
こちらでは読者の皆さんからお寄せいただいたあらすじ作品をご紹介します。
この回は、下記の課題に対して提出された作品です。
★課題★ 「どんでん返しを作ろう!」
『裏切りの理由(オープニング)』から
好きな作品を選んで、
それから発想する「どんでん返し」を作ってください。
怒涛のどんでん返し全作品

●題名:キレた女教師(作:mitu01)
◎●◎オープニング◎●◎
職員室には、まだ誰もいなかった。
窓際に置かれたポットから湯気がもくもくと上がっている。
ぼんやりとそれを眺めながら、直荷喜連子は重いため息をついていた。
喜連子は私立北ノ湖学園の教師だ。
今年になってから担任は受け持っていない。
一ヶ月後に退職する事がもう決まっているからだ。
本当は寿退社になるはずだった。だが……
――今日、あの女は来るだろうか。
あの女が来たら、冷静でいられるだろうか。
扉の開く音がした。
「ああ、おはようございます。早いですなあ」
あの女じゃなかった。サッカー部の顧問をやっている社会科の先生だ。
「ああっ!」
その先生は窓際の音楽教師の机に駆け寄った。
「酷い。誰がこんな事を」
彼は、机の上でびりびりに破れた書類を手にして言った。
それをやったのは、喜連子だ。
昨夜、結婚するはずだった佐田政史から電話があった。
『ごめん、婚約を解消したい』
『どうして!』
喜連子は後輩の音楽教師に、佐田を奪われていたのだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:mitu01
彼氏を奪われるきっかけになったのは、学校に撒かれた中傷ビラだった。
喜連子はそれを音楽教師がやったのだと思い、問い詰めるが、
しかし彼女はそれを否定し、さっさと学校を辞めてしまう。
探偵のような真似事をして分かったのは、
実はそれをやったのは佐田政史だという事だった。
彼は、両親から親兄弟のいない喜連子との結婚を反対されて気が変わったのだ。
しかし、それを知っても喜連子は彼をせめなかった。
自分にとって本当に大事なのは教師という職業だという事を思い出したのだ。
喜連子は退職届を撤回する。
しかし、校長は渋い顔をする。
落ちこぼれなど放っておいて一部の優等生にあわせ
授業を進ませてほしいのだが、喜連子の場合はそうじゃなかったのだ。
校長は条件をだす。
どうしょうもない不良連中だけを集めたクラス、
その担任を一ヵ月後の終業式まで受け持って
何の問題がなかったら考えてもいいと。

(女は家庭にいるものだと思う彼氏のため、
小さい頃からの夢だった教師という職業をやめるほどに大切なものだった)と作者が書いてきてくれた。
それが後半、(自分にとって本当に大事なのは教師という職業だという事を思い出したのだ。
喜連子は退職届を撤回する。)ということになる。
つまり、Wの選択はこれでばっちりということじゃ。
主人公は成長した。
しかし、今度は校長がとんでもない条件を突きつけてきた。
ここからがけっこう長くなりそうな話になったが、これはこれでアリじゃ。
喜連子の選択が間違っていないことを祈る。
それにしてもひどい奴じゃなあ、佐田政史。

●題名:食べる食べる大福(お題:ブンコ/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
甘いものの大嫌いな主人公。
だが、商店街の「イチゴ大福早食い大会」に出場し、優勝を目指している。
甘い餡とイチゴにめまいを感じながら、必死で大福を口に押し込む。
主人公の視線の先には、妻と娘と、「パパ頑張れ」と書かれた横断幕。
そして、優勝商品の「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」。
主人公は、「待ってろ。パパは必ず優勝するからな・・・!」と心に思い、
両手で大福をつかんで、二個一緒に口に押し込んだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公は仕事一辺倒の会社員。
ある日、重要な資料が入ったCDがカバンから盗まれる。
財布などの貴重品はそのままだった為、社内の人間の仕業だと疑う。
しかし、ライバルの社員を問い詰めると、「自分はもう出世競争に嫌気が差した」と言われる。
そして、妻から、娘の机の引き出しにCDが隠されていたことを教えられる。

★さあ、ここからどう話が大福につながっていくのか。
非常に楽しみなのじゃ。参ったなー。(笑)

●題名:楽譜の読めないバイオリニスト(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
CDの音色に、全神経を集中させる主人公は、聞き終えると、
今の演奏を完璧に再現してみせる。
「相変わらず、君の才能には恐れ入る」
感心する師匠に、照れる主人公。
「これで、楽譜さえ読めればねえ」
続く言葉に、今度はがっくりする。
主人公は楽譜が読めないのだ。
どう見ても、音符がおたまじゃくしにしか見えない。
その為、聞いてはその音を再現するを繰り返し、
今では一度聞いた演奏は完璧に繰り返すことが出来る。
だが、その演奏は他人の物であり、
主人公は「機械的に演奏しているにすぎない」と評価されていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
技術はあるものの、独創性がないということで、
コンテストで入賞した経験がない主人公は、次のコンテストで入賞したら、
恋人にプロポーズしようと考える。
だが、用意していた指輪をケースごとなくしてしまう。
師匠の息子は、主人公の恋人に振られた過去がある。
主人公は師匠の息子を追い詰める。
しかし、師匠の息子には、既に別の女性がいた。
指輪は、主人公の恋人が隠していたことが判明する。
恋人は、主人公に他人の真似ではなく、自分の演奏をして欲しいと考えていた。

★「自分の演奏をする」ことと「恋人へのプロポーズ」とをつなぐために
それぞれのテーマを象徴する小道具をリンクすることを提案したい。
例えば、主人公は指輪を自分のバイオリンケースに隠しておいたのだが、
恋人はそれを知らずにバイオリンケースごと隠してしまう。
ある高名な音楽家に「彼は楽器に頼りすぎている」と聞かされたからだ。
楽器(と指輪)を失ったせいで主人公は思うような練習が出来ない。
しかし、おかげで生まれて初めて謙虚に楽曲と向かい合うようになり…。
みたいな感じじゃな。道具は物語の非常に重要な要素である。

●題名:殴り返す老婆(お題:ぴこ蔵/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
主人公は、不良仲間4人とともに、日々ゲームセンターやコンビニに
たむろしており、学校もサボりがちだ。
ある夜、ゲーセン帰りの4人は、老婆が一人で裏道を歩いているのを見つける。
面白半分に、老婆のバッグを奪おうとする4人。
だが、意外な力でバッグをつかんで離さない老婆を、3人はこづきまわす。
老婆に手を上げることを躊躇う主人公を、3人は「弱虫」とあざけ笑う。
カッとなった主人公は、老婆のバッグをつかんで、
「さっさと離せよ!」と殴りかかる。
だが、その瞬間、主人公の身体は飛ばされ、ビルの壁に激突する。
唖然とする主人公。
そして、老婆の腕が、金色の獣毛に覆われているのを見て、目を丸くする。
「やれやれ、しょうがない坊や達だ」と言う老婆の身体は、
見る間に金色のライオンに変化した。
「おいたが過ぎたね、坊や達。お仕置きだよ」
驚いて逃げ出そうとする3人、腰が抜けて動けない主人公。
だが、後ろから複数のメスライオンが現れ、挟み込まれる。
「学校で習わなかったのかい?ライオンの狩りは、複数でするんだよ」
追い詰められた4人は、必死で助けを求める。
だが、ライオンはじりじりと間合いを詰めてきた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公の不良仲間の一人が、何者かに襲われ、意識不明の重体に陥る。
その事件と前後して、老婆がライオンに変身し、人を襲うという噂が流れた。
だが、噂を流したのは、不良仲間の一人だった。
自分の恋人を奪われた腹いせに、仲間を襲ったのだ。

★ライオン人間。これだけで長編大作になりそうな素材じゃ。
あとはもういかにこのスケールを維持するかという問題だけである。
そのためにはさらなる巨悪が登場する必要がありそうじゃな。

●題名:世界を救う魔王(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
魔王と勇者が小競り合いを繰り返す世界。
人間同士の争いがエスカレートしそうになると、
魔王が害悪をもたらし、勇者がそれを収める。
これによって、人間同士の結束を高め、平穏を保っていた。
主人公は、魔王の子供で、今日も好奇心一杯に走り回っている。
世話役の魔物は、主人公に立派な魔王になってもらおうと、
馴染みの勇者に主人公を冒険に連れ出すよう頼む。
そして、主人公には、
「別世界から来た化け物が、世界を支配しようとしている。
このままでは、魔王様が危ない」と言う話をでっち上げ、
勇者とともに旅立つよう促す。
初めての冒険に、興奮する主人公。
その頃、人間界では、魔物とは違う「妖怪」が現れ、人々を不安に陥れていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
「妖怪」が町や村を襲う事件が頻発する。
このままでは世界が破滅すると、勇者とともに旅立つ魔王の子供。
冒険の末、「妖怪」の棲家を見つける主人公。
退治しようとするが、「妖怪」が元は人間だということを知る。
勇者が、人間の死体を「妖怪」に変え、魔王を排除しようとしていたのだ。

★「魔王」「妖怪」「勇者」はいずれも異なる社会を象徴する存在じゃ。
これは意外に『組織』同士の壮大な抗争劇になりそうじゃな。

●題名:吸い込まない掃除機(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
部屋の掃除をする主人公。
はたきがけを終え、掃除機を手にする。
ウィーンという機械音はするものの、一向にごみを吸い込まない掃除機。
だが、主人公はそれをみて、「やったー!!」と万歳する。
主人公は、前から新しい掃除機が欲しかった。
だが、旦那からは「まだ前のが動くだろう」と言われ、反対されていたのだ。
吸い込まない掃除機を放り出し、ウキウキと通信販売のカタログを手に取る。
ここに、主人公の夢の掃除機が載っているのだ。
ソファーに身を投げ出し、目的のページを開くが、その瞬間悲鳴をあげる。
主人公の買いたい掃除機が載っているページが、
何者かに破り取られていたのだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公が買いたいと願っていた、通販の掃除機のページと注文書が
破り取られていた。
主人公は、前日、夫がカタログを片付けていたのを思い出す。
だが、自分で「失くさないように」と、
破りとって料理の本にはさんでおいたのだった。

★本当の敵は「忘却した自分」じゃ。
忘却の原因が例えば「脳に巣食う悪性腫瘍」とかじゃとすると、
この敵のタイプは「狼男」型になるわけじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
主人公は掃除機が壊れ、新たに買おうにもカタログのページも無い。
このままでは掃除機がなくて掃除ができない。
子供がイタズラでカタログのページを切り取ったと思い込み、子供を叱る主人公。
しかしカタログのページを切り取ったのは主人公の夫だった。
そろそろ新しい掃除機を買ってもいいだろうと思い直した彼は、
仕事の帰りに、こっそり掃除機を買って帰ろうとカタログのページを切り取って持ち出したのだ。

