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こちらでは読者の皆さんからお寄せいただいたあらすじ作品をご紹介します。
この回は、下記の課題に対して提出された作品です。
★課題★
「勝手にクライマックス」
『怒涛のどんでん返し』から
好きなオープニング&どんでん返しのセットを選んで、主人公の成長や結末を付け加えて
その作品の「クライマックス」を作ってください。
勝手にクライマックス全作品
●題名:キレた女教師(作:mitu01)
◎●◎オープニング◎●◎
職員室には、まだ誰もいなかった。
窓際に置かれたポットから湯気がもくもくと上がっている。
ぼんやりとそれを眺めながら、直荷喜連子は重いため息をついていた。
喜連子は私立北ノ湖学園の教師だ。
今年になってから担任は受け持っていない。
一ヶ月後に退職する事がもう決まっているからだ。
本当は寿退社になるはずだった。だが……
――今日、あの女は来るだろうか。
あの女が来たら、冷静でいられるだろうか。
扉の開く音がした。
「ああ、おはようございます。早いですなあ」
あの女じゃなかった。サッカー部の顧問をやっている社会科の先生だ。
「ああっ!」
その先生は窓際の音楽教師の机に駆け寄った。
「酷い。誰がこんな事を」
彼は、机の上でびりびりに破れた書類を手にして言った。
それをやったのは、喜連子だ。
昨夜、結婚するはずだった佐田政史から電話があった。
『ごめん、婚約を解消したい』
『どうして!』
喜連子は後輩の音楽教師に、佐田を奪われていたのだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:mitu01
彼氏を奪われるきっかけになったのは、学校に撒かれた中傷ビラだった。
喜連子はそれを音楽教師がやったのだと思い、問い詰めるが、
しかし彼女はそれを否定し、さっさと学校を辞めてしまう。
探偵のような真似事をして分かったのは、
実はそれをやったのは佐田政史だという事だった。
彼は、両親から親兄弟のいない喜連子との結婚を反対されて気が変わったのだ。
しかし、それを知っても喜連子は彼をせめなかった。
自分にとって本当に大事なのは教師という職業だという事を思い出したのだ。
喜連子は退職届を撤回する。
しかし、校長は渋い顔をする。
落ちこぼれなど放っておいて一部の優等生にあわせ
授業を進ませてほしいのだが、喜連子の場合はそうじゃなかったのだ。
校長は条件をだす。
どうしょうもない不良連中だけを集めたクラス、
その担任を一ヵ月後の終業式まで受け持って
何の問題がなかったら考えてもいいと。
◎●◎クライマックス◎●◎
喜連子は条件を飲んだ。
彼女はあらゆる手段をつかって不良連中を大人しくさせた。教室の窓という窓に紙を貼り、外から見えなくした上で、彼らに煙草を勧め、彼らのために買出しまでした。終業式まで大人しくするという条件つきで、だ。
しかし、これは私の目指していた教師なのか、ある休日、喜連子は兄の墓参りで自問するが、答えは見つからなかった。
あと数日で約束が達成できる日だった。
喜連子は不良生徒の落とした鉛筆を拾ってやった。
すると、屈みこんだ喜連子の胸の隙間からふっくらとしたものが見えて、クラスのなかで一番の悪の相模俊夫が襲ってきた。生徒たちは喜連子を羽交い絞めにした。
喜連子はキレた。
「ふざけないで! ふざけんじゃないわよ。世の中にはね、行きたくても学校にいけない子どもだっているの。あたしの兄さんはね、心臓の病気を持って生まれてきた。普通の学校には行けなくて病院の中の学校で授業を受けていたわ。あんまり生きられなかったけど、先生っていいなって言いながら亡くなっていった……。だから……だから……。あんたたちは最低よ」
喜連子は教室を飛び出した。
世間では夏休みだった。
喜連子は親戚のおばさんに勧められるまま、見合いをしていた。
教師という職業を失った今、いわば自暴自棄になっていた。
ホテルに現れた男性は、しかし、恰好のいい青年だった。名前を相模俊彦といった。しかし、二人っきりになると彼は言ってきた。
「悪いけど、当面、結婚するつもりはないんです」
こんなものだ。あたしの人生なんていつもこうだった。
彼は続けた。
「あなたに興味があった……」
「えっ?」
「弟が、俊男のやつがお世話になったそうで」
弟? 相模俊夫。自分を羽交い絞めにした生徒だ。
「なんですって!」
兄弟が揃って馬鹿にしにきたのか。喜連子はキレた。コップに入った水を俊彦にぶっかけた。
「無理もない。弟があなたにした事はとんでもない事だ」
彼は言い、濡れた背広を脱いだ。そのとき、内ポケットから何かが落ちた。
それは喜連子の退職届だった。
「ああ、そうだ」彼は名刺を出した。
「北の湖学園の理事……」
「馬鹿な弟で、どこにも入る高校がなかった。それでうちに入れたんですがね、しかし、あなたのお陰だ。弟の奴、何をとち狂ったのか、先生になるだなんて言い出しましてね」
そう言って、彼は退職届をびりびりと破いた。
「先生は続けてもらいますよ」彼はにやりと笑い、そして照れくさそうに言った。「また会ってくださいませんか? 正直にいいます。まだ結婚は考えられませんがね、あなたとつきあいたい」
どこからか、うおう、うおうという獣の雄たけびが聞こえてきた。
そして、それは自分自身の泣き声である事に喜連子は気がついた。
喜連子がすぐにキレるのは泣くのを我慢するためだった。両親の事故死、兄の死、幼い頃から泣くのを我慢してきた喜連子は泣き方がうまく分からなかった。
困惑した俊彦の顔と、おそるおそる近づいてくる従業員の姿がぼんやりと見えた。(了)

「対立」の要素が入ってメリハリが効いておる。
二回目のどんでん返しも気持ちよく決まったのう。
追い詰められていくうちに主人公のキャラクターも
だんだんと深みを増してきたのじゃ。
それにしてもこの物語だけは先が読めなかった。
舞台もどんどん転換するし、テーマも変わる。
メロドラマ大河として長期で連続放映するとバクハツしそうなのじゃ。
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●題名:食べる食べる大福(お題:ブンコ/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
甘いものの大嫌いな主人公。
だが、商店街の「イチゴ大福早食い大会」に出場し、優勝を目指している。
甘い餡とイチゴにめまいを感じながら、必死で大福を口に押し込む。
主人公の視線の先には、妻と娘と、「パパ頑張れ」と書かれた横断幕。
そして、優勝商品の「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」。
主人公は、「待ってろ。パパは必ず優勝するからな・・・!」と心に思い、
両手で大福をつかんで、二個一緒に口に押し込んだ。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公は仕事一辺倒の会社員。
ある日、重要な資料が入ったCDがカバンから盗まれる。
財布などの貴重品はそのままだった為、社内の人間の仕業だと疑う。
しかし、ライバルの社員を問い詰めると、「自分はもう出世競争に嫌気が差した」と言われる。
そして、妻から、娘の机の引き出しにCDが隠されていたことを教えられる。
◎●◎クライマックス◎●◎
なぜ主人公は大福を食べなければならなかったのか。
主人公は仕事一辺倒で出世を目指す会社員。
あまりにも仕事人間過ぎて、娘と休日遊ぶ約束も全て破ってしまっていた。
同僚からも半ば呆れられていた。
ある日、重要な資料が入ったCDがカバンから盗まれる。
あの資料は次のプレゼンで使うもので、プレゼンは後一週間後に迫っていた。
早く見つけなければプレゼンは失敗、下手をすればクビである。
財布などの貴重品はそのままだった為、社内の人間の仕業だと疑う。
ちょうど主人公と熾烈なライバル争いをしている社員がいた。
そいつに違いない。しかし、ライバルの社員を問い詰めると、
「自分はもう出世競争に嫌気が差した」と言われる。
さらに「俺はお前と競争としていたとき一度も卑怯なことをした事はない。
そんな俺を疑うとは、お前はその程度の男だったのか」と軽蔑される。
仕事と出世ばかりに目をとられ人間として大事なことを失っていたことに
主人公は気がつく。
そして、妻から、娘の机の引き出しにCDが隠されていたことを教えられる。
娘に話を聞くと、仕事ばかりする主人公にかまってほしくてCDを隠した
ということがわかる。主人公は仕事よりも家族を大事にしようと決めた。
