。
「もう生き返らない・・・もう・・・会えない・・・ああ!シェル!シェル!!

周りの目もはばからず、子どものように泣きじゃくるアルヴィに、吉野は驚いて

「何だ!?何を泣いておる?もう爆弾で頭が吹き飛ぶ心配はなくなったのだぞ?
と言うか、何でお主まで泣いておる?」
ジェイルは涙を浮かべながら、「あなたには分からないんですよ、将軍」と言っ
た。
吉野は困ったように首を振って、
「たかが雌一匹死んだくらいで泣いていたら、干物になってしまうわ。全く、な
んと奇っ怪で醜悪な生き物なのだ、お主等は」
近江は、泣きじゃくるアルヴィの頭を胸に抱いて、
「だからこそ、愛しいのでしょう、ヒトは」
「生憎と、私はヒトを愛しいと思った事はないのでな。まあ、お主らしいな、近
江」

◆吉野はアルヴィの顔を前足でぬぐってやると、
「まあまあ、そう泣くでない。ほれ、お主にこれをやろう」
と言って、アルヴィの手のひらに小さな銀色の球体を乗せた。
装置の核だと言う吉野。記念になるだろうと言う。
「シェルはもう生き返らない・・・」
呟くアルヴィに、吉野はアルヴィの頭を撫でると、
「いいから、取っておけ」

◆廃屋に戻った一行。
抜け殻のようになったアルヴィを、ジェイルと近江が支えている。
吉野だけが上機嫌で、「何処にでも好きなところに連れて行ってやる」と言う。
「シェルの側に行きたい」というアルヴィに、「殺して欲しいのか?」と問い返
す吉野。
うなずくアルヴィに、吉野は「へー」と意外そうな声を出す。
ジェイルが「将軍、どうか・・・」と言いかけるが、吉野は前足でジェイルの言
葉を遮ると、
「私を信じろと言っただろう?」と言う。
「私は嘘はつかん。必要なとき以外はな」
吉野はしれっと言うと、ぐるっと周囲を見回して、
「出てきて良いぞ、シエリナ。私が許す」
その言葉に、泣きはらした顔のシエリナが、物陰から出てきた。
驚くアルヴィに、シエリナは駆け寄って抱きつくと、そのまま泣きだした。
抱き合ったまま泣き出すアルヴィとシエリナ。
もらい泣きするジェイルの横で、吉野があきれたように、
「目玉が溶けるぞ、全く。シエリナ、1時間後に迎えにくるからな。そ奴の頭に
、よーく事情をたたき込んでおけ」
そう言って、近江とジェイルを手招きする。
ジェイルはアルヴィに近寄ると、肩を叩いて、「また会おう」と言う。
吉野は、近江とジェイルを連れて、姿を消した。

◆吉野達は何処に行くのかと問うアルヴィに、シエリナは「ファルナス」だと答
える。
アルヴィは、その名前が、海の向こうの大陸で勢力を増している新興国だと思い
出す。
みんなその国の人間かと聞かれ、うなずくシエリナ。
シエリナはファルナスのスパイで、吉野達がフィルナ王国の塔を攻略する手はず
を整える為に潜入していたのだという。
死刑囚を塔に送るよう手を回し、吉野達を死刑囚に仕立てて、塔へ送ることにな
っていたのだ。
そして、自分は死んだように見せかけて、姿を消すはずだったと。
「あなたが部屋に入ってきたとき、心臓が止まるかと思ったわ。まさか、魔物出
現が誤報だなんて、思いもしなかった」
本来ならジェイルが捕まるはずだった。お陰で、もう一つ事件をでっちあげなけ
ればならなくなった、と言うシエリナ。
アルヴィが、自分が裁判なしに刑が確定したのはそのせいかと聞くと、シエリナ
は激しく首を振って否定する。
フィルナ王国内にアルヴィの存在を快く思わない者達がいて、そいつらの仕業だ
というシエリナ。
「根っこまで腐っているのよ、あの国は」
そして、自分と一緒にファルナスに来て欲しいと言う。
あなたと離れたくない。目を離すと、何をするか分からないから、と言うシエリ
ナ。
ファルナスが自分を受け入れるのか?と聞くアルヴィに、シエリナは笑って、「
あなたの持っているものを差し出せば」と言う。
吉野が渡した球体を示して、これが、自分たちの目的の品だと言った。「貴重な
物質だから、丁重に扱ってね」と言うシエリナ。
「吉野がくれたんだ」と驚いて言うアルヴィに、シエリナは、「皆が言うほど、
非情ではないのよ。吉野将軍は」と答える。

シエリナは本名なのか?と聞くアルヴィに、自分も吉野も近江も本名だと答える
シエリナ。
元々、自分たちは表に出ないし、下手に偽名を使って、出自を探られると面倒だ
から、と答える。
「ジェイルも?」と聞くアルヴィに、シエリナは肩をすくめて、「あの人、嘘の
つけない人だから」と言う。
本名を名乗らせる訳にいかないし、下手な偽名を使うと、絶対ボロが出るから、
と。
「ジェイル・バードなんて、明らかにおかしいでしょう?死刑囚だし、訳ありな
名前のほうが、かえって怪しまれないと思って」
「やけに無口だった」と言うアルヴィに、シエリナはまじめな顔で、「しゃべる
なって言っておいたの。ボロが出るから」と言う。
スパイには向いてないのではないかと言うアルヴィに、シエリナは首を振って、
ジェイルはスパイではない。今回は特別だと答える。
ジェイルの本名を尋ねるアルヴィ。
「アレクシス・ラグリス・フォン・フィルナ。フィルナ王国の第一王位継承者で
、陰謀によって行方不明にされた王子よ」
シエリナは、フィルナを正当な継承者の手に取り戻すのが、自分たちの目的だと
付け加えた。
「手を貸してくれる?アルヴィ」
アルヴィは、シエリナの手を握り、
「俺は、シェルの側にいられれば、それでいい」と答える。

迎えに来た吉野は、物陰から抱き合う二人を眺め、「1時間でも足りないのか?」とぶつくさ言っていた。