★本当の敵は「夫」だったのじゃ。
「ドラキュラ」型というわけじゃ。
これだけシンプルなオープニングでも、
いろいろなことができるものなのじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
【ぴこ蔵賞決定!】
◆作者:山川
主人公は旦那の仕業ではないかと思い、問い詰めた。
すると旦那はアッサリ自分がやったと認めた。
主人公があんまり未練たらしく見ているので、破いて捨てたとのこと。
主人公は腹が立っていた、そして旦那に思いつく限りの非難を浴びせた、
そして掃除機がつぶれたことを伝えた。
旦那は苦々しい様子で、「それなら仕方がないと」と、新しい掃除機を買うことを許可した。
主人公はこうして、念願の新しい掃除機とチョットした勝利感を手にした。
後日、壊れた掃除機を捨てるためになぜ動かないようになったのだろうと思い調べると、
ホースの中に何かが詰まっているのが見えた。
それを何とか引っ張り出すと、それは丸められた紙くずだった。
それをとると、その壊れたはずの掃除機は調子よく動き始めた、
つまり掃除機は壊れたわけではなかったのだ。
その丸められた紙くずを広げると、
なんとそれは、例の主人公の買いたい掃除機が載っているページだった。
主人公は不思議に思いそのことを旦那に聞いた。
すると旦那は、君が新しい掃除機を欲しがっていたので、
古い掃除機にそれを詰めて動かなくしておいたとのこと。
なるほどすべては主人公のためにやったことなのだ、
しかしなぜ例のページだったのか、それも旦那に聞いた。
すると旦那は「だってそうしないと、こうやって聞きに来てくれないだろう」と答えた。

★そうか、まだこんな手があったか!
前号の例題で、このオープニングを受けて作られたどんでん返しを
2作も紹介して、もう来ないじゃろうと油断しておったわい(笑)。
結末のひねりが素晴らしい。
旦那は奥さんが聞きに来るのをわくわくして待っておったわけじゃな。
自分のトリックに気がついて欲しかったんじゃのう。
お茶目な旦那は犯人でありながら探偵役をも務めたわけじゃ。
そんな旦那の優しい気持ちをもう少し丁寧に説明すると
オチの一言もさらにわかりやすくなる。
キレが良すぎると気付かない場合もあるからなー。ここは十全に。
それにしても、syaoさんの作ったオープニングを活かした緻密な構成といい、
全く新しい角度のどんでん返しといい、お見事でした。
というわけで、激戦を制しぴこ蔵賞を獲得したのは山川さんでした!
おめでとうございます!
次の作品にも期待しておりますぞ。

●題名:生きている死体(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
あの日、僕は最愛の人と、自分の心臓を失った。
主人公には恋人がいた。
だが、恋人に「一緒にいられない」と別れを告げられる。
「離れていても、心は一緒」という主人公に、
恋人は「あなたの心臓を頂戴」と言う。
主人公は恋人に心臓を渡し、恋人は姿を消す。
それ以来、主人公は「生きている死体」として暮らしていた。
そんな僕を理解してくれたのは、
「魔法使いに人間に変えられた兎」の女性と、
「『誰か』に声を奪われた」少女だった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
「魔法使いに人間に変えられた兎」の女性は、恋人の妹であり、
心臓を患っていた。
恋人は、妹に移植する為に、主人公の心臓を持っていったのだ。
「『誰か』に声を奪われた」少女は、実は恋人だった。
妹の手術と引き換えに、『誰か』に「声」と「時間」を差し出していたのだ。

★うーん、syaoさん、すまぬ!
これは正直言ってよくわからんかったのじゃ。
最後まで完成してからもう一度読んでみたいものじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
病院で心臓の代わりになるポンプにつながれ、
ベッドから動く事のできなかった主人公に医療研究機関から提案が届く。
かわりの心臓を提供する引き換えに、
研究所内で心臓の移植と代替心臓の研究に協力する。
主人公はその提案を承諾する。
しかし、主人公は病院で別れを告げたはずの口をきけない少女と
ウサギ男が研究施設の中に捕われているのを見つける。
二人はもともとこの研究施設から逃げ出した、実験の被験者だったのだ。
すべてはこの実験施設からはじまっていたのだ。
恋人が主人公の心臓と共に姿を消したのも、
主人公の一族が長命な一族であったため、
その長命の秘密を調査するためだった。

★ほほ〜う。一気にSFに持っていったのじゃ。さすがである。
あとはこれを「僕」の一人称で書くか、三人称で描写するかじゃな。
syaoさんのオープニングのように「僕」の視点で行くとかなりメルヘン。
ユージーンさんのように三人称で行くならかなりハード。
何らかの方法でその二つを混在させるという手もある。
でも、どちらにしても何か切ない感じの物語になりそうで期待大じゃ。

●題名:「くじらのいる湖」(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
主人公は、魔法使い見習い。
今日は、師匠が魔道研究会の会議で留守にしている。
ここぞとばかりに、主人公は一人で魔法の練習をはじめる。
魔道の中でも、技術がいる為、一人で行うことは禁止されている
召喚魔法をものにし、師匠を驚かせようと考えた。
森の湖に行き、練習を始めた主人公。
ここなら人も滅多に来ないから、多少失敗しても大丈夫だろうと思う。
まず、桶に汲んだ水に金魚を出そうとしたのだが、
失敗して湖にくじらをだしてしまった。
焦る主人公。おまけに、くじらは魔力で巨大化してしまい、
湖のふちまでぎっちり詰まってしまった。
まるで、湖全体がくじらに変わってしまったかのようだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
主人公と師匠が所属する魔道協会(研究会は協会の中で開催される)は
日頃から魔術を金に換える不道徳な集団、と新聖教会から批難されている。
魔法で召喚した鯨を死なせてしまうと、イタズラに魔法を使ったあげくに
鯨を殺したと魔道協会は批難され、協会は窮地に追い込まれてしまう。
島国の王国では鯨は海の支配者として、人々が親しみを感じていた事が
事態を複雑にしていた。
主人公は自分の魔術のミスが問題を引き起こしたと思い、
必死に魔道書を調べるがどうしても原因がわからない。
実は師匠が主人公に知られないように鯨を湖に呼び出したのだ。
魔力という危険で強力な物を扱うだけの心構えができているかを試すために。

★いかにもファンタジーな感じのオープニングから、
一転してわし好みの非常に政治的でリアルな大人の話になったのじゃ。
魔道協会はこの難関をいかに切り抜けるのか?
まるでアーサー・ヘイリーのような、ちょっとライブドア感もある(笑)、
知的かつ洒脱にして格調高いストーリーになるかと思われたのだが…。
最後にまたもや主人公のサイズにスケールダウンしたのが惜しまれる。
師匠の企みにもうひとひねりあって欲しかった。
遊びの企画で熱くなって申し訳ないが、可能性を感じるのじゃ。
ここからは何やら全く新しいジャンルの名作誕生の予感が…。

●題名:1万メートルの密室(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
最近話題の名探偵厳正寺大五郎に資産総額1兆円と言われる若王子家の令嬢
若王子玲奈から失踪した婚約者・秋口三朗の行方を探して欲しいとの依頼が
入った。
時同じくしてサンディエゴのマリオネットホテル全体にドーン!という衝撃が
響き渡る。
音がした101号室では激しい衝撃で床にめり込むように焼け焦げた
バラバラの死体が発見された。
鑑識の結果、被害者は少なくとも1万メートルの高度から落下死したと見られ、
状況から落下現場はその部屋だと断定された。
しかし、部屋の高さは3メートルしかなくどこにも穴一つ開いていないのだ!
部屋の遺留品からその被害者は秋口三朗と断定され、
人類の最終兵器・厳正寺大五郎は捜査を開始する!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
大五郎は玲奈と共にアメリカに飛び、そこでの三朗の足取りをたどった。
すると死亡三日前から前日までの足取りが不明なことが分かる。
さらに調査を進めようとする二人だったが、
それを妨害するために何者かが大五郎と玲奈を襲撃してきた。
しかし、大五郎は驚くべき身体能力を発揮して襲撃者達を撃退し、
二人は襲撃者の遺留品から若王子グループの秘密開発施設を突き止めた。
「一体何なんだこの施設は……」潜入した二人は衝撃を受ける。
反重力装置で飛ぶUFO。空間歪曲技術によるワープ装置。
人類の科学ではなし得ない恐るべき技術がそこでは実現されていた。
さらに二人は研究員ケイト・マクガイアによって作られた精神抽出装置を発見した。
それを使えば人間の記憶と心を抽出して別人に移すことができるのだ!
クサいと睨んだ大五郎はケイトを尋問し、
この施設の技術は地球を訪れた異星人から教えてもらっていることと、
秋口三朗と玲奈の父・若王子善政が死亡三日前にこの施設を訪れ、
互いの記憶と心を交換したことを聞き出した。
二人は急いでロスの若王子家の屋敷に向かう。
そこには若王子善政、いや、記憶と心を善政の体に移植した秋口三朗がいるのだ!

★むむむ、本格密室ものかと思ったらSFじゃったか(笑)。
まあ、構成の練習じゃからそれは目をつむるとしよう。
しかしこうなるとぜひとも「記憶と心交換」の目的を知りたいところじゃ。

●題名:駆け抜ける事務員(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
ジリ貧商事の篠原は会社ではマジメ一直線の地味な経理部員だったが、
実は上司の経理部長が無能なことをいいことにして
会社の金を二千万も使い込んでいた。
「こんなザルみたいなあやふやな経理状態の会社、
金ちょろまかすくらいわけない」
と高をくくっていたある日、取引銀行から役員が送り込まれてきて、
経理部にも新しい部長が来た。
「すべての帳簿を整理して一週間後に提出するように」
一週間以内に二千万を補填しなくては、不正がばれてしまう!
困った篠原は、いつも競馬場で会うノミ屋の玄さんに相談する。
「一週間で二千万稼ぐにはこれしかないよ」
そう言って玄さんが紹介してくれたのは、
暴力団赤恥組の組長・赤恥源五郎を殺すヒットマンの仕事だった!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
篠原に他に選択肢はなく、仕方なく赤恥を殺す依頼を引き受けることにした。
「でもどうやって殺せばいいんですか?
今まで人を殺したことなんて一度もないんですよ」
「任せておけ」
そう言って玄さんは、中国に伝わる七星暗殺拳を通信教育で学んだ格闘技マニアと
世界中のありとあらゆる銃火器の取り扱いに詳しいミリタリーおたくを紹介してくれた。
有給休暇をとって一週間彼らの元で血の汗が噴き出るような激しい修行を積んだ篠原。
その甲斐あって篠原の身体能力は驚くほどアップし、
銃火器の知識と熟練度は米軍海兵隊並となった。
「これで準備は整った」
玄さんはどこから手に入れたのか赤恥の一週間のスケジュールと
突進してくる猛牛でも射殺できる威力を持つ拳銃・デザートイーグルを篠原に手渡した。
それらを元に赤恥の身辺を付けねらい始めた篠原。
「もはや事務員というより歩く殺人機械だな」と一人自惚れる篠原だったが、
常にボディーガードをつれて行動する赤恥に隙を見出すことは難しかった。
しかし、そんな篠原に絶好のチャンスが訪れた。
ついに源五郎の愛人宅への潜入に成功し、寝る赤恥の枕元に立ったのだ。
しかし、そこに眠っていたのはなんと玄さんだった!