「娘よ、ごめん。お父さんが悪かった。よし欲しいものをいってごらん。
お詫びに買ってあげる」と主人公。
娘は元気に言った。「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」
「それはどこに売っているのかな?」
「売ってないよ。商店街の「イチゴ大福早食い大会」の商品なんだ。
パパ、大会で優勝して勝ち取ってよ」
主人公は驚愕した。私は甘いものが大嫌いなんだ。どうしよう。
ヤフオクで手に入れるか?いやそれでは私が本当の意味で勝ち取ったことには
ならない。大会に出るしかない。大会は一ヵ月後だ。
主人公はプレゼンを手っ取り早く終え、甘いものになれる修行に入った。
修行を手伝ってくれたのはなんとライバル社員だった。
家族を大事に思う主人公に感動した彼は快く修行に協力してくれた。
なぜなら彼自身が仕事に夢中になるあまり、離婚され妻子を失っており、
主人公には自分のようになって欲しくなかったのだ。
さらに、職場の同僚も家族を思う彼を見直し、協力してくれた。
厳しい修行を終え大会当日、ここでオープニングに戻るのである。
ライバル社員は、別れた妻と慰謝料をめぐって話し合うので来れそうに無かった。
順調に勝ち進んでいく主人公だが、決勝戦の相手で中国人の
「帯 蜀間(たい しょくかん)」
に大苦戦する。相手の胃袋は鋼鉄のようであり、勝ち目はなさそうだった。
もうだめか、主人公があきらめかけたとき、ライバル社員の声が響いた。
「あきらめるなーーー!!!これは、お前だけの戦いじゃない。お前の家族と
俺達みんなの戦いなんだぞ」
続く同僚達の声援。いつの間にかライバルと職場の仲間達が応援に駆けつけてくれていたのだ。
皆の声援を受けついに主人公は大会に優勝する。
「パパ、ありがとう。」
イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)を持つ娘の笑顔がまぶしい。
主人公は皆の祝福を受け家路についた。
主人公は現在マイホームパパとはいかないものの、家族と仲良くやっている。
ライバルも月一度会える子供の笑顔を思い浮かべながら頑張っている。
主人公には新しい趣味が出来た。早食い大会に参加することである。

ライバルと理解しあい、友情が芽生え、より強力な敵が登場するという
類型的じゃが確実な効果が期待できる手法を使って、
家族や仲間との感動物語がまずまず破綻なく展開できたのではないかな。
こういう基礎的な黄金パターンは、知っているだけでは役に立たない。
大事なのはこうやって実践に使ってみることじゃ。
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そのCDには、今日の会議に使う資料が入っていた。
主人公は娘を叱った、娘は泣いて部屋に篭った。
とにかくCDは戻ったので会議を行うことは出来た、会議は順調に行っていたが、
資料の最後のファイルをクリックし開くと、そこには"パパ大っ嫌い"とかかれていた。
会議室には苦笑が起こった。
会議終了後ライバル社員が話し掛けてきた、「おちゃめな娘さんですね」
主人公は言った「まさかあんなイタズラをするなんて、私は娘を甘やかしすぎたようだ」
ライバルは言った「お前にはまだ分からんと思うが、そういう場合は大体、お前みたいな父親が悪いんだよ」
主人公はライバルと取っ組み合いのケンカになりそうになったが、周りが何とか止めた。
まったくあいつは私の苦労を分かっていない、主人公は憤慨した。
家にもどると娘は寝ていた、泣きつかれたとのこと。
テーブルの上には、主人公の嫌いなイチゴ大福が置かれていた。
「これはなんだ?」主人公は妻に聞いた。
妻は言った「娘があなたにですって」
私は憤慨して言った「私はどうやら娘の育て方を間違えたようだ、
私は甘い物が嫌いなのに、こんな嫌味なことをしてくるなんて」
すると妻は言った「あなた本当にバカね、娘があなたが甘い物を嫌いだなんて、
知ってるわけないでしょ、あなたはあの子とほとんど話なんてしないんだから、
だからあの子は自分の好きなイチゴ大福を、あなたも好きだろうと思って、
少ない小遣いはたいて買ってきたのに」
私はしばらく言葉が出なかった、そして妻に聞いた。
「あの子はイチゴ大福が好きだったのか?」
妻はあきれ返っていた。
その後、妻から娘が今度行われる「イチゴ大福早食い大会」優勝の商品の
「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」を欲しがっていることを聞く。
主人公は大福を押し込みながら考えた、これは絶対勝たないといけない勝負なのだ。
「パパ、がんばって!」娘の声が聞えた。
そうだ、絶対に負けるわけにはいけない、主人公は隣の席を見た、そこにはあのライバルの社員がいた。
そうだ、こいつには絶対に負けるわけにはいかない!私は大福をさらに押し込んだ。
ライバルはそのさらに押し込んだ、私はさらに押し込んだ、ライバルはさらに、私は・・・・・・。
勝負は終わった、娘は「イチゴのミミーちゃんぬいぐるみ(特大)」を抱いていた。
主人公は勝ったのだ、ライバルを見た。
そこには泣く娘をなだめるのに苦慮しているライバルの姿があった。
こうやって見ると奴も家族のために戦った同士だ、だが同情は禁物だ。
すると娘が言った「ねえ、パパ、このぬいぐるみあの子にあげてもいい?」
娘はライバルの社員の娘を指差して言った。
「だが、それは苦労した娘のために勝ち取った物なのに」主人公はそう言おうとした。
だが娘の顔を見てやめた、主人公はうなずいた。
娘とぬいぐるみを持ったライバルの娘が手をつないで歩いている。
ライバルは言った「申し訳ない、あんなことをしてもらって」
主人公は言った「いえ、娘がそうしたいといったんですよ」
「あなたの娘さんはやさしいんですね」
「ええ、自慢の娘です」
「でしょうね、私の娘もやさしいんですよ」
「でしょうね、ただ私の娘の方がやさしいですがね」
「なにを、いや私の娘のほうが」
「いや私の娘のほうが」
「いや私の娘が」「いや私の」「いや」「いや」・・・・・・
そのとき妻があきれて言った「女房自慢でもしたら」
私達は黙った。

他人の作ったコミカルな設定をうまく生かしてみせた。
「女房自慢しろ」というのはある意味シニカルでブラックじゃな(笑)。
読んどるわしも思わずびくついてしもうたわい。
そんな大人のテイストが隠し味の、なかなか練られた構成である。
最後の1行のキレもよいのじゃ。
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◆◆ぴこ蔵賞受賞作!◆◆
主人公は食道に流れ込むもちもちとした感触と
それがひっかかるのを感じてむせ返り水を流し込み
涙を流した。脳裏に昨日のことのように娘の言葉が思い出される。
「だって、パパ仕事ばっかりで遊んでくれないんだもん。
CDがなければ遊んでくれると思ったんだもん」
それ以上は言わず、娘は泣いた。
そしてつられるように自分も泣いたのだ。
「パパ、遊んでくれるの?」
「もちろん」
「じゃあ商店街の早食い競争に出て」
「分かったよ」
「ミミーちゃんのぬいぐるみとってきてね。約束だよ」
「約束する」
主人公は勢い込んで大福を六個口に押し込み、気を失った。
「あなた、あなた」
妻の声で目を覚ますと、商店街の道の上に倒れ、
そこをたくさんの見物客が取り巻いていた。
「もちを喉につまらせたときはこうするといいんですよ」
どうやら自分を助けたらしい青年が得意げに喋っている。
「大会は……優勝はどうなった?」
「もう終わったわよ」
妻は微笑んで言う。その後ろに隠れているのは娘だ。
娘に合わせる顔はないとうつむく主人公に、娘は抱きついてきたのだ。
「パパ、かっこよかったよ。……ほんとはかっこ悪かったけど、
でもかっこよかったよ」
「まゆみ……」
「ミミーちゃんはもういいの。パパかっこよかったもん」
主人公は三度泣いた。
主人公と妻と娘の三人は夕暮れの中を手を繋いで家路についた。

あらすじとしては「長さ」も評価したい。
いかに手際よく要点だけをまとめるかが重要である。
この作品はその点が非常に長けておる。
短い文章の中に、ポイントを絞ってクライマックスを詰め込んである。
特に、主人公が気を失った後の処理がうまい!
目を覚ますと見物客に取り囲まれていて、
しかも自分を救ったとおぼしき青年が得意げに喋っている。
くだくだと説明するのではなく、
登場人物のアクションでスパッと見せる。
これがエンタテインメント魂なのじゃ。
こういう技術は何度も工夫しないとなかなか身に付かない。
シイナ サトルさんはいい修練を積んでおるのじゃ。
ぴこ蔵賞に決定なのじゃ!