★これは面白いのう。玄さんが赤恥だったとは! うん、意外でした。
あとはなぜ玄さんがそんなことを依頼したのかが知りたいのじゃ。
クライマックス、期待しておるぞ!

●題名:「たった一人の佐藤さん」(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
日本人で一番多い苗字は何? 答えは佐藤さん。
全国には200万人の佐藤さんがいるのです。
そして、その200万人の佐藤さんがある日突然消えてしまったんです!
そう、職場からも家庭からも「佐藤」と名の付く人は1人残らずいなくなってしまったのだ。
いや、ごめん。いた。
佐藤きみえ(21)。
彼女こそが日本全土を震撼させた「佐藤さん失踪事件」で唯一残った佐藤さんなのです。
そして、きみえ自身も両親と姉と弟をなくした犠牲者だった。
「みんな、一体どこに行っちゃったのよ!」
たった1人の佐藤さんとなってしまったきみえが
雑誌に「今週のイチオシ名探偵」と紹介されていた厳正寺大五郎と共に巨大な謎に挑みはじめた!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
厳正寺大五郎シリーズ第2弾です。
まずきみえの実家を調べたところ、弟の健次郎が使っていた携帯が発見された。
携帯には失踪の一ヶ月ほど前から
「桜川さゆり」という人物との間で頻繁に交換されたメールが残っていた。
「素晴らしい場所です」桜川さゆりは何度も繰り返していた。
「ここに来る事によって、あなたは人間として最大限の幸福を得ることになるでしょう」
調査の結果、桜川さゆりは「超人間解脱研究会」の一員であることが分かった。
早速、桜川さゆりとコンタクトを取った大五郎ときみえ。
問い詰めるとさゆりは
「会の幹部から佐藤という苗字の人間のリストを作成せよとの指示があった」と答えた。
そこで大五郎は厳重に警備されている超人間解脱研究会本部に乗り込むことにした。
三つ首の大蛇に守られていた会長室で大五郎はついに超人間解脱研究会の会長・魚崎神玄と対峙する。
神玄は不動明王を使った波状精神攻撃を仕掛けてきたが大五郎には通用しなかった。
「お、お前は…」逆に普賢菩薩を使って神玄を追い詰める大五郎。
93歳の老人の姿に戻った神玄はついに大五郎に全てを話した。
60年前に潰れかけた超人間解脱研究会に資金援助し、
今回佐藤リストを欲しがったのは若王子家である事を。

★突然「不動明王」や「普賢菩薩」を使って攻撃するのにハマッてしもうた。
しかも大五郎にはその攻撃が通用しないのじゃ!
ふたつ星どのの偉いところは、きっちり文字制限を守るところじゃが、
ここはもう少し説明があってしかるべきであろうなー。
でも、わしは見事にハマッたぞ。どうやって普賢菩薩を使うのじゃろうな。
ああ、想像するだけで楽しい。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:琥珀
だが大五朗は口が悪く、きみえとは喧嘩ばかり。
きみえはこの謎がとけたらこんなやつさっさとおさらばよ!と心に決めて、
我慢しながら謎にいどむ。
大五朗と共に聞き込み調査を始めているうちにきみえは何やら怪しげな集会が
あることに気がついた。
行ってみるとそこはなんと『佐藤』さんのわずかな生き残り達が
身を隠すための場所であることが判明。
一気に仲間の増えたきみえは大きな安堵感を得る。
生き残り佐藤さん達は残党狩りの恐怖に怯えながら
日夜この集会場所で身を寄せ合って過ごしていたという。
そんな仲間意識からきみえはすぐに彼らと仲良くなる。
しばらく休息のためそこにとどまっていたきみえに、
ある日リーダー格の諭吉がこんなことを言い出した。
「あの大五朗って奴は信用できない。
あいつが出入りするようになってから、仲間の数の減るペースが速くなった」
そういわれてみれば確かにそうだった。
30人の仲間は、三日たった今、19人に減っている。
きみえは大五朗が怪しいと睨み問い詰める。
だが大五朗は敵ではなかった!
そして本当の敵は『佐藤』仲間の一人、リーダー核の佐藤諭吉だったのだ!
諭吉は、ことの真相を語り始めた。
きみえは昔、特殊な施設に入れられていた。
そこはどうやら超能力を持った子供達を育成する機関だったらしく、
きみえもそこで日夜不思議な教育をされていた。そこで諭吉と出会った。
きみえと諭吉は仲良くなったが、
ある日その施設が不慮の事故で突然爆発したのだ!
それからきみえは事故のショックで記憶を失い、普通の子供として育った。
諭吉のことも忘れていた。
だが諭吉はきみえのことを覚えていた。『佐藤』という名と共に…
諭吉はきみえのことを恨んでいた。
何故なら事故前夜、諭吉はきみえと共にここを抜け出て一緒に暮らそうと
約束したのに、それを忘れていたから。
それが許せず諭吉はきみえを恐怖に突き落とそうとした。
超能力を使い、佐藤の大半をこの世から消した。
そして生き残り集団を結成し、きみえがここにたどり着くのを待った。
そして心細いはずのきみえを受け入れ、手に入れようしていた。
だがきみえには既に大五朗という男が隣にいた。
それが許せず諭吉は大五朗を殺そうとした。
だがそれをきみえが庇う。
きみえはやはり大五朗が好きだと気付いたのだ。
きみえは重傷を負い、諭吉はあわてた。大五朗は怒り猛り、諭吉を倒す。
事件は終焉を迎えたが、きみえはお空の星に…
いや、ごめん、生きていた。
重傷を負ったがかろうじて助かり、今は大五朗の事務所でバイトをている。
喧嘩をしながらも仲良く…。

★今回の課題は、他人のオープニングでどんでん返しを作ってしまうという
非常に高度なお遊びをやってみたのじゃが、琥珀さんはお洒落な遊び方が
よくわかっておるのう。構成も力強くまとめてみせた。
最初はうまの合わない二人が、最後には愛に気付く。
Wの選択もうまくいっておるぞ。
しかし何より「いや、ごめん、生きていた。」の遊び心が効いておる。
一番大事なのは物語作りを楽しむことだとジーコ監督も言ってましたから。
いや、ごめん、言ってなかった。

●題名:「 四畳半空母 」(作:han)
◎●◎オープニング◎●◎
田中山 正男(無職)は幻の巨大プラモ「 空母セイタン 」を手に入れた。
彼の四畳半の下宿先が巨大造船工場となろうとしていた。
そんなある日、正男に就職のクチが来る。
大手映画会社が製作の美術として迎えるという。
しかし、大手映画会社は一つの条件をつけてきた。
「 空母セイタン 」の譲渡である。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:han
「 四畳半空母 」長い版
田中山 正男(無職)は幻の巨大プラモ「 空母セイタン 」を手に入れた。
彼の四畳半の下宿先が巨大造船工場となろうとしていた。
そんなある日、正男に就職のクチが来る。
大手映画会社が製作の美術として迎えるという。
しかし、大手映画会社は一つの条件をつけてきた。
「 空母セイタン 」の譲渡である。
セイタンはかつて極少数生産で五十セットが販売された。
現在ではマニア達に伝説として語られるプラモだ。
正男にも譲ってくれとの話は幾度と無くあった。
売れば二百万はくだらない。
だが、正男はそれをすべて断っていた。
このプラモは父の形見であったからである。
このプラモは父が設計製作したものだった。
正男は三ヵ月後に控えた父の一周忌に向けてセイタンを作成することにした。
そんなある日、柏木という男が正男を訪れる。
彼は正男がセイタンを持っている事をどこからか聞きつけてきたのだ。
柏木は大手映画会社の人間で、セイタンを譲ってほしいという。
そのかわり、正男を製作の美術として雇い入れるというのだ。
正男は手先が器用なのでとてもいい話だ。
父がくれたチャンスだとも思った。
だが正男は返事に猶予をもらった。
母の同意が必要だった。
月に一回実家から母がやって来て掃除などしてくれる。
正男は母に柏木とのいきさつを話し相談した。
母はセイタンが人手に渡ることに反対した。
頭ごなしに反対されたので、正男はカッとなってしまった。
和解せぬままに母は実家へ戻っていった。
思えば母とこれほど対立したことは無かった。
母には父の思い出を売り渡すように映ったのだろう。
正男も頭の中ではわかっている。
少し都合が良かったのではないかと。
正男は柏木に断りの電話を入れた。
柏木は残念がったが、せっかくだからといって
正男を映画会社に連れて行って見学させた。
すれ違う人に気さくに挨拶する柏木。
その後をついてキョロキョロと辺りを見回す正男。
とても楽しい一日であった。
ささいな異変があった。
家のカギが開いていたのだ。
かけ忘れたのだと思った。
一目でわかる異変があった。
正男が家に帰るとセイタンがなくなっていた。
正男は喧嘩したままの母の顔を思い出していた。
実家に電話する正男。
しかし繋がらない。
あせることはなかった。
母が自分のいない間にここに来て、実家に持ち帰ったのだと。
次の日、正男は再び母に電話をした。
自分にセイタンを売る気はないことと、母への謝罪である。
母も正男に言いすぎたとあやまる。
そして正男は母にセイタンを持ち出したことを尋ねる。
しかし母はセイタンを持ち出してはいなかった。
ここにきて初めて事の重大さに気付く正男。
一度は手放そうとしたものだが、
いざ現実に無くなってしまうと正男は想像以上に喪失感を覚える。
心当たりは柏木しかいなかった。
柏木の携帯は繋がらなかった。
映画会社へ問い合わせると柏木なる人物はいないという。
念のため映画会社にも行ってみた。
正男を覚えている人がいた。
正男はその人に柏木のことを尋ねた。
柏木というのはウソでも、
本名でこの会社に勤務しているかもと考えたのだ。
その考えは甘かった。
やられた。
あの時、映画会社に見学にいったあの時。
正男の部屋は無人だった。
その間にセイタンは盗まれたのだ。
そんな最中、ネットオークションでセイタンが売り出され、
八百万で売却されたという噂があった。
ごくマニアだけの掲示板でだった。
正男は父のセイタンであることを確信しつつも何も出来ないでいた。
そんなある日、正男の元を一人の人物が訪れた。
映画会社で正男が柏木のことを尋ねた人だった。
その人の手にはセイタンが持たれていた。
巻沢と名乗るその人はオークションでセイタンを落札したのだという。
そしてそのセイタンを正男に返しにきたのだ。
巻沢は正男の父の古い友人であり、かつて共にセイタンを作った男だった。
昔、喧嘩別れをしたまま連絡を取り合うことも無かったのだという。
正男は落札価格でセイタンを買い取ろうとしたが、
巻沢は必要ないと言った。
だが、正男は納得できない。
巻沢は正男に自分の仕事を手伝うようにいった。
巻沢は本物の大手映画会社の人間だった。
それから十日後、かつて柏木と名乗っていた男は
別の詐欺容疑で逮捕されていた。
正男と巻沢二人でセイタンを作ることになった。
父の思い出を語りながらセイタンを作る二人。
かつて、正男の父も巻沢と共に四畳半のせまいアパートで
セイタンの設計についてあれこれ話したのだという。
そして父の命日にはセイタンがかざられていた。

hanさんからは500文字以内にまとめた「短い版」も送ってもらったのじゃが、
この「長い版」のほうが面白いのであえてこちらを紹介した。
ハートウォーミングな作風を得意とするhanさんらしく、泣かせる物語に仕上がっておる。
これにラブストーリーの要素が少しだけでも入ると完璧。

●題名:真夏の雪(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
シアトルでベンチャー企業の副社長を勤めるジミー・フレイザーは
恋人のレイチェルと共にクリスマス休暇を過ごすために
イブのシドニー空港に降り立った。南半球は今真夏。
途中でシドニーの実家の両親を拾ってみんなで一緒に
ゴールドコーストの別荘で楽しもうって計画だ。
意気揚々と空港を出てタクシー乗り場に行く途中、ジミーは空を見上げた。
灰色に曇った空から綿のような雪が次々と道路に降りかかっていた。
いつしか雪は街を灰色に染め、空と区別がつかなくなっていく。
そしてそれは生涯忘れられない悪夢の始まりだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
雪はどんどん勢いを増し、気温は急激に下がった。
両親を拾って急いでシドニーを出ようとしたジミー達だが、その行く手をクラッシュした車の山が阻んだ。
「シドニーから出ようとすると見えない壁にぶつかるんだ!」
仕方なく実家に戻ったジミー達は国連事務総長の発表をテレビで聞いた。
「国連では今まで地球外知的生命体、異星人とのコンタクトを極秘裏に進めてきましたが、
彼らからその卓越した科学技術によって
現在地球を襲う多くの環境問題へ対処してもいいとの提案がありました。
我々の技術では人類は死滅するとのシミュレーション結果もあり、
我々は彼らの提案を受諾する事を決めました。
しかし、彼らの提案には一つ条件がありました。地球の人口は多すぎる。
人口を適正に保つ調整の実施を含めた全てをを異星人側で行い、
地球の正常化を促進するという条件です。我々はその条件をのみました。
そして、最初の人口調整地域として我々はシドニーを異星人の手に引き渡すことを決定しました。
異星人はシドニーに降り立つために彼らに適した気温マイナス10度に保ち、
シドニーの内部にいる人間は外へは出ることができないように制限しています」
ジミーは窓から上空を仰いだ。
空からなまばゆく明滅した都市がまるごと一つ入ってしまいそうな巨大な円盤が降りてこようとしていた。

★何といってもオープニングの勢いを衰えさせずにここまでガンガン迫ってくるところが偉いのじゃ!
これも結末が楽しみじゃな! ちょっとレトロなSFの雰囲気がジャック・フィニイっぽくて好きじゃ。
ただし、どんでん返しとしてはもう少しドッキリさせて欲しい。レイチェル一家が宇宙人だったとか。
SFやるなら思いっきり無茶するのがコツじゃ!

●題名:アカデミー賞に招待されたルンペン(作:のり)
◎●◎オープニング◎●◎
東都高速道の八橋サービスエリアの廃車の中に暮らし始めてまる2年が過ぎた。
仕事と家族を失った洋二に突然一通の手紙が届いた。
宛名は八橋サービスエリア気付の猿橋洋二殿。
封筒は洋二が受け取るにはあまりにも不釣合いな丹精な和紙
で作られていた。差出人は日本アカデミー賞推薦委員会とだけ書いてあった。
洋二にはまったく心当たりがなかった。
震える手で恐る恐る開封すると、中から一枚のチケットが、舞い落ちた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:福はうち+
それはまさしく、日本アカデミー賞推薦委員会からの招待状であった。
受け取った猿橋洋二は「なぜ、俺のところに」という疑問の答えは
一向に出なかったが、どうせ騙され人生、騙されたと思って当日
行ってみた。だが、来ていくものがない。
他のルンペン仲間にも相談してみたが、一向に取り合ってはくれない。
「お前だけいい思いをしやがって」とにべもない。
そういえば、ルンペンの太郎がいない。あいつには確か貸しがあったはずだ。
寝床も一緒に貸したし……。それだけで十分だ。
そういえばここ何日か見ていない。
肝心な時に姿を消す奴だ。
当日、恥をしのんで、ルンペンの格好のままいった。
招待状をもってるやつを追い返さないだろうと思った。
豪華なドレスをきた男優、女優が多い中、
洋二と同じようなルンペンの格好をしたやつがいた。
その男が洋二の方に近づいてきた。にやっと笑う男、まさしく太郎であった。
「どうして?!!」
次回作の準備のためにルンペンについて役作りをしていたらしい、
君にはいちばん世話になったからね、好きな人を招待していいっていうからさ。
といってタキシードを洋二の前につきだした。

★他人の作ったオープニングにどんでん返しを付けるというのが、どれほど難しいか。
これはやってみないことにはまずわからないのじゃが、コツは感情移入であるのは間違いない。
福はうち+さんは見事にやってくれておる。
「どうせ騙され人生」とさらりと書いておるが、このセリフはなかなか出ませんぞ。
この一言で猿橋洋二氏のルンペン人生が目の前に見えるようではないか。
想像力というものはテレパシーであり千里眼である。しかもそのパワーの源が
他人に対する優しさから来ておることがよくわかる作品である。
面白いストーリーを書こうとするなら、諸君、何よりもまず他人を愛することじゃ。福はうち+さんのように。

●題名:飛べない天使(作:のり)
◎●◎オープニング◎●◎
天使であるのに飛ぶことができないマルタ。自分のちょっと
したいたずら心が災いして片方の翼を折ってしまった。
天使は一度翼を折ると、二度大空を飛ぶことができない、
と言われていた。ただし、一つの例外を除いて・・・
自分の宿命を呪っているマルタの前に、大天使ヨセフが
姿を現わした。
「今地上には、お互いにいがみ合う一組の兄弟がいる。
その兄弟を仲直りさせることができたらお前の翼を再生
させてあげよう」 大天使はマルタに翼を再生させるための
大きな試練を与えたのだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:もみじまんじゅう
マルタは地上に行き問題の兄弟を観察した。
どうもお互いをいがみ合っているように見える。
仲直りさせるにはこのいがみ合った心をどうにかしなくてはならない。
どうしたものかと思案しながら観察を続けていると
兄弟が持っている羽に気がつく。
それを見たときマルタは思い違いに気づいた。
彼らがいがみ合っているのはあの羽根の所為だと。
そしてその羽根は自分の折れた羽根であることを。

★なんと! 期せずして敵は「フランケンシュタイン」タイプなのじゃ。
解決すべき課題は、自分のいたずら心が原因だったというわけじゃ。
これはなかなか高度で難しい設定じゃが、ぜひ次の課題「勝手にクライマックス」で
多くの人に挑戦して物語として完成させて欲しい素材である。
面白いストーリー作りのための素晴らしいトレーニングになると思う。
よくぞこのオープニングを作り、またそれを選んでどんでん返しを作ってくれました。
さすが常連のお二人の力と慧眼には畏れ入ったのじゃ。ああ、わしはうれしいのじゃ。

●題名:殺す、殺す、自分(作:s-taichi)
◎●◎オープニング◎●◎
「また、死ねなかった。おまけに無関係の人まで…」
忌毛樽(いもうたる)は囚人護送車の中でつぶやいた。
周りにいる警官や、護送される犯罪者も彼を気の毒そうに見つめる。
忌毛は悪を呼び込む特殊体質の男である。
彼の周囲は常に凶悪犯罪が起きてしまうのだ。
自分が生きていては社会に迷惑がかかると自殺も試みたがどうしても死ねない。
彼は不死者だったのだ。
十回目に試みた飛び降り自殺も失敗し、
それどころか人を巻き込んでしまい死なせてしまう。
そんなわけで彼は殺人犯として現在護送されている。
その護送車を謎の人物が襲った。
次々と殺される警官と囚人。
だが忌毛は、奇跡的に襲撃者を倒す。
襲撃者の正体は伝説の殺人鬼集団「13階段」の一人だった。
不死身の肉体の秘密を手に入れようと忌毛を襲ったのだ。
奴らが不死身となったら世界は殺戮に包まれる。
忌毛は、殺人鬼と自分を共に葬る過酷な戦いを決意する。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:s-taichi
忌毛は一人で戦う覚悟を決めていた。
だが、忌毛に協力者が二人現れる。
忌毛の護送車に乗り合わせた刑事、佐伯とその娘である。
最初は心を開かない忌毛だったが
共に「13階段」(メンバーは奇妙なことにほとんどが特徴のない一般人)と
戦ううちに二人と絆が生まれた。
その絆は彼にとってかけがえのないものだった。
だが佐伯の娘が敵に拉致され拷問されて精神崩壊を起こしてしまう。
しかも拉致の手引きをしたのが佐伯だということが判明する。
佐伯も「13階段」の一人で忌毛を揺さぶるために自分の娘を利用したのだ。
本性を現した佐伯を倒す忌毛。
しかし、死ぬ間際の佐伯からは凶暴性が消え、
しかも自分が「13階段」だったことも覚えていなかった。
忌毛に協力して敵と戦って死んでいくという幻想を見ていたのだ。
佐伯の言葉から忌毛は恐るべき「13階段」の秘密に気がついた。
そして、本当の敵・発狂したはずの佐伯の娘があらわれた。