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●題名:楽譜の読めないバイオリニスト(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
CDの音色に、全神経を集中させる主人公は、聞き終えると、
今の演奏を完璧に再現してみせる。
「相変わらず、君の才能には恐れ入る」
感心する師匠に、照れる主人公。
「これで、楽譜さえ読めればねえ」
続く言葉に、今度はがっくりする。
主人公は楽譜が読めないのだ。
どう見ても、音符がおたまじゃくしにしか見えない。
その為、聞いてはその音を再現するを繰り返し、
今では一度聞いた演奏は完璧に繰り返すことが出来る。
だが、その演奏は他人の物であり、
主人公は「機械的に演奏しているにすぎない」と評価されていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
技術はあるものの、独創性がないということで、
コンテストで入賞した経験がない主人公は、次のコンテストで入賞したら、
恋人にプロポーズしようと考える。
だが、用意していた指輪をケースごとなくしてしまう。
師匠の息子は、主人公の恋人に振られた過去がある。
主人公は師匠の息子を追い詰める。
しかし、師匠の息子には、既に別の女性がいた。
指輪は、主人公の恋人が隠していたことが判明する。
恋人は、主人公に他人の真似ではなく、自分の演奏をして欲しいと考えていた。
◎●◎クライマックス◎●◎
恋人は音楽ディレクターで、主人公の音楽のことを一番理解している人物だった。
主人公は恋人に指輪を返すように求めた、しかし恋人はそれには応じなかった。
主人公には恋人の行動の理由がわからなかった。
数日後とんでもないことが起きた、なんと恋人が、師匠の息子と結婚したとの便りが届いた。
主人公は失意のために、コンテストどころか、バイオリンを弾くことをやめてしまった。
そんな感じの時間が数ヶ月続いた。
数ヵ月後、主人公はバイオリンを手に取った。
結局悲しみを癒せるのはバイオリンしかないと気づいたのだ。
主人公は心に浮かんだ感情をそのままバイオリンで引いた、音符は書けない、だからこそ気持ちのままに引いた。
そしてテープに取って、レコード会社に送った。
その音楽はたちまち評判になり、主人公は初めて大ホールでコンサートを開くことになる。
コンサート初日、師匠の息子が主人公の楽屋を訪ねた。
主人公は師匠の息子の妻、つまり主人公の元恋人も来ているのか、とたずねた。
師匠の息子は来ていると答えた。そして席番号の書いた紙を渡して出てった。
主人公はそれを丸めて、ゴミ箱に捨てた。
コンサートは満員だった、ただ最前列に一席だけ、空席があった。
二度のアンコールに答え、盛況のうちにコンサートを終え、楽屋に戻った。
するとマネージャーが、一枚の手紙を主人公に渡した。それは元恋人の書いた物だった。
マネージャーは、もし主人公が成功し、コンサートを終了した時に渡して欲しいと言付かっていたとのこと。
手紙にはこう書いてあった。
“私は余命数ヶ月と宣告され、先がありません、あなたのオリジナルの音楽を聴けずに死ぬのがこころ残りです
あなたはテクニックは一流ですが、まだ感情を込めることは出来ていません、
そのため師匠の息子さんに頼んで、あなたの感情を揺さぶるために一芝居打ってもらいました、
コンサート成功おめでとう、必ず拝見させていただきます”
主人公はさっき丸めて捨てた席番号をゴミ箱からひろい、その席に急いだ。
しかしその席には誰もいなかった、そこはさっきの、一箇所だけ空席だった場所だった。
その座席の中央には、結婚指輪が置かれていた。

悲しい結末を持ったラブストーリーなのじゃ。
しかし、死んでいった恋人が主人公に託した想いは
見事なバイオリンの演奏と共に成就したわけで、
最後はなんだか満足感すら漂わせながら終わっていった。
こういう素材を使うと、なかなか絵にしにくい。
とくに、主人公だけの視点で語りきるのはキツイ。
そんな時は、
途中、ところどころに恋人の視点を入れてみるのもいい。
師匠の息子と話し合うところとか。
バイオリニストのために何か画策するところか。
ただし、ばれないように。
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「だって読めないんだぞ!」
「読めないなら読めるように努力すればいいじゃない!」
「バカ言うな! 僕は根性とか努力が大嫌いなんだ」
「あなたのそんなところが嫌いなのよ。せっかく才能に恵まれたのに
それを磨かないなんて!」
恋人は背を向けて「バカみたい」と呟くと指輪を手にとって呟いた。
「ルビーがついてるわ。高いのね。でも、私はシンプルなものが好き。
注目されて派手に暮らしている人よりも地味にこつこつ働く人が好き。
あなたと私は合わないのね。別れましょう」
恋人は指輪を主人公にぶつけ、部屋を出て行った。
主人公は慌てて後を追おうとするが、床に落ちた指輪を踏みつけてしまう。
豪華なルビーは汚れてもなお輝いている。
磨くとさらに輝いた。主人公は一人ぼやく。
「そうか、そうだったんだ……」
コンテストの日、主人公の調べは審査員たちをうっとりと酔わせた。
流れるようなその中で、主人公は音楽と始めて出会えたと思った。
先人たちも苦悩の中でこの調べを作っていったに違いない。努力して才能を
音楽を磨いていったに違いない。そしてそういうものこそが本当に光り輝くのだ。
「君の中には光り輝くものがある」
そう言われ、主人公は勇気付けられた。
合格したらウイーンへ留学出来る。そうなると恋人とは
もう会えないかもしれない。そわそわし始めた主人公は合格したら
日本に残ろうと決心する。つまり断るのだ。
そして落選の知らせを受けた帰り道、偶然通りかかった公園で恋人と会う。
ベンチに座った恋人は憮然とした態度で「演奏を、ここで、聞かせて」
と叫ぶ。一度も外で弾いたことのない主人公は弓をとった。
調べを聴いている内に恋人の顔は和らいでいく。
「やり直そう」
たった一人の観衆に向かって主人公は叫ぶ。
「僕は音楽の勉強をやり直しているよ」
恋人は微笑み、コンパクトなケースを取り出す。
「あなたから奪った婚約指輪のもう一つ。とりあえず預かっておくわね」
「最初から君が預かっていたじゃないか」
「あなたと思って大切にしようとしたのよ」
二人は吹き出した。公園はすっかり夜になっていた。

本物のルビーは汚れてもなお輝く。
ひとつやふたつ落選したところで才能が消えるわけではない。
他人の評価より大事なのは自分で自分を磨くこと。
そういう気持ちが伝わってきたのじゃ。
多くは語らぬが、力づけられたのじゃ。うれしいのう。
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恋人の気持ちを知った彼には行かなければならないところがあった。
CDの音色を聞いただけで何故、演奏を完璧に再現できるのか。それには理由があった。
玄関を鍵を使って開け、彼は久しぶりに実家の中に入った。つかつかと居間に歩いていくと、
母親が椅子に座りながらうとうとと眠っている姿が見えた。
彼女とは血が繋がっていなかった。つまり彼女は義母、亡くなった父の後妻だった。
父が交通事故で亡くなったとき、彼は施設に預けられる事を覚悟したが、出て行けとは言われなかった。
彼女は父の好きだったバイオリンを彼に与え、そして彼が上手に弾くと、とても喜んだ。
彼はもっと上手く弾けるようになればずっと母親と一緒に暮らせるのではないかと勝手に思い込み、
逆に弾けなければ、いつか彼女に見捨てられるのではないかと考えた。
彼は必死に努力し、こうして演奏機械(マシーン)が完成した。
「あらっ」
母親が目を覚ます。
「母さん、実は話があるんだ」
「好きな人ができたのね」母親はくすりと笑った。「ちゃんと顔に書いてあるわよ」
「母さん、俺……結婚しても、母さんは、母さんだから」
「馬鹿ねえ……当たり前じゃない」
「時々、来てもいいかな?」
「当たり前よ。だってあなたは私の大事な息子なんだから」
「母さん」
彼が演奏マシーンである必要など、もはや、どこにもなくなった。
――恋人は戸惑っていた。
あれっきり彼は会ってもくれない。彼に聞くと「練習さ」と返ってくる。
だが、しかし、そんなはずはないのだ。事実、彼の家からバイオリンの音色は全く聞こえてこない。
指輪を盗んだ事を怒っているのか。彼女は彼の部屋に合鍵を使って忍び込んだ。
机の上に十数枚の紙切れが置いてあるのが見えた。
彼女は近づいてそれを眺め、そして、つぎに驚いた。
その音符の下には鉛筆でアルファベットがかかれていた。
E、A、D、G、それは弦の位置に違いなかった。
彼女が自分の演奏をして欲しいと思ったのは、彼には機械的な面があったからだ。
彼は自分の感情をあまり表に出さない。
彼のことは好きだったが、人間らしくない人と暮らしても幸せにはなれないと思っていた。
しかし、彼女は今までとは違う彼の人間らしい情熱に心を打たれた。
コンテスト当日がやってきた。
彼女は師匠と一緒に彼の演奏を待ちわびた。
そして彼の部屋から持ってきた譜面の写しを師匠に手渡した。
彼の部屋にはコピー機能付きのプリンターが置いてあったのだ。
「この曲は?」彼女は師匠に問いかける。
「カイザーだな」
「カイザー?」
「ああ、練習曲だな。いわば、ギター初心者が弾く『禁じられた遊び』と同じだよ」
「彼がこれを弾いたことは?」
「いや、ないはずだ。聞いたこともないだろう。でもこれがどうしたんだい?」
答えようとすると、彼が舞台の上に立つところだった。
彼の弾く曲がカイザーの練習曲だと知ると、何人かがくすくすと笑い出した。
恋人はたまらなくなり、
「静かにしなさいよ」
気がつかないうちに彼らを睨みつけていた。
練習曲でもいい、彼の演奏をきちんと聞きたかった。
しかし笑いは止まらなかった。
「あいつら」師匠が言う。
舞台の上の彼が顎に当てたバイオリンを外し、マイクの前に立った。
「これから弾く曲を、最愛の母とそれから彼女に捧げます」
ぷっ、という笑い声が聞こえてきた。何人かの男性が腹を抱えていた。
しかし、「静かにしなさいよ」女性たちがそれを抗議した。
彼がどんな思いでそれを言ったのか女性には、よくわかったのだ。
彼女の目からも、暖かいものが流れ出した。下手でもいい。結婚しようと彼女はもう腹に決めていた。
彼が顎にバイオリンを載せると、観客の声はぴたりと止まり、館内は静寂に包まれた。
彼が、ゆっくりと弦を弾きはじめた。(了)

義理の母親と最愛の恋人。
演奏マシーンであろうとした原因となった愛情と
演奏マシーンからの脱却を決意させた愛情。
どちらの愛も大事で捨てる気はないという純粋な意志を
カイザーの練習曲という小道具を使って表現したのじゃ。
しかもそれが男たちに笑われ、それをまた女たちが叱り付ける。
一つの楽曲の持ついろいろな側面を引き出したわけじゃな。
面白い使い方じゃ。感心しました。
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●題名:殴り返す老婆(お題:ぴこ蔵/作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
主人公は、不良仲間4人とともに、日々ゲームセンターやコンビニに
たむろしており、学校もサボりがちだ。
ある夜、ゲーセン帰りの4人は、老婆が一人で裏道を歩いているのを見つける。
面白半分に、老婆のバッグを奪おうとする4人。
だが、意外な力でバッグをつかんで離さない老婆を、3人はこづきまわす。
老婆に手を上げることを躊躇う主人公を、3人は「弱虫」とあざけ笑う。
カッとなった主人公は、老婆のバッグをつかんで、
「さっさと離せよ!」と殴りかかる。
だが、その瞬間、主人公の身体は飛ばされ、ビルの壁に激突する。
唖然とする主人公。
そして、老婆の腕が、金色の獣毛に覆われているのを見て、目を丸くする。
「やれやれ、しょうがない坊や達だ」と言う老婆の身体は、
見る間に金色のライオンに変化した。
「おいたが過ぎたね、坊や達。お仕置きだよ」
驚いて逃げ出そうとする3人、腰が抜けて動けない主人公。
だが、後ろから複数のメスライオンが現れ、挟み込まれる。
「学校で習わなかったのかい?ライオンの狩りは、複数でするんだよ」
追い詰められた4人は、必死で助けを求める。
だが、ライオンはじりじりと間合いを詰めてきた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
主人公の不良仲間の一人が、何者かに襲われ、意識不明の重体に陥る。
その事件と前後して、老婆がライオンに変身し、人を襲うという噂が流れた。
だが、噂を流したのは、不良仲間の一人だった。
自分の恋人を奪われた腹いせに、仲間を襲ったのだ。
◎●◎クライマックス◎●◎
ライオンに追い詰められ、死を覚悟した不良達の前に謎の中年男が現れる。
男はライオンを苦闘の末倒し、気絶する。仲間は逃げたが主人公は男を助ける。
男を家に連れて帰ると主人公の両親が出迎えた。主人公と両親は仲がよくない。
両親は高学歴で生物兵器撲滅を目指す「生化学者兼生物兵器調査員」で
主人公に後をついで欲しかった。
だが、主人公は勉強が苦手で両親の期待が重荷過ぎた。
それで荒れていたのだ。
両親は主人公を助けた男を丁重にもてなした。
男を囲んでの食事中、ライオンが襲ってくる。
何とかライオンを殺すと、それは全裸の女性になった。
なぜか両親は驚かなかった。
不審に思いながらこれまでのいきさつを話す主人公。
両親は説明を聞き終わると、最近発生しつつある奇妙な出来事を話した。
ここ数ヶ月の間に、細胞を突然変異させ別の生物になることのできる生命体が
見つかっているのだ。
不思議なことにその生物はメスだけだった。
それだけではなく、犯罪集団が日本に次々と進出してきたのである。
主人公の両親はそれを調べていたのだ。
ライオンは口封じのために主人公達を襲ったのだろう。
このままでは皆の命が危ない。主人公達は協力して生命体と戦うことにする。
男は主人公達と同居することになる。だが、問題があった。
両親は圧力をかけられており3ヶ月以内に調査を完了させなければ
研究所を首になるという。
犯罪組織からの脅迫もいくらかあった。
早くしなければ全て闇に葬られる。
生命体を倒し、犯罪組織のけん制をかわしながら調べていくと、
細胞を変化させる物質が改造された子宮から生成されていたことがわかった。
変化物質は改造された子宮からのみ製造できる。
女性だけが変身していた理由ががこれでわかった。
更に脳手術も施され凶暴な性格にされていた。
主人公の両親はこれを見て、ある女性科学者の名前をあげた。
彼女の名前は泉智子といい、夫の家庭内暴力に悩んでいたという。
離婚したものの心の傷は深く、女性の肉体を男性にも対抗できるよう
強化することに固執していた。
彼女が犯人ではないかと睨んだ主人公達は彼女の調査を開始する。
ほどなくして彼女の居場所を男が見つける。
だが、隙を突かれて主人公の両親が誘拐されてしまう。
24時間以内に助けなければ両親を殺すという脅迫状もあった。
二手に分かれて男が泉の本拠地に赴き主人公が両親を助ける
というプランを男が提示した。
両親を助けることを主人公は渋った。
主人公達の絆は共に戦ううちに深まっていたが、
親子関係はいまだギクシャクしていたからだ。
そんな主人公を男がひっぱたく。
男は家族を突然変異生命体に殺されており、その復讐のために戦っていたのだ。
男の言葉で自分の身勝手さと家族の重要性を痛感した主人公は
家族を助けに単身赴く。
男も泉の下へむかった。泉はすでに殺されていた。
死体は白骨化しており、生命体ができる前に死んでいたようだ。
研究データが全て盗まれておりそのデータをもとに生命体を作ったのだろう。
そもそも家庭内暴力で苦しんでいた泉が
女性に残酷な脳改造手術をするわけが無い。
他には何もなさそうだったが男は泉のベッドの下にイノヴェルチという文字を
見つけ戦慄する。
イノヴェルチとは最近急激に力をつけた犯罪組織で
日本に進出してきたグループでも最大手である。
すぐに知らせようとする男だが電話がつながらない。
うろたえる男。その時外に車の止まる音がする。
一方主人公は両親を無事発見する。
周りには誰もいず、奇妙に思いながらも主人公は二人を連れて帰った。
家に帰ったものの、両親の様子がおかしい。
変異生命体のことなどまるで覚えておらず、男の事も知らないという。
生命体のデータは両親のパソコンになく
男が使っていたはずの部屋ももぬけの殻で、誰も使っていた気配は無い。
まさか全て自分の妄想だったのか。
そんな時主人公は不良仲間がライオンに襲われ意識不明になった
ということを知る。おまけに老婆がライオンに変身するという噂も流れた。
やはり自分の記憶は間違ってなかった。
安心する主人公だが、全て不良仲間の仕業だということがわかる。