★この作品に関しては作者のコメントを紹介しよう。
◆ぴこ蔵賞をいただき嬉しい限りです。しかし出来上がったのは、
オープニングと比べずいぶん勢いが落ちてしまった感じがする本篇。
ぴこ蔵先生、どうか辛口の批評で見事拙作に緊張感を与えてください。
★いいところに気がついたのじゃ。
オープニングは「裏切りあう言葉」から浮かぶ強烈なイメージに乗って
何の計算もなく勢いで書くから、たいがいは凄いものになる。
しかし、その勢いのまま全体を書く事がいかにむずかしいかが
わかってくれたことと思う。
始まりがあったら終わりも作らねばならぬ。
オープニングは自分の好き勝手にバクハツできるが、
終わらせるには読者を納得させる必要があるのじゃ。
どんでん返しはそのための大事な仕掛け。ここで必要なのは勢いよりも
冷静な計算である。従って、どんでん返しはこれでよいのじゃ。
あとはどう完成させるか…。
そこで、いよいよ次の課題の発表なのじゃ!
「裏切りあう言葉たち」から始まった
一連のシリーズの最後を飾る課題なのじゃ!
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
●次の課題「勝手にクライマックス」大募集!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
どんでん返しが出来たあとは、最後の仕上げとして
「サスペンス」と「感動」がほしいのじゃ。
そこで、『Wの選択』『タイムリミット』『意外な結末』を入れて
あらすじを完成させよう!
その素材は、
本日発表された「オープニング&どんでん返し」のセットじゃ。
http://www.arasuji.com/kadai/dotou.htm
上記のWEBページから
おぬしの好きな「オープニング&どんでん返し」のセットを選んで、
勝手に完成させよう!
練習なので気楽にやってみることをオススメするぞい。
締め切りは3月21日。件名は「勝手にクライマックス」 ★課題★ 「どんでん返しを作ろう!」
『裏切りの理由(オープニング)』から
好きな作品を選んで、
それから発想する「どんでん返し」を作ってください。
怒涛のどんでん返し全作品
●題名:キレた女教師(作:mitu01)
◎●◎オープニング◎●◎
職員室には、まだ誰もいなかった。
窓際に置かれたポットから湯気がもくもくと上がっている。
ぼんやりとそれを眺めながら、直荷喜連子は重いため息をついていた。
喜連子は私立北ノ湖学園の教師だ。
今年になってから担任は受け持っていない。
一ヶ月後に退職する事がもう決まっているからだ。
本当は寿退社になるはずだった。だが……
――今日、あの女は来るだろうか。
あの女が来たら、冷静でいられるだろうか。
扉の開く音がした。
「ああ、おはようございます。早いですなあ」
あの女じゃなかった。サッカー部の顧問をやっている社会科の先生だ。
「ああっ!」
その先生は窓際の音楽教師の机に駆け寄った。
「酷い。誰がこんな事を」
彼は、机の上でびりびりに破れた書類を手にして言った。
それをやったのは、喜連子だ。
昨夜、結婚するはずだった佐田政史から電話があった。
『ごめん、婚約を解消したい』
『どうして!』
喜連子は後輩の音楽教師に、佐田を奪われていたのだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:mitu01
彼氏を奪われるきっかけになったのは、学校に撒かれた中傷ビラだった。
喜連子はそれを音楽教師がやったのだと思い、問い詰めるが、
しかし彼女はそれを否定し、さっさと学校を辞めてしまう。
探偵のような真似事をして分かったのは、
実はそれをやったのは佐田政史だという事だった。
彼は、両親から親兄弟のいない喜連子との結婚を反対されて気が変わったのだ。
しかし、それを知っても喜連子は彼をせめなかった。
自分にとって本当に大事なのは教師という職業だという事を思い出したのだ。
喜連子は退職届を撤回する。
しかし、校長は渋い顔をする。
落ちこぼれなど放っておいて一部の優等生にあわせ
授業を進ませてほしいのだが、喜連子の場合はそうじゃなかったのだ。
校長は条件をだす。
どうしょうもない不良連中だけを集めたクラス、
その担任を一ヵ月後の終業式まで受け持って
何の問題がなかったら考えてもいいと。

(女は家庭にいるものだと思う彼氏のため、
小さい頃からの夢だった教師という職業をやめるほどに大切なものだった)と作者が書いてきてくれた。
それが後半、(自分にとって本当に大事なのは教師という職業だという事を思い出したのだ。
喜連子は退職届を撤回する。)ということになる。
つまり、Wの選択はこれでばっちりということじゃ。
主人公は成長した。
しかし、今度は校長がとんでもない条件を突きつけてきた。
ここからがけっこう長くなりそうな話になったが、これはこれでアリじゃ。
喜連子の選択が間違っていないことを祈る。
それにしてもひどい奴じゃなあ、佐田政史。

●題名:食べる食べる大福(お題:ブンコ/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
甘いものの大嫌いな主人公。
だが、商店街の「イチゴ大福早食い大会」に出場し、優勝を目指している。
甘い餡とイチゴにめまいを感じながら、必死で大福を口に押し込む。
主人公の視線の先には、妻と娘と、「パパ頑張れ」と書かれた横断幕。
そして、優勝商品の「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」。
主人公は、「待ってろ。パパは必ず優勝するからな・・・!」と心に思い、
両手で大福をつかんで、二個一緒に口に押し込んだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公は仕事一辺倒の会社員。
ある日、重要な資料が入ったCDがカバンから盗まれる。
財布などの貴重品はそのままだった為、社内の人間の仕業だと疑う。
しかし、ライバルの社員を問い詰めると、「自分はもう出世競争に嫌気が差した」と言われる。
そして、妻から、娘の机の引き出しにCDが隠されていたことを教えられる。

★さあ、ここからどう話が大福につながっていくのか。
非常に楽しみなのじゃ。参ったなー。(笑)

●題名:楽譜の読めないバイオリニスト(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
CDの音色に、全神経を集中させる主人公は、聞き終えると、
今の演奏を完璧に再現してみせる。
「相変わらず、君の才能には恐れ入る」
感心する師匠に、照れる主人公。
「これで、楽譜さえ読めればねえ」
続く言葉に、今度はがっくりする。
主人公は楽譜が読めないのだ。
どう見ても、音符がおたまじゃくしにしか見えない。
その為、聞いてはその音を再現するを繰り返し、
今では一度聞いた演奏は完璧に繰り返すことが出来る。
だが、その演奏は他人の物であり、
主人公は「機械的に演奏しているにすぎない」と評価されていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
技術はあるものの、独創性がないということで、
コンテストで入賞した経験がない主人公は、次のコンテストで入賞したら、
恋人にプロポーズしようと考える。
だが、用意していた指輪をケースごとなくしてしまう。
師匠の息子は、主人公の恋人に振られた過去がある。
主人公は師匠の息子を追い詰める。
しかし、師匠の息子には、既に別の女性がいた。
指輪は、主人公の恋人が隠していたことが判明する。
恋人は、主人公に他人の真似ではなく、自分の演奏をして欲しいと考えていた。

★「自分の演奏をする」ことと「恋人へのプロポーズ」とをつなぐために
それぞれのテーマを象徴する小道具をリンクすることを提案したい。
例えば、主人公は指輪を自分のバイオリンケースに隠しておいたのだが、
恋人はそれを知らずにバイオリンケースごと隠してしまう。
ある高名な音楽家に「彼は楽器に頼りすぎている」と聞かされたからだ。
楽器(と指輪)を失ったせいで主人公は思うような練習が出来ない。
しかし、おかげで生まれて初めて謙虚に楽曲と向かい合うようになり…。
みたいな感じじゃな。道具は物語の非常に重要な要素である。

●題名:殴り返す老婆(お題:ぴこ蔵/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
主人公は、不良仲間4人とともに、日々ゲームセンターやコンビニに
たむろしており、学校もサボりがちだ。
ある夜、ゲーセン帰りの4人は、老婆が一人で裏道を歩いているのを見つける。
面白半分に、老婆のバッグを奪おうとする4人。
だが、意外な力でバッグをつかんで離さない老婆を、3人はこづきまわす。
老婆に手を上げることを躊躇う主人公を、3人は「弱虫」とあざけ笑う。
カッとなった主人公は、老婆のバッグをつかんで、
「さっさと離せよ!」と殴りかかる。
だが、その瞬間、主人公の身体は飛ばされ、ビルの壁に激突する。
唖然とする主人公。
そして、老婆の腕が、金色の獣毛に覆われているのを見て、目を丸くする。
「やれやれ、しょうがない坊や達だ」と言う老婆の身体は、
見る間に金色のライオンに変化した。
「おいたが過ぎたね、坊や達。お仕置きだよ」
驚いて逃げ出そうとする3人、腰が抜けて動けない主人公。
だが、後ろから複数のメスライオンが現れ、挟み込まれる。
「学校で習わなかったのかい?ライオンの狩りは、複数でするんだよ」
追い詰められた4人は、必死で助けを求める。
だが、ライオンはじりじりと間合いを詰めてきた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公の不良仲間の一人が、何者かに襲われ、意識不明の重体に陥る。
その事件と前後して、老婆がライオンに変身し、人を襲うという噂が流れた。
だが、噂を流したのは、不良仲間の一人だった。
自分の恋人を奪われた腹いせに、仲間を襲ったのだ。

★ライオン人間。これだけで長編大作になりそうな素材じゃ。
あとはもういかにこのスケールを維持するかという問題だけである。
そのためにはさらなる巨悪が登場する必要がありそうじゃな。

●題名:世界を救う魔王(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
魔王と勇者が小競り合いを繰り返す世界。
人間同士の争いがエスカレートしそうになると、
魔王が害悪をもたらし、勇者がそれを収める。
これによって、人間同士の結束を高め、平穏を保っていた。
主人公は、魔王の子供で、今日も好奇心一杯に走り回っている。
世話役の魔物は、主人公に立派な魔王になってもらおうと、
馴染みの勇者に主人公を冒険に連れ出すよう頼む。
そして、主人公には、
「別世界から来た化け物が、世界を支配しようとしている。
このままでは、魔王様が危ない」と言う話をでっち上げ、
勇者とともに旅立つよう促す。
初めての冒険に、興奮する主人公。
その頃、人間界では、魔物とは違う「妖怪」が現れ、人々を不安に陥れていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
「妖怪」が町や村を襲う事件が頻発する。
このままでは世界が破滅すると、勇者とともに旅立つ魔王の子供。
冒険の末、「妖怪」の棲家を見つける主人公。
退治しようとするが、「妖怪」が元は人間だということを知る。
勇者が、人間の死体を「妖怪」に変え、魔王を排除しようとしていたのだ。

★「魔王」「妖怪」「勇者」はいずれも異なる社会を象徴する存在じゃ。
これは意外に『組織』同士の壮大な抗争劇になりそうじゃな。

●題名:吸い込まない掃除機(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
部屋の掃除をする主人公。
はたきがけを終え、掃除機を手にする。
ウィーンという機械音はするものの、一向にごみを吸い込まない掃除機。
だが、主人公はそれをみて、「やったー!!」と万歳する。
主人公は、前から新しい掃除機が欲しかった。
だが、旦那からは「まだ前のが動くだろう」と言われ、反対されていたのだ。
吸い込まない掃除機を放り出し、ウキウキと通信販売のカタログを手に取る。
ここに、主人公の夢の掃除機が載っているのだ。
ソファーに身を投げ出し、目的のページを開くが、その瞬間悲鳴をあげる。
主人公の買いたい掃除機が載っているページが、
何者かに破り取られていたのだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公が買いたいと願っていた、通販の掃除機のページと注文書が
破り取られていた。
主人公は、前日、夫がカタログを片付けていたのを思い出す。
だが、自分で「失くさないように」と、
破りとって料理の本にはさんでおいたのだった。

★本当の敵は「忘却した自分」じゃ。
忘却の原因が例えば「脳に巣食う悪性腫瘍」とかじゃとすると、
この敵のタイプは「狼男」型になるわけじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
主人公は掃除機が壊れ、新たに買おうにもカタログのページも無い。
このままでは掃除機がなくて掃除ができない。
子供がイタズラでカタログのページを切り取ったと思い込み、子供を叱る主人公。
しかしカタログのページを切り取ったのは主人公の夫だった。
そろそろ新しい掃除機を買ってもいいだろうと思い直した彼は、
仕事の帰りに、こっそり掃除機を買って帰ろうとカタログのページを切り取って持ち出したのだ。