恋人を主人公にとられた腹いせだったのだ。
主人公は両親の期待に耐えかねて妄想を見ていたと結論づけて、日常に戻った。
だが、日に日に主人公の中で妄想ではなかったという思いが強まる。
主人公は男が泉の下へ向かったことを思い出し、そこへ行くことにする。
泉の住居にも証拠らしいものは無かったが、
隠し通路から地下にいけることがわかる。
地下には、泉、男、両親の死体が転がっていた。
やはり事件は起こっていたのだ。
助けた両親は偽者で本物は誘拐されたときに殺されていたのだ。
驚愕する主人公の前に偽者の両親が現れる。
偽者はイノヴェルチが作り出した生物兵器の一つで
どんな姿にでも変われる化け物だった。
偽者はイノヴェルチに逆らうものを消す刺客だが、
主人公は生物兵器に改造するのに適した体だったので殺さなかったのだ。
主人公は偽者に最新の改造子宮を埋め込まれる。
この子宮は男にもつかえるのだ。つまり、これは人間を両性具有にするもので、
埋め込まれたものは自由に男にも女にもなれる。
ついでに細胞を突然変異させ生物兵器にもなれるという最悪のものだった。
主人公は子宮を埋め込まれたショックと、
家族と男を虫けらのように殺された怒りで暴走し、
偽者の両親をあっさり殺してしまう。
ひとまず戦いに勝ったものの絶望的な戦いに巻き込まれたことを
主人公は自覚した。
まず、両性具有であり生物兵器の自分自身コントロールする戦い。
暴走は許されない。
おまけにイノヴェルチが自分の体を求めて襲ってくるだろう。
それでも主人公は立ち上がった。
殺された両親と男のため、そして自分を守り邪悪な犯罪組織を潰すために。
街に出た主人公は裏道で老婆をいじめる不良を見つける。
昔の自分と重なり腹が立った主人公は不良を殴り倒し老婆を助ける。
老婆はニタリと笑うと化け物に変身した。
もうライオン以上の生物兵器が敵側にいるらしい。
主人公も変身し化け物に向かっていった。戦いは始まったばかりだ。

作者からのコメントとして
「ぴこ蔵さんのお話どおり巨悪を登場させて、
Xファイルと仮面ライダーを融合させたすとーりーにしたかったのですが…。失敗かな。
オープニングとどんでんがえしを融合させにくかったのでアレンジしてしまったのも
syaoさんには申し訳なかったと思います。
とにかく、もっと話を盛り上げられた気がしますね。私では役不足だったのでしょう」とある。
いやいや、わしはこの終末観漂う絶望的な舞台がけっこう気に入っておるぞ。
殴り返す老婆というコンセプトを忠実に敷衍した結果、
両性具有というイメージが出てきたところもよいではないか。
意外に詩的な作品になったのう。
なんとなく安部公房の「第四間氷期」という小説を思い出したのじゃ。
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●題名:世界を救う魔王(作:syao)
◎●◎オープニング◎●◎
魔王と勇者が小競り合いを繰り返す世界。
人間同士の争いがエスカレートしそうになると、
魔王が害悪をもたらし、勇者がそれを収める。
これによって、人間同士の結束を高め、平穏を保っていた。
主人公は、魔王の子供で、今日も好奇心一杯に走り回っている。
世話役の魔物は、主人公に立派な魔王になってもらおうと、
馴染みの勇者に主人公を冒険に連れ出すよう頼む。
そして、主人公には、
「別世界から来た化け物が、世界を支配しようとしている。
このままでは、魔王様が危ない」と言う話をでっち上げ、
勇者とともに旅立つよう促す。
初めての冒険に、興奮する主人公。
その頃、人間界では、魔物とは違う「妖怪」が現れ、人々を不安に陥れていた。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:syao
「妖怪」が町や村を襲う事件が頻発する。
このままでは世界が破滅すると、勇者とともに旅立つ魔王の子供。
冒険の末、「妖怪」の棲家を見つける主人公。
退治しようとするが、「妖怪」が元は人間だということを知る。
勇者が、人間の死体を「妖怪」に変え、魔王を排除しようとしていたのだ。
◎●◎クライマックス◎●◎
旅が始まり圧倒的な強さで妖怪を倒す勇者に、憧れを持つ主人公。
勇者に比べると遥かに弱い主人公も頑張って妖怪を倒す。
どんどん妖怪を倒しながら二人は旅を続けた。
だが、次々と妖怪を殺す暴力性に主人公は微かな悲しさを覚え始める。
勇者と比べて弱すぎる自分にコンプレックスもあった。
そんなある日、主人公達は妖怪に襲われている老人を助ける。
老人の家に誘われ食事をもらう二人。老人は学者であった。
妖怪の正体を調査し、妖怪と人間が共存する方法も考えているという。
老人によると妖怪の増殖スピードは凄まじく、
後五年以内に対策を講じなければ最悪の事態は免れられないらしい。
主人公は倒すのが当たり前だと思っていた妖怪と
共存の道を探る老人に大きな衝撃を受ける。
だが、勇者は老人を妖怪の仲間だと疑い主人公に老人の家に残って彼を見張るよう命令する。
主人公は老人の家に残ることになり、共同生活が始まる。
もともと頭のよかった主人公はあっという間に老人の優秀な助手になり、学問に目覚め、
人と妖怪の共存を老人と共に懸命に探るようになる。
主人公は肉体の冒険をやめ知の冒険を始めたのだ。弱さへのコンプレックスも
消え自信もついた主人公だが、妖怪の正体と共存方法はとうとうわからなかった。
妖怪の勢力は増すばかりで勇者の消息も途絶えてしまう。更に各地の有能な
戦士や魔法使いなどが次々と殺され、最後には魔王まで行方不明になる。
もう絶望か。その時勇者から妖怪の本拠地を見つけたと連絡が入る。
本拠地に入り妖怪の親玉と話せば彼らの正体がわかるかもしれない。
主人公は老人と別れ勇者と妖怪の本拠地に乗り込む。
だが、そこには誰もいない。勇者にどういうことか聞く主人公。
勇者が告白を始める。勇者は魔王と自分の関係に嫌気が差し、世界を自分だけ
で支配しようとしていたのだ。そのために魔王が邪魔になり、妖怪を使って
魔王を殺そうとした。各地で戦士などを殺していたのも勇者だった。
妖怪は人間の死体をよみがえらせて作っていたのだ。主人公に襲い掛かる
妖怪達と勇者。主人公は勇者の話から妖怪の正体がゾンビの一種であることを
見抜き、老人と研究して開発した薬で妖怪たちを成仏させていく。
主人公は暴力を捨て妖怪たちを救ったのである。そんな彼に妖怪も感謝し戦い
をやめた。追い詰められた勇者は自ら最強の妖怪に変身する。
薬も効かず追い詰められた主人公と妖怪たち、そこにあの老人が現れる。
老人の正体は魔王であった。様子のおかしい勇者を調べていたのだ。
魔王と勇者は長い死闘の末、相討ちになって倒れた。主人公に遺言を残す魔王。
「私が害悪を起こし人間の結束を高める。このような力業だけでは世界は
守れない。現に勇者は権力の欲に狂ってしまった。これからは学問の力で
誰もが幸せになることのできる社会を作らねばならない。お前に学問の基礎は
全て伝えた。それを発展させみんなが平和に暮らせる社会を作ってくれ」
主人公は、涙を流しながら遺言を受け入れた。
そして学問を通して生涯世界に貢献しつづけたのである。

作者コメント「受験勉強を通して学問の大切さを知ったので、こういう
話にしてみました。あまり面白くなくて申し訳ないんですが、
どうしても言いたかったんですよ。学問は大事だと。」
なるほど。魔王というのは人間社会を維持するためのシステムだったのか。
勇者は権力を求め、妖怪たちは死にたがる。
正義の名の下に正当化された暴力性に絶望した主人公は学問という
一見遠回りだがリアルな説得力を受け入れる。
これもまた終末感漂うS-taichiワールドなのじゃ。
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●題名:駆け抜ける事務員(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
ジリ貧商事の篠原は会社ではマジメ一直線の地味な経理部員だったが、
実は上司の経理部長が無能なことをいいことにして
会社の金を二千万も使い込んでいた。
「こんなザルみたいなあやふやな経理状態の会社、
金ちょろまかすくらいわけない」
と高をくくっていたある日、取引銀行から役員が送り込まれてきて、
経理部にも新しい部長が来た。
「すべての帳簿を整理して一週間後に提出するように」
一週間以内に二千万を補填しなくては、不正がばれてしまう!
困った篠原は、いつも競馬場で会うノミ屋の玄さんに相談する。
「一週間で二千万稼ぐにはこれしかないよ」
そう言って玄さんが紹介してくれたのは、
暴力団赤恥組の組長・赤恥源五郎を殺すヒットマンの仕事だった!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
篠原に他に選択肢はなく、仕方なく赤恥を殺す依頼を引き受けることにした。
「でもどうやって殺せばいいんですか?
今まで人を殺したことなんて一度もないんですよ」
「任せておけ」
そう言って玄さんは、中国に伝わる七星暗殺拳を通信教育で学んだ格闘技マニアと
世界中のありとあらゆる銃火器の取り扱いに詳しいミリタリーおたくを紹介してくれた。
有給休暇をとって一週間彼らの元で血の汗が噴き出るような激しい修行を積んだ篠原。
その甲斐あって篠原の身体能力は驚くほどアップし、
銃火器の知識と熟練度は米軍海兵隊並となった。
「これで準備は整った」
玄さんはどこから手に入れたのか赤恥の一週間のスケジュールと
突進してくる猛牛でも射殺できる威力を持つ拳銃・デザートイーグルを篠原に手渡した。
それらを元に赤恥の身辺を付けねらい始めた篠原。
「もはや事務員というより歩く殺人機械だな」と一人自惚れる篠原だったが、
常にボディーガードをつれて行動する赤恥に隙を見出すことは難しかった。
しかし、そんな篠原に絶好のチャンスが訪れた。
ついに源五郎の愛人宅への潜入に成功し、寝る赤恥の枕元に立ったのだ。
しかし、そこに眠っていたのはなんと玄さんだった!
◎●◎クライマックス◎●◎
◆◆ぴこ蔵賞受賞作!◆◆
「篠ちゃん、待ってたよ」
「玄さん、あんた…。赤恥源五郎だったのか。なぜ、自分を殺させるようなまねを…」
「赤恥組設立から30年。わしはずっと組長として舎弟どもを引っ張ってきた。
抗争の時は先頭に立って、切り込んでいったもんじゃ。
しかしのう、そんな生活にももう疲れた。
組長の重圧から解放されたかったんじゃ。
しかし、わしは五発の銃弾を喰らっても死ななんだ『不死身の源五郎』。
引退しようにも組の者が認めてくれん。
こりゃいっそ死ぬしかないと思ってもの、
『不死身の源五郎』が自殺なんぞしたら周りから組が舐められちまって残った奴らがかわいそうじゃ。
だから、誰か殺してくれんかのうと思ってたところに篠ちゃんがうまい具合に来てくれたわけじゃ」
「ノミ屋の玄さんになっていたのは」
「あれは息抜きじゃ。わしは昔から競馬が好きでの。競馬で食って生きたいとずっと思ってたんじゃ。
だから空き時間を見つけて玄さんとして競馬場に出没していたんじゃ。いやあ、楽しかったのう」
「さて、篠ちゃん、やってくれ。二千万はわしが死ねばあんたの口座に振り込まれるようになっておる。
さあ、やってくれや」
源五郎は目を瞑った。
篠原の持つデザートイーグルが源五郎に向かって照準を定める。
バスン!サイレンサーの付けられた銃から銃弾が発射された
。
しかし、銃弾は源五郎の頭のすぐ横に向かって放たれ、枕に黒い穴が開いた。
源五郎は目を開けた。両目からは涙があふれていた。
「あんた、泣いてるじゃねえか。口では死にたいとか言っておきながら、いざとなったら泣いてるじゃねえか」
篠原は銃をホルダーに納めた。
「自分の人生を都合よく他人に幕引きさせるんじゃねえよ。手前のケツは最後まで手前で拭きやがれ」
篠原はそのまま出て行った。
二週間が経ち、経理部長に帳簿を提出する日がやってきた。
「部長お話があります」
篠原は自分から横領している事を部長に話した。
篠原は刑事責任を問われ、実刑判決を受けて刑務所に入った。
五年後。篠原は刑務所から出てきた。
「あんたが篠原さんかい?」
刑務所の門の前で黒塗りのベンツに乗った男が待っていた。
「あんたは?」
「あんたに昔世話になった男…の息子さ」
男は篠原に封筒を手渡した。中には二千万円の小切手が入っていた。
「玄さんの息子か」
「そういうこった」
「玄さんは元気かい?」
「二年前に死んだよ」
「どうやって?」
「どうやってって…肝臓癌さ」
「自殺じゃなかったんだな」
「自殺?」
「いや、こっちの話だ。なぜこれを俺に?」
「親父の遺言に書いてあってね。仔細は知らんが親父が世話になったようだな」
「俺は何もしてないぜ」
「あんたにそのつもりはなくても、親父には感じるところがあったんだろうさ。とにかく渡したぜ。
その金でもう一度やり直せよ。あ、あとよ、親父の義理は俺の義理だ。
何かあったら俺の事を頼ってもらっていいぜ」
そういうと源五郎の息子は去っていった。
「親父も親父なら息子も息子だな…」
篠原は小切手をポケットにしまって空を見上げた。いい天気だった。
-------------------------------------------
▼作者コメント▼
オープニングからクライマックスの中に一応Wの選択もタイムリミットも入っているので、
これが一番基本に忠実に仕上がったかもしれません。
しかし、「本当の敵が実は知り合いだった」っていうのはどのTYPEにも当てはまらないような気もします。
TYPE01「敵を追い詰めたら、実は別にいた」の亜流ではないかと自分では考えているのですが、
実際どうなんでしょう?

とてもキレよく仕上がったのじゃ!
どんでん返しが鮮やかに決まっておるので、後半の泣かせるエピローグも効果倍増じゃな。
しかし、この物語はTYPE01の亜流ではないぞ。
【目的】を追う主人公が、その邪魔をする【本当の敵】と戦う
というのが面白い物語の基本形じゃったな。
ここでよーく考えてみると、
篠原にとって玄さんは「本当の敵」というよりも「目的」なのじゃ。
赤恥源五郎は、篠原に一方的に命を狙われるだけで、
篠原をやっつけようとか邪魔しようとかしていないからのう。
したがって、このあらすじは<TYPE08>。
【目的】はどこか遠くにあると思っていたら、自分のそばにいた。
というやつじゃ。
その証拠に、ほれ、この物語には、憎むべき敵が出てこないではないか。
それどころか人情話になっておるのじゃ。
読後感もすがすがしくて、うむ、良い出来じゃ!
ぴこ蔵賞、決定!
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●題名:1万メートルの密室(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
最近話題の名探偵厳正寺大五郎に資産総額1兆円と言われる若王子家の令嬢
若王子玲奈から失踪した婚約者・秋口三朗の行方を探して欲しいとの依頼が
入った。
時同じくしてサンディエゴのマリオネットホテル全体にドーン!という衝撃が
響き渡る。
音がした101号室では激しい衝撃で床にめり込むように焼け焦げた
バラバラの死体が発見された。
鑑識の結果、被害者は少なくとも1万メートルの高度から落下死したと見られ、
状況から落下現場はその部屋だと断定された。
しかし、部屋の高さは3メートルしかなくどこにも穴一つ開いていないのだ!
部屋の遺留品からその被害者は秋口三朗と断定され、
人類の最終兵器・厳正寺大五郎は捜査を開始する!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
大五郎は玲奈と共にアメリカに飛び、そこでの三朗の足取りをたどった。
すると死亡三日前から前日までの足取りが不明なことが分かる。
さらに調査を進めようとする二人だったが、
それを妨害するために何者かが大五郎と玲奈を襲撃してきた。
しかし、大五郎は驚くべき身体能力を発揮して襲撃者達を撃退し、
二人は襲撃者の遺留品から若王子グループの秘密開発施設を突き止めた。
「一体何なんだこの施設は……」潜入した二人は衝撃を受ける。
反重力装置で飛ぶUFO。空間歪曲技術によるワープ装置。
人類の科学ではなし得ない恐るべき技術がそこでは実現されていた。
さらに二人は研究員ケイト・マクガイアによって作られた精神抽出装置を発見した。
それを使えば人間の記憶と心を抽出して別人に移すことができるのだ!