★本当の敵は「夫」だったのじゃ。
「ドラキュラ」型というわけじゃ。
これだけシンプルなオープニングでも、
いろいろなことができるものなのじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
【ぴこ蔵賞決定!】
◆作者:山川
主人公は旦那の仕業ではないかと思い、問い詰めた。
すると旦那はアッサリ自分がやったと認めた。
主人公があんまり未練たらしく見ているので、破いて捨てたとのこと。
主人公は腹が立っていた、そして旦那に思いつく限りの非難を浴びせた、
そして掃除機がつぶれたことを伝えた。
旦那は苦々しい様子で、「それなら仕方がないと」と、新しい掃除機を買うことを許可した。
主人公はこうして、念願の新しい掃除機とチョットした勝利感を手にした。
後日、壊れた掃除機を捨てるためになぜ動かないようになったのだろうと思い調べると、
ホースの中に何かが詰まっているのが見えた。
それを何とか引っ張り出すと、それは丸められた紙くずだった。
それをとると、その壊れたはずの掃除機は調子よく動き始めた、
つまり掃除機は壊れたわけではなかったのだ。
その丸められた紙くずを広げると、
なんとそれは、例の主人公の買いたい掃除機が載っているページだった。
主人公は不思議に思いそのことを旦那に聞いた。
すると旦那は、君が新しい掃除機を欲しがっていたので、
古い掃除機にそれを詰めて動かなくしておいたとのこと。
なるほどすべては主人公のためにやったことなのだ、
しかしなぜ例のページだったのか、それも旦那に聞いた。
すると旦那は「だってそうしないと、こうやって聞きに来てくれないだろう」と答えた。

★そうか、まだこんな手があったか!
前号の例題で、このオープニングを受けて作られたどんでん返しを
2作も紹介して、もう来ないじゃろうと油断しておったわい(笑)。
結末のひねりが素晴らしい。
旦那は奥さんが聞きに来るのをわくわくして待っておったわけじゃな。
自分のトリックに気がついて欲しかったんじゃのう。
お茶目な旦那は犯人でありながら探偵役をも務めたわけじゃ。
そんな旦那の優しい気持ちをもう少し丁寧に説明すると
オチの一言もさらにわかりやすくなる。
キレが良すぎると気付かない場合もあるからなー。ここは十全に。
それにしても、syaoさんの作ったオープニングを活かした緻密な構成といい、
全く新しい角度のどんでん返しといい、お見事でした。
というわけで、激戦を制しぴこ蔵賞を獲得したのは山川さんでした!
おめでとうございます!
次の作品にも期待しておりますぞ。

●題名:生きている死体(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
あの日、僕は最愛の人と、自分の心臓を失った。
主人公には恋人がいた。
だが、恋人に「一緒にいられない」と別れを告げられる。
「離れていても、心は一緒」という主人公に、
恋人は「あなたの心臓を頂戴」と言う。
主人公は恋人に心臓を渡し、恋人は姿を消す。
それ以来、主人公は「生きている死体」として暮らしていた。
そんな僕を理解してくれたのは、
「魔法使いに人間に変えられた兎」の女性と、
「『誰か』に声を奪われた」少女だった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
「魔法使いに人間に変えられた兎」の女性は、恋人の妹であり、
心臓を患っていた。
恋人は、妹に移植する為に、主人公の心臓を持っていったのだ。
「『誰か』に声を奪われた」少女は、実は恋人だった。
妹の手術と引き換えに、『誰か』に「声」と「時間」を差し出していたのだ。

★うーん、syaoさん、すまぬ!
これは正直言ってよくわからんかったのじゃ。
最後まで完成してからもう一度読んでみたいものじゃ。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
病院で心臓の代わりになるポンプにつながれ、
ベッドから動く事のできなかった主人公に医療研究機関から提案が届く。
かわりの心臓を提供する引き換えに、
研究所内で心臓の移植と代替心臓の研究に協力する。
主人公はその提案を承諾する。
しかし、主人公は病院で別れを告げたはずの口をきけない少女と
ウサギ男が研究施設の中に捕われているのを見つける。
二人はもともとこの研究施設から逃げ出した、実験の被験者だったのだ。
すべてはこの実験施設からはじまっていたのだ。
恋人が主人公の心臓と共に姿を消したのも、
主人公の一族が長命な一族であったため、
その長命の秘密を調査するためだった。

★ほほ〜う。一気にSFに持っていったのじゃ。さすがである。
あとはこれを「僕」の一人称で書くか、三人称で描写するかじゃな。
syaoさんのオープニングのように「僕」の視点で行くとかなりメルヘン。
ユージーンさんのように三人称で行くならかなりハード。
何らかの方法でその二つを混在させるという手もある。
でも、どちらにしても何か切ない感じの物語になりそうで期待大じゃ。

●題名:「くじらのいる湖」(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
主人公は、魔法使い見習い。
今日は、師匠が魔道研究会の会議で留守にしている。
ここぞとばかりに、主人公は一人で魔法の練習をはじめる。
魔道の中でも、技術がいる為、一人で行うことは禁止されている
召喚魔法をものにし、師匠を驚かせようと考えた。
森の湖に行き、練習を始めた主人公。
ここなら人も滅多に来ないから、多少失敗しても大丈夫だろうと思う。
まず、桶に汲んだ水に金魚を出そうとしたのだが、
失敗して湖にくじらをだしてしまった。
焦る主人公。おまけに、くじらは魔力で巨大化してしまい、
湖のふちまでぎっちり詰まってしまった。
まるで、湖全体がくじらに変わってしまったかのようだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ユージーン
主人公と師匠が所属する魔道協会(研究会は協会の中で開催される)は
日頃から魔術を金に換える不道徳な集団、と新聖教会から批難されている。
魔法で召喚した鯨を死なせてしまうと、イタズラに魔法を使ったあげくに
鯨を殺したと魔道協会は批難され、協会は窮地に追い込まれてしまう。
島国の王国では鯨は海の支配者として、人々が親しみを感じていた事が
事態を複雑にしていた。
主人公は自分の魔術のミスが問題を引き起こしたと思い、
必死に魔道書を調べるがどうしても原因がわからない。
実は師匠が主人公に知られないように鯨を湖に呼び出したのだ。
魔力という危険で強力な物を扱うだけの心構えができているかを試すために。

★いかにもファンタジーな感じのオープニングから、
一転してわし好みの非常に政治的でリアルな大人の話になったのじゃ。
魔道協会はこの難関をいかに切り抜けるのか?
まるでアーサー・ヘイリーのような、ちょっとライブドア感もある(笑)、
知的かつ洒脱にして格調高いストーリーになるかと思われたのだが…。
最後にまたもや主人公のサイズにスケールダウンしたのが惜しまれる。
師匠の企みにもうひとひねりあって欲しかった。
遊びの企画で熱くなって申し訳ないが、可能性を感じるのじゃ。
ここからは何やら全く新しいジャンルの名作誕生の予感が…。

●題名:1万メートルの密室(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
最近話題の名探偵厳正寺大五郎に資産総額1兆円と言われる若王子家の令嬢
若王子玲奈から失踪した婚約者・秋口三朗の行方を探して欲しいとの依頼が
入った。
時同じくしてサンディエゴのマリオネットホテル全体にドーン!という衝撃が
響き渡る。
音がした101号室では激しい衝撃で床にめり込むように焼け焦げた
バラバラの死体が発見された。
鑑識の結果、被害者は少なくとも1万メートルの高度から落下死したと見られ、
状況から落下現場はその部屋だと断定された。
しかし、部屋の高さは3メートルしかなくどこにも穴一つ開いていないのだ!
部屋の遺留品からその被害者は秋口三朗と断定され、
人類の最終兵器・厳正寺大五郎は捜査を開始する!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
大五郎は玲奈と共にアメリカに飛び、そこでの三朗の足取りをたどった。
すると死亡三日前から前日までの足取りが不明なことが分かる。
さらに調査を進めようとする二人だったが、
それを妨害するために何者かが大五郎と玲奈を襲撃してきた。
しかし、大五郎は驚くべき身体能力を発揮して襲撃者達を撃退し、
二人は襲撃者の遺留品から若王子グループの秘密開発施設を突き止めた。
「一体何なんだこの施設は……」潜入した二人は衝撃を受ける。
反重力装置で飛ぶUFO。空間歪曲技術によるワープ装置。
人類の科学ではなし得ない恐るべき技術がそこでは実現されていた。
さらに二人は研究員ケイト・マクガイアによって作られた精神抽出装置を発見した。
それを使えば人間の記憶と心を抽出して別人に移すことができるのだ!
クサいと睨んだ大五郎はケイトを尋問し、
この施設の技術は地球を訪れた異星人から教えてもらっていることと、
秋口三朗と玲奈の父・若王子善政が死亡三日前にこの施設を訪れ、
互いの記憶と心を交換したことを聞き出した。
二人は急いでロスの若王子家の屋敷に向かう。
そこには若王子善政、いや、記憶と心を善政の体に移植した秋口三朗がいるのだ!

★むむむ、本格密室ものかと思ったらSFじゃったか(笑)。
まあ、構成の練習じゃからそれは目をつむるとしよう。
しかしこうなるとぜひとも「記憶と心交換」の目的を知りたいところじゃ。

●題名:駆け抜ける事務員(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
ジリ貧商事の篠原は会社ではマジメ一直線の地味な経理部員だったが、
実は上司の経理部長が無能なことをいいことにして
会社の金を二千万も使い込んでいた。
「こんなザルみたいなあやふやな経理状態の会社、
金ちょろまかすくらいわけない」
と高をくくっていたある日、取引銀行から役員が送り込まれてきて、
経理部にも新しい部長が来た。
「すべての帳簿を整理して一週間後に提出するように」
一週間以内に二千万を補填しなくては、不正がばれてしまう!
困った篠原は、いつも競馬場で会うノミ屋の玄さんに相談する。
「一週間で二千万稼ぐにはこれしかないよ」
そう言って玄さんが紹介してくれたのは、
暴力団赤恥組の組長・赤恥源五郎を殺すヒットマンの仕事だった!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
篠原に他に選択肢はなく、仕方なく赤恥を殺す依頼を引き受けることにした。
「でもどうやって殺せばいいんですか?
今まで人を殺したことなんて一度もないんですよ」
「任せておけ」
そう言って玄さんは、中国に伝わる七星暗殺拳を通信教育で学んだ格闘技マニアと
世界中のありとあらゆる銃火器の取り扱いに詳しいミリタリーおたくを紹介してくれた。
有給休暇をとって一週間彼らの元で血の汗が噴き出るような激しい修行を積んだ篠原。
その甲斐あって篠原の身体能力は驚くほどアップし、
銃火器の知識と熟練度は米軍海兵隊並となった。
「これで準備は整った」
玄さんはどこから手に入れたのか赤恥の一週間のスケジュールと
突進してくる猛牛でも射殺できる威力を持つ拳銃・デザートイーグルを篠原に手渡した。
それらを元に赤恥の身辺を付けねらい始めた篠原。
「もはや事務員というより歩く殺人機械だな」と一人自惚れる篠原だったが、
常にボディーガードをつれて行動する赤恥に隙を見出すことは難しかった。
しかし、そんな篠原に絶好のチャンスが訪れた。
ついに源五郎の愛人宅への潜入に成功し、寝る赤恥の枕元に立ったのだ。
しかし、そこに眠っていたのはなんと玄さんだった!