クサいと睨んだ大五郎はケイトを尋問し、
この施設の技術は地球を訪れた異星人から教えてもらっていることと、
秋口三朗と玲奈の父・若王子善政が死亡三日前にこの施設を訪れ、
互いの記憶と心を交換したことを聞き出した。
二人は急いでロスの若王子家の屋敷に向かう。
そこには若王子善政、いや、記憶と心を善政の体に移植した秋口三朗がいるのだ!
◎●◎クライマックス◎●◎
屋敷に着くと善政=秋口三朗が二人を待っていた。
「どうしてこんな事を…」絶句する玲奈に、三朗が語り始めた。精神移植を提案してきたのは若王子善政だったのだ。
「なぜ、お父様が…」「お義父さんは君を溺愛していた。その異常な程の愛情がやがて男女の感情に変化してしまったんだ。率直に言うよ。お義父さんは君を抱きたかったんだ。しかしそれは許される事ではなかった。だから君の婚約者である僕との精神交換を思いついたんだ。彼は僕の肉体を得る代わりに若王子グループの金と権力を僕にくれると言った。もちろん拒否したさ。でも、それは提案ではなくて、脅迫だった。彼はもしこの要求を呑まなければ僕を殺すと言った。そうしてでも肉体を手に入れると。僕には抗いようがなかった」倒れようとする玲奈を大五郎が支えた。「マリオネットホテルでの事故は何なんだ?」「開発施設を見ただろ? あそこにあるワープ装置さ。お義父さんが泊まっていたホテルに帰るのにあの装置を使おうとしたんだが、失敗したんだよ。不幸な事故だった」大五郎は目を細めた。「違うだろ。お前が殺したんだろう?」三朗はひるんだ。そして、少しの時間考えて言った。「ああ、僕がやったよ。転送機のパラメータをいじってね。ワープ装置を使うように勧めたのも僕だ。……しかし、なぜ分かった?」「あの装置は通常使用ではあんな事故が起こるはずのない安全なものだ。無理やり精神移植させられた君が善政氏を憎まないわけがないからな。それに君は、玲奈さんを愛していたんだろう?」「ああそうさ、今でも愛しているさ。だからあんな狂った男に玲奈を渡すわけにはいかなかった。たとえ元の体に戻れる可能性がなくなるとしても、あの男を抹殺するしかなかった。玲奈、若王子善政はもう君の知ってるお父さんじゃなかったんだ。自分の欲望のためには何でもする獣に成り果ててしまってたんだよ」「ううう…」玲奈は泣き崩れた。三朗は言った。「もっとも、僕は今では満足してるんだ。結果として若王子家の強大な力を手にする事ができた。若王子家はね、ある世界的組織の表の顔なんだ。その組織はリオン・ノワール、黒い獅子と呼ばれている。リオン・ノワールは異星人と強力なパイプを持っていてね、彼らから技術提供してもらってるんだ。その代わりに地球上における彼らの活動をサポートする。ギブ・アンド・テイクだね。異星人の力があれば我々が人類の王になる事も夢ではないんだよ。リオン・ノワールのトップは日本人でね、善政としての僕は彼とも懇意なんだ」そして三朗はうっすらと笑った。「まあ、ここまで教えてあげたのも、君達をこのまま帰すわけにはいかないからだ。玲奈は後で記憶を消去させてもらうよ。そして、厳正寺君。君には死んでもらう」三朗がベルを鳴らすとドアから5人の屈強な男が入ってきて、大五郎に襲い掛かった。大五郎は動じず静かに印を結び真言を唱えた。すると突如部屋の中に象に乗った普賢菩薩が現れ、あっという間に男達をなぎ倒した。「精神攻撃か……。なるほど」三朗はその隙にドアから逃げた。玲奈と共に追う大五郎。地下の倉庫に逃げ込んだ三朗は、そこに置かれていた六本の腕を持つアンドロイドを起動した。「精神攻撃は心を持つ人間だけに通用するものだ。心を持たないアンドロイド相手ではどうかな?」阿修羅像をかたどったアンドロイドが大五郎に飛びかかる。アンドロイドは目には見えないほどのスピードで次々と攻撃を繰り出した。しかし、大五郎はことごとくそれをかわしてついにはアンドロイドを破壊した!「マッハ2で動くアシュラノイドC−03を倒すとは」大五郎は言った。「俺はマッハ2.5で動けるのさ。俺はね、神経ニューロンをはじめとする全ての細胞を増強改造されたサイボーグなんだよ」「やはり……。二年前、若王子家の開発施設から脱走したサイボーグがいると聞いていたが、君がそうなんだな」「ああ。自分の意思に反して改造された。若王子の施設だったとは知らなかったがね。だからワープ装置の事も知っていたし、無理やり精神移植された君の気持ちも分かるのさ」「じゃあ、君のお父上は厳正寺獅子蔵様なんだね。君はリオン・ノワールのトップのご子息というわけだ。名字で気付くべきだった」「あの男は父ではない。高野山で日々真言密教の修行を重ね僧侶として人生をまっとうしようとしていた俺を拉致して無理やり改造したのだ」「君は僕の場合とは違うよ。密教の秘術を使い、マッハ2.5で動く……そして能力はそれだけじゃないんだろう? 君は人類史上最高の能力を備えた人間なんだ。いわば超人間だ。それはお父上から与えられた福音なんだよ」「馬鹿な。人は人として生きるのが良いのだ。それが僧侶として生きた俺の結論だ」近づく大五郎を三朗は制した。「君相手ではかなうはずがない。僕はもう終わりだ。最後ぐらい自分で幕を引かせてくれ」「三朗さあああーーん」三朗は銃で自分のこめかみを打ち抜いて死んだ。一ヶ月後、玲奈は大五郎の元を訪れた。玲奈は事件のショックで入院していたのだが、ようやく退院できたのだ。玲奈は若王子グループを自分が受け継ぐ事を告げた。「もう、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、リオン・ノワールとはきっぱり手を切って健全な会社に生まれ変わります」「それがいいです。影ながら応援していますよ」「厳正寺さんはこれからどうなさるの」「俺は探偵やりながら、かつて父と呼んだ男を捜し続けます。あの男がいる限り、今回のような悲劇は続きますから。俺自身の命をかけてやらねばならないんです」「……つらい人生ね」大五郎は微笑んで言った。「でも、それが俺の人生ですから」大五郎の戦いは、まだ始まったばかりだ。

↓後ほどまとめて
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●題名:「たった一人の佐藤さん」(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
日本人で一番多い苗字は何? 答えは佐藤さん。
全国には200万人の佐藤さんがいるのです。
そして、その200万人の佐藤さんがある日突然消えてしまったんです!
そう、職場からも家庭からも「佐藤」と名の付く人は1人残らずいなくなってしまったのだ。
いや、ごめん。いた。
佐藤きみえ(21)。
彼女こそが日本全土を震撼させた「佐藤さん失踪事件」で唯一残った佐藤さんなのです。
そして、きみえ自身も両親と姉と弟をなくした犠牲者だった。
「みんな、一体どこに行っちゃったのよ!」
たった1人の佐藤さんとなってしまったきみえが
雑誌に「今週のイチオシ名探偵」と紹介されていた厳正寺大五郎と共に巨大な謎に挑みはじめた!