★これは面白いのう。玄さんが赤恥だったとは! うん、意外でした。
あとはなぜ玄さんがそんなことを依頼したのかが知りたいのじゃ。
クライマックス、期待しておるぞ!

●題名:「たった一人の佐藤さん」(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
日本人で一番多い苗字は何? 答えは佐藤さん。
全国には200万人の佐藤さんがいるのです。
そして、その200万人の佐藤さんがある日突然消えてしまったんです!
そう、職場からも家庭からも「佐藤」と名の付く人は1人残らずいなくなってしまったのだ。
いや、ごめん。いた。
佐藤きみえ(21)。
彼女こそが日本全土を震撼させた「佐藤さん失踪事件」で唯一残った佐藤さんなのです。
そして、きみえ自身も両親と姉と弟をなくした犠牲者だった。
「みんな、一体どこに行っちゃったのよ!」
たった1人の佐藤さんとなってしまったきみえが
雑誌に「今週のイチオシ名探偵」と紹介されていた厳正寺大五郎と共に巨大な謎に挑みはじめた!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
厳正寺大五郎シリーズ第2弾です。
まずきみえの実家を調べたところ、弟の健次郎が使っていた携帯が発見された。
携帯には失踪の一ヶ月ほど前から
「桜川さゆり」という人物との間で頻繁に交換されたメールが残っていた。
「素晴らしい場所です」桜川さゆりは何度も繰り返していた。
「ここに来る事によって、あなたは人間として最大限の幸福を得ることになるでしょう」
調査の結果、桜川さゆりは「超人間解脱研究会」の一員であることが分かった。
早速、桜川さゆりとコンタクトを取った大五郎ときみえ。
問い詰めるとさゆりは
「会の幹部から佐藤という苗字の人間のリストを作成せよとの指示があった」と答えた。
そこで大五郎は厳重に警備されている超人間解脱研究会本部に乗り込むことにした。
三つ首の大蛇に守られていた会長室で大五郎はついに超人間解脱研究会の会長・魚崎神玄と対峙する。
神玄は不動明王を使った波状精神攻撃を仕掛けてきたが大五郎には通用しなかった。
「お、お前は…」逆に普賢菩薩を使って神玄を追い詰める大五郎。
93歳の老人の姿に戻った神玄はついに大五郎に全てを話した。
60年前に潰れかけた超人間解脱研究会に資金援助し、
今回佐藤リストを欲しがったのは若王子家である事を。

★突然「不動明王」や「普賢菩薩」を使って攻撃するのにハマッてしもうた。
しかも大五郎にはその攻撃が通用しないのじゃ!
ふたつ星どのの偉いところは、きっちり文字制限を守るところじゃが、
ここはもう少し説明があってしかるべきであろうなー。
でも、わしは見事にハマッたぞ。どうやって普賢菩薩を使うのじゃろうな。
ああ、想像するだけで楽しい。

◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:琥珀
だが大五朗は口が悪く、きみえとは喧嘩ばかり。
きみえはこの謎がとけたらこんなやつさっさとおさらばよ!と心に決めて、
我慢しながら謎にいどむ。
大五朗と共に聞き込み調査を始めているうちにきみえは何やら怪しげな集会が
あることに気がついた。
行ってみるとそこはなんと『佐藤』さんのわずかな生き残り達が
身を隠すための場所であることが判明。
一気に仲間の増えたきみえは大きな安堵感を得る。
生き残り佐藤さん達は残党狩りの恐怖に怯えながら
日夜この集会場所で身を寄せ合って過ごしていたという。
そんな仲間意識からきみえはすぐに彼らと仲良くなる。
しばらく休息のためそこにとどまっていたきみえに、
ある日リーダー格の諭吉がこんなことを言い出した。
「あの大五朗って奴は信用できない。
あいつが出入りするようになってから、仲間の数の減るペースが速くなった」
そういわれてみれば確かにそうだった。
30人の仲間は、三日たった今、19人に減っている。
きみえは大五朗が怪しいと睨み問い詰める。
だが大五朗は敵ではなかった!
そして本当の敵は『佐藤』仲間の一人、リーダー核の佐藤諭吉だったのだ!
諭吉は、ことの真相を語り始めた。
きみえは昔、特殊な施設に入れられていた。
そこはどうやら超能力を持った子供達を育成する機関だったらしく、
きみえもそこで日夜不思議な教育をされていた。そこで諭吉と出会った。
きみえと諭吉は仲良くなったが、
ある日その施設が不慮の事故で突然爆発したのだ!
それからきみえは事故のショックで記憶を失い、普通の子供として育った。
諭吉のことも忘れていた。
だが諭吉はきみえのことを覚えていた。『佐藤』という名と共に…
諭吉はきみえのことを恨んでいた。
何故なら事故前夜、諭吉はきみえと共にここを抜け出て一緒に暮らそうと
約束したのに、それを忘れていたから。
それが許せず諭吉はきみえを恐怖に突き落とそうとした。
超能力を使い、佐藤の大半をこの世から消した。
そして生き残り集団を結成し、きみえがここにたどり着くのを待った。
そして心細いはずのきみえを受け入れ、手に入れようしていた。
だがきみえには既に大五朗という男が隣にいた。
それが許せず諭吉は大五朗を殺そうとした。
だがそれをきみえが庇う。
きみえはやはり大五朗が好きだと気付いたのだ。
きみえは重傷を負い、諭吉はあわてた。大五朗は怒り猛り、諭吉を倒す。
事件は終焉を迎えたが、きみえはお空の星に…
いや、ごめん、生きていた。
重傷を負ったがかろうじて助かり、今は大五朗の事務所でバイトをている。
喧嘩をしながらも仲良く…。

★今回の課題は、他人のオープニングでどんでん返しを作ってしまうという
非常に高度なお遊びをやってみたのじゃが、琥珀さんはお洒落な遊び方が
よくわかっておるのう。構成も力強くまとめてみせた。
最初はうまの合わない二人が、最後には愛に気付く。
Wの選択もうまくいっておるぞ。
しかし何より「いや、ごめん、生きていた。」の遊び心が効いておる。
一番大事なのは物語作りを楽しむことだとジーコ監督も言ってましたから。
いや、ごめん、言ってなかった。

●題名:「 四畳半空母 」(作:han)
◎●◎オープニング◎●◎
田中山 正男(無職)は幻の巨大プラモ「 空母セイタン 」を手に入れた。
彼の四畳半の下宿先が巨大造船工場となろうとしていた。
そんなある日、正男に就職のクチが来る。
大手映画会社が製作の美術として迎えるという。
しかし、大手映画会社は一つの条件をつけてきた。
「 空母セイタン 」の譲渡である。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:han
「 四畳半空母 」長い版
田中山 正男(無職)は幻の巨大プラモ「 空母セイタン 」を手に入れた。
彼の四畳半の下宿先が巨大造船工場となろうとしていた。
そんなある日、正男に就職のクチが来る。
大手映画会社が製作の美術として迎えるという。
しかし、大手映画会社は一つの条件をつけてきた。
「 空母セイタン 」の譲渡である。
セイタンはかつて極少数生産で五十セットが販売された。
現在ではマニア達に伝説として語られるプラモだ。
正男にも譲ってくれとの話は幾度と無くあった。
売れば二百万はくだらない。
だが、正男はそれをすべて断っていた。
このプラモは父の形見であったからである。
このプラモは父が設計製作したものだった。
正男は三ヵ月後に控えた父の一周忌に向けてセイタンを作成することにした。
そんなある日、柏木という男が正男を訪れる。
彼は正男がセイタンを持っている事をどこからか聞きつけてきたのだ。
柏木は大手映画会社の人間で、セイタンを譲ってほしいという。
そのかわり、正男を製作の美術として雇い入れるというのだ。
正男は手先が器用なのでとてもいい話だ。
父がくれたチャンスだとも思った。
だが正男は返事に猶予をもらった。
母の同意が必要だった。
月に一回実家から母がやって来て掃除などしてくれる。
正男は母に柏木とのいきさつを話し相談した。
母はセイタンが人手に渡ることに反対した。
頭ごなしに反対されたので、正男はカッとなってしまった。
和解せぬままに母は実家へ戻っていった。
思えば母とこれほど対立したことは無かった。
母には父の思い出を売り渡すように映ったのだろう。
正男も頭の中ではわかっている。
少し都合が良かったのではないかと。
正男は柏木に断りの電話を入れた。
柏木は残念がったが、せっかくだからといって
正男を映画会社に連れて行って見学させた。
すれ違う人に気さくに挨拶する柏木。
その後をついてキョロキョロと辺りを見回す正男。
とても楽しい一日であった。
ささいな異変があった。
家のカギが開いていたのだ。
かけ忘れたのだと思った。
一目でわかる異変があった。
正男が家に帰るとセイタンがなくなっていた。
正男は喧嘩したままの母の顔を思い出していた。
実家に電話する正男。
しかし繋がらない。
あせることはなかった。
母が自分のいない間にここに来て、実家に持ち帰ったのだと。
次の日、正男は再び母に電話をした。
自分にセイタンを売る気はないことと、母への謝罪である。
母も正男に言いすぎたとあやまる。
そして正男は母にセイタンを持ち出したことを尋ねる。
しかし母はセイタンを持ち出してはいなかった。
ここにきて初めて事の重大さに気付く正男。
一度は手放そうとしたものだが、
いざ現実に無くなってしまうと正男は想像以上に喪失感を覚える。
心当たりは柏木しかいなかった。
柏木の携帯は繋がらなかった。
映画会社へ問い合わせると柏木なる人物はいないという。
念のため映画会社にも行ってみた。
正男を覚えている人がいた。
正男はその人に柏木のことを尋ねた。
柏木というのはウソでも、
本名でこの会社に勤務しているかもと考えたのだ。
その考えは甘かった。
やられた。
あの時、映画会社に見学にいったあの時。
正男の部屋は無人だった。
その間にセイタンは盗まれたのだ。
そんな最中、ネットオークションでセイタンが売り出され、
八百万で売却されたという噂があった。
ごくマニアだけの掲示板でだった。
正男は父のセイタンであることを確信しつつも何も出来ないでいた。
そんなある日、正男の元を一人の人物が訪れた。
映画会社で正男が柏木のことを尋ねた人だった。
その人の手にはセイタンが持たれていた。
巻沢と名乗るその人はオークションでセイタンを落札したのだという。
そしてそのセイタンを正男に返しにきたのだ。
巻沢は正男の父の古い友人であり、かつて共にセイタンを作った男だった。
昔、喧嘩別れをしたまま連絡を取り合うことも無かったのだという。
正男は落札価格でセイタンを買い取ろうとしたが、
巻沢は必要ないと言った。
だが、正男は納得できない。
巻沢は正男に自分の仕事を手伝うようにいった。
巻沢は本物の大手映画会社の人間だった。
それから十日後、かつて柏木と名乗っていた男は
別の詐欺容疑で逮捕されていた。
正男と巻沢二人でセイタンを作ることになった。
父の思い出を語りながらセイタンを作る二人。
かつて、正男の父も巻沢と共に四畳半のせまいアパートで
セイタンの設計についてあれこれ話したのだという。
そして父の命日にはセイタンがかざられていた。

hanさんからは500文字以内にまとめた「短い版」も送ってもらったのじゃが、
この「長い版」のほうが面白いのであえてこちらを紹介した。
ハートウォーミングな作風を得意とするhanさんらしく、泣かせる物語に仕上がっておる。
これにラブストーリーの要素が少しだけでも入ると完璧。

●題名:真夏の雪(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
シアトルでベンチャー企業の副社長を勤めるジミー・フレイザーは
恋人のレイチェルと共にクリスマス休暇を過ごすために
イブのシドニー空港に降り立った。南半球は今真夏。
途中でシドニーの実家の両親を拾ってみんなで一緒に
ゴールドコーストの別荘で楽しもうって計画だ。
意気揚々と空港を出てタクシー乗り場に行く途中、ジミーは空を見上げた。
灰色に曇った空から綿のような雪が次々と道路に降りかかっていた。
いつしか雪は街を灰色に染め、空と区別がつかなくなっていく。
そしてそれは生涯忘れられない悪夢の始まりだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
雪はどんどん勢いを増し、気温は急激に下がった。
両親を拾って急いでシドニーを出ようとしたジミー達だが、その行く手をクラッシュした車の山が阻んだ。
「シドニーから出ようとすると見えない壁にぶつかるんだ!」
仕方なく実家に戻ったジミー達は国連事務総長の発表をテレビで聞いた。
「国連では今まで地球外知的生命体、異星人とのコンタクトを極秘裏に進めてきましたが、
彼らからその卓越した科学技術によって
現在地球を襲う多くの環境問題へ対処してもいいとの提案がありました。
我々の技術では人類は死滅するとのシミュレーション結果もあり、
我々は彼らの提案を受諾する事を決めました。
しかし、彼らの提案には一つ条件がありました。地球の人口は多すぎる。
人口を適正に保つ調整の実施を含めた全てをを異星人側で行い、
地球の正常化を促進するという条件です。我々はその条件をのみました。
そして、最初の人口調整地域として我々はシドニーを異星人の手に引き渡すことを決定しました。
異星人はシドニーに降り立つために彼らに適した気温マイナス10度に保ち、
シドニーの内部にいる人間は外へは出ることができないように制限しています」
ジミーは窓から上空を仰いだ。
空からなまばゆく明滅した都市がまるごと一つ入ってしまいそうな巨大な円盤が降りてこようとしていた。

★何といってもオープニングの勢いを衰えさせずにここまでガンガン迫ってくるところが偉いのじゃ!
これも結末が楽しみじゃな! ちょっとレトロなSFの雰囲気がジャック・フィニイっぽくて好きじゃ。
ただし、どんでん返しとしてはもう少しドッキリさせて欲しい。レイチェル一家が宇宙人だったとか。
SFやるなら思いっきり無茶するのがコツじゃ!

●題名:アカデミー賞に招待されたルンペン(作:のり)
◎●◎オープニング◎●◎
東都高速道の八橋サービスエリアの廃車の中に暮らし始めてまる2年が過ぎた。
仕事と家族を失った洋二に突然一通の手紙が届いた。
宛名は八橋サービスエリア気付の猿橋洋二殿。
封筒は洋二が受け取るにはあまりにも不釣合いな丹精な和紙
で作られていた。差出人は日本アカデミー賞推薦委員会とだけ書いてあった。
洋二にはまったく心当たりがなかった。
震える手で恐る恐る開封すると、中から一枚のチケットが、舞い落ちた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:福はうち+
それはまさしく、日本アカデミー賞推薦委員会からの招待状であった。
受け取った猿橋洋二は「なぜ、俺のところに」という疑問の答えは
一向に出なかったが、どうせ騙され人生、騙されたと思って当日
行ってみた。だが、来ていくものがない。
他のルンペン仲間にも相談してみたが、一向に取り合ってはくれない。
「お前だけいい思いをしやがって」とにべもない。
そういえば、ルンペンの太郎がいない。あいつには確か貸しがあったはずだ。
寝床も一緒に貸したし……。それだけで十分だ。
そういえばここ何日か見ていない。
肝心な時に姿を消す奴だ。
当日、恥をしのんで、ルンペンの格好のままいった。
招待状をもってるやつを追い返さないだろうと思った。
豪華なドレスをきた男優、女優が多い中、
洋二と同じようなルンペンの格好をしたやつがいた。
その男が洋二の方に近づいてきた。にやっと笑う男、まさしく太郎であった。
「どうして?!!」
次回作の準備のためにルンペンについて役作りをしていたらしい、
君にはいちばん世話になったからね、好きな人を招待していいっていうからさ。
といってタキシードを洋二の前につきだした。

★他人の作ったオープニングにどんでん返しを付けるというのが、どれほど難しいか。
これはやってみないことにはまずわからないのじゃが、コツは感情移入であるのは間違いない。
福はうち+さんは見事にやってくれておる。
「どうせ騙され人生」とさらりと書いておるが、このセリフはなかなか出ませんぞ。
この一言で猿橋洋二氏のルンペン人生が目の前に見えるようではないか。
想像力というものはテレパシーであり千里眼である。しかもそのパワーの源が
他人に対する優しさから来ておることがよくわかる作品である。
面白いストーリーを書こうとするなら、諸君、何よりもまず他人を愛することじゃ。福はうち+さんのように。

●題名:飛べない天使(作:のり)
◎●◎オープニング◎●◎
天使であるのに飛ぶことができないマルタ。自分のちょっと
したいたずら心が災いして片方の翼を折ってしまった。
天使は一度翼を折ると、二度大空を飛ぶことができない、
と言われていた。ただし、一つの例外を除いて・・・
自分の宿命を呪っているマルタの前に、大天使ヨセフが
姿を現わした。
「今地上には、お互いにいがみ合う一組の兄弟がいる。
その兄弟を仲直りさせることができたらお前の翼を再生
させてあげよう」 大天使はマルタに翼を再生させるための
大きな試練を与えたのだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:もみじまんじゅう
マルタは地上に行き問題の兄弟を観察した。
どうもお互いをいがみ合っているように見える。
仲直りさせるにはこのいがみ合った心をどうにかしなくてはならない。
どうしたものかと思案しながら観察を続けていると
兄弟が持っている羽に気がつく。
それを見たときマルタは思い違いに気づいた。
彼らがいがみ合っているのはあの羽根の所為だと。
そしてその羽根は自分の折れた羽根であることを。

★なんと! 期せずして敵は「フランケンシュタイン」タイプなのじゃ。
解決すべき課題は、自分のいたずら心が原因だったというわけじゃ。
これはなかなか高度で難しい設定じゃが、ぜひ次の課題「勝手にクライマックス」で
多くの人に挑戦して物語として完成させて欲しい素材である。
面白いストーリー作りのための素晴らしいトレーニングになると思う。
よくぞこのオープニングを作り、またそれを選んでどんでん返しを作ってくれました。
さすが常連のお二人の力と慧眼には畏れ入ったのじゃ。ああ、わしはうれしいのじゃ。

●題名:殺す、殺す、自分(作:s-taichi)
◎●◎オープニング◎●◎
「また、死ねなかった。おまけに無関係の人まで…」
忌毛樽(いもうたる)は囚人護送車の中でつぶやいた。
周りにいる警官や、護送される犯罪者も彼を気の毒そうに見つめる。
忌毛は悪を呼び込む特殊体質の男である。
彼の周囲は常に凶悪犯罪が起きてしまうのだ。
自分が生きていては社会に迷惑がかかると自殺も試みたがどうしても死ねない。
彼は不死者だったのだ。
十回目に試みた飛び降り自殺も失敗し、
それどころか人を巻き込んでしまい死なせてしまう。
そんなわけで彼は殺人犯として現在護送されている。
その護送車を謎の人物が襲った。
次々と殺される警官と囚人。
だが忌毛は、奇跡的に襲撃者を倒す。
襲撃者の正体は伝説の殺人鬼集団「13階段」の一人だった。
不死身の肉体の秘密を手に入れようと忌毛を襲ったのだ。
奴らが不死身となったら世界は殺戮に包まれる。
忌毛は、殺人鬼と自分を共に葬る過酷な戦いを決意する。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:s-taichi
忌毛は一人で戦う覚悟を決めていた。
だが、忌毛に協力者が二人現れる。
忌毛の護送車に乗り合わせた刑事、佐伯とその娘である。
最初は心を開かない忌毛だったが
共に「13階段」(メンバーは奇妙なことにほとんどが特徴のない一般人)と
戦ううちに二人と絆が生まれた。
その絆は彼にとってかけがえのないものだった。
だが佐伯の娘が敵に拉致され拷問されて精神崩壊を起こしてしまう。
しかも拉致の手引きをしたのが佐伯だということが判明する。
佐伯も「13階段」の一人で忌毛を揺さぶるために自分の娘を利用したのだ。
本性を現した佐伯を倒す忌毛。
しかし、死ぬ間際の佐伯からは凶暴性が消え、
しかも自分が「13階段」だったことも覚えていなかった。
忌毛に協力して敵と戦って死んでいくという幻想を見ていたのだ。
佐伯の言葉から忌毛は恐るべき「13階段」の秘密に気がついた。
そして、本当の敵・発狂したはずの佐伯の娘があらわれた。

★この作品に関しては作者のコメントを紹介しよう。
◆ぴこ蔵賞をいただき嬉しい限りです。しかし出来上がったのは、
オープニングと比べずいぶん勢いが落ちてしまった感じがする本篇。
ぴこ蔵先生、どうか辛口の批評で見事拙作に緊張感を与えてください。
★いいところに気がついたのじゃ。
オープニングは「裏切りあう言葉」から浮かぶ強烈なイメージに乗って
何の計算もなく勢いで書くから、たいがいは凄いものになる。
しかし、その勢いのまま全体を書く事がいかにむずかしいかが
わかってくれたことと思う。
始まりがあったら終わりも作らねばならぬ。
オープニングは自分の好き勝手にバクハツできるが、
終わらせるには読者を納得させる必要があるのじゃ。
どんでん返しはそのための大事な仕掛け。ここで必要なのは勢いよりも
冷静な計算である。従って、どんでん返しはこれでよいのじゃ。
あとはどう完成させるか…。
そこで、いよいよ次の課題の発表なのじゃ!
「裏切りあう言葉たち」から始まった
一連のシリーズの最後を飾る課題なのじゃ!
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