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
厳正寺大五郎シリーズ第2弾です。
まずきみえの実家を調べたところ、弟の健次郎が使っていた携帯が発見された。
携帯には失踪の一ヶ月ほど前から
「桜川さゆり」という人物との間で頻繁に交換されたメールが残っていた。
「素晴らしい場所です」桜川さゆりは何度も繰り返していた。
「ここに来る事によって、あなたは人間として最大限の幸福を得ることになるでしょう」
調査の結果、桜川さゆりは「超人間解脱研究会」の一員であることが分かった。
早速、桜川さゆりとコンタクトを取った大五郎ときみえ。
問い詰めるとさゆりは
「会の幹部から佐藤という苗字の人間のリストを作成せよとの指示があった」と答えた。
そこで大五郎は厳重に警備されている超人間解脱研究会本部に乗り込むことにした。
三つ首の大蛇に守られていた会長室で大五郎はついに超人間解脱研究会の会長・魚崎神玄と対峙する。
神玄は不動明王を使った波状精神攻撃を仕掛けてきたが大五郎には通用しなかった。
「お、お前は…」逆に普賢菩薩を使って神玄を追い詰める大五郎。
93歳の老人の姿に戻った神玄はついに大五郎に全てを話した。
60年前に潰れかけた超人間解脱研究会に資金援助し、
今回佐藤リストを欲しがったのは若王子家である事を。
◎●◎クライマックス◎●◎
きみえと大五郎は若王子家の現在の総帥・若王子玲奈のいるロサンゼルスへと飛んだ。事の大きさにきみえは恐くなってきた。「大丈夫。俺が守るよ」大五郎はきみえの手を握りしめた。ロスの若王子家の屋敷に着いた二人は応接室へと通された。しかし、そこに居たのは大五郎の高野山時代の先輩僧・慶真だった。大五郎の後に慶真もリオン・ノワールに誘拐され、大五郎と同じ改造を施されていたのだ。「もっとも俺はそれを喜んでいるがな。俺がここにいる理由が分かるか? お前を斃すためさ」マッハ2.5で襲いかかる慶真。「やめてくれ、あなたとは戦いたくない!」互角の戦いが繰り広げられるが、大五郎は防戦に徹していた。らちが明かないと見た慶真は真言を唱えた。「オン・バサラ・ダルマ・キリク!」慶真の背後に千手観音が現れる。大五郎も普賢菩薩を呼び出した。「お前に密教の秘技を授けたのはこの俺だ。お前は俺には勝てん!」千手観音の持った錫杖が普賢菩薩の頭を叩き割った。大五郎はよろめきながら真言を唱えた。「オン・バザラダト・バン」すると剣を持った大日如来があらわれ千手観音もろとも慶真を突き刺した。「成長したな、大五郎……。教えてやるよ。玲奈総帥は、アリゾナの砂漠にある地下秘密基地にいる。そこに拉致された佐藤さん達もいる」慶真は絶命した。空港でセスナ機をジャックしてアリゾナに向かうきみえと大五郎。砂漠に向かいながら大五郎は脳内サーキットをアメリカ国防総省につなぎ、軍事衛星を操作して秘密基地の入り口をつきとめた。入り口に到着するやいなや五百万馬力で扉をこじ開けて侵入する大五郎。玲奈はコントロールルームにいた。「やはり来たのね、厳正寺さん。いえ、次期リオン・ノワール会長」「何を言っているんだ。あの男もリオン・ノワールも俺の手で壊滅させてやるさ。君はどうしたんだ? 若王子家はリオン・ノワールと手を切るんじゃなかったのか」「私が間違っていたのよ。獅子蔵様に会ってそれが分かったの。あの方の素晴らしい理想を何としても実現させなければ。それが力を持った者の義務なのよ」「君はだまされているんだ。目を覚ませ」「目を覚ますべきなのはあなたの方よ。無自覚な人類のせいで、地球は滅びようとしているわ。浄化して元に戻すために異星人のテクノロジーが必要なのよ」「そのために佐藤さん達を拉致したのか」「そうよ。異星人が人類の遺伝子を独自に解析して佐藤姓の人達に人類の進化にかかわるパターンを見つけたの。それを詳しく調べるために佐藤姓の全員を地方自治体と超人間解脱研究会をはじめとする若王子家の末端組織を使ってリストアップして居場所を特定してからワープと反重力光線を使って一気に拉致したのよ。一気にやらないと騒ぎが大きくなってやりにくくなるから」「拉致した人達を使って人体実験でもしようって言うのか?」「それは分からないわ。異星人のすることだもの。ただ調査結果はフィードバックしてくれるとは言っていたけど」「なぜ私だけ拉致されなかったの?」きみえが訊いた。「あなたはあの夜どこにいるのか確認できなかったのよ。自宅はおろか友人宅にもどこのホテルにもいなかったでしょう?」そうなのだ。きみえはあの夜ひとりで一杯飲み屋で飲みまくり、泥酔してゴミ置き場でゴミ袋の下敷きになりながら寝ていたのだ。誰にもきみえがどこにいるのか分からなかった。「でもいいのよ。厳正寺さんがあなたを連れてきてくれたから。これで佐藤さんが全員揃ったわ」「君の思う通りにはさせない」「そうかしら」玲奈はコントロールルームのスピーカーのスイッチをオンにした。密教の真言が聞こえてくる。大五郎は床を見た。足元が六芒星の形に輝いていた。結界だ。守護神である普賢菩薩共々結界の中に閉じ込められ、大五郎はまったく動けなかった。「あなたは危険な人だから、こうしておかないとね」大五郎だけに注意を注ぐ玲奈に、横からきみえが掴みかかった。二人は揉み合い、体がぶつかった拍子にスピーカーのスイッチがオフになった。あわてて戻そうとする玲奈の胸に動きを取り戻した大五郎の手刀が突き刺さった。「あなたの…その力が必要なのよ……」玲奈は死んだ。こうして佐藤さん達は解放された。誰も拉致されてからの記憶が無かったがそれ以外は普通だった。きみえも家族を取り戻して、いつもの生活が戻ってきた。しかし、きみえにはひとつ気掛かりな事があった。大五郎だ。「ねえ、もう探偵なんてやめたら。そしてうちの家族と一緒に暮そう。あなたには家族のぬくもりが必要なのよ」「ありがとう。でも、それはできない。俺はあの男をどうしても斃さなくてはならないんだ。俺と一緒にいたら君達に迷惑がかかる」そう言って大五郎は消えてしまった。今でもきみえは大五郎の事を時々思い出す。思い出の中の大五郎はなぜだか笑っていた。

↓後ほどまとめて
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●題名:真夏の雪(作:ふたつ星)
◎●◎オープニング◎●◎
シアトルでベンチャー企業の副社長を勤めるジミー・フレイザーは
恋人のレイチェルと共にクリスマス休暇を過ごすために
イブのシドニー空港に降り立った。南半球は今真夏。
途中でシドニーの実家の両親を拾ってみんなで一緒に
ゴールドコーストの別荘で楽しもうって計画だ。
意気揚々と空港を出てタクシー乗り場に行く途中、ジミーは空を見上げた。
灰色に曇った空から綿のような雪が次々と道路に降りかかっていた。
いつしか雪は街を灰色に染め、空と区別がつかなくなっていく。
そしてそれは生涯忘れられない悪夢の始まりだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:ふたつ星
雪はどんどん勢いを増し、気温は急激に下がった。
両親を拾って急いでシドニーを出ようとしたジミー達だが、その行く手をクラッシュした車の山が阻んだ。
「シドニーから出ようとすると見えない壁にぶつかるんだ!」
仕方なく実家に戻ったジミー達は国連事務総長の発表をテレビで聞いた。
「国連では今まで地球外知的生命体、異星人とのコンタクトを極秘裏に進めてきましたが、
彼らからその卓越した科学技術によって
現在地球を襲う多くの環境問題へ対処してもいいとの提案がありました。
我々の技術では人類は死滅するとのシミュレーション結果もあり、
我々は彼らの提案を受諾する事を決めました。
しかし、彼らの提案には一つ条件がありました。地球の人口は多すぎる。
人口を適正に保つ調整の実施を含めた全てをを異星人側で行い、
地球の正常化を促進するという条件です。我々はその条件をのみました。
そして、最初の人口調整地域として我々はシドニーを異星人の手に引き渡すことを決定しました。
異星人はシドニーに降り立つために彼らに適した気温マイナス10度に保ち、
シドニーの内部にいる人間は外へは出ることができないように制限しています」
ジミーは窓から上空を仰いだ。
空からなまばゆく明滅した都市がまるごと一つ入ってしまいそうな巨大な円盤が降りてこようとしていた。
◎●◎クライマックス◎●◎
円盤はシドニー上空100メートルで静止した。住民は何が始まるのかと固唾をのんだが、何も起こらない。皆が痺れを切らした頃、ジミーの実家のドアを叩く者がいた。それはレイチェルの両親だった。レイチェルは驚き、そして抱きついた。「レイチェル、来て欲しいところがあるんだ」レイチェルの両親はレイチェルを連れてどこかに行ってしまった。一時間後、ジミーの両親の親、ジミーの祖父母達がやってきた。驚くジミー達。なぜならジミーの祖父母は既に死んでいるのだ。「お前達、私たちと一緒に来なさい。レイチェルも待っている」ジミーと両親は彼らについていく事にした。彼らの目的地はシドニー中心部にある公園だった。公園の上空の円盤から一筋の光が放たれ、そこに人々が集まっていくと、円盤の中に吸い込まれていくのだ。「だめだ、いっちゃだめだ!」ジミーがそう叫んでも誰も聞かない。両親が円盤に吸い込まれるのを黙って見るしかないジミー。「君は、精神攻撃に耐えれるんだな」いつの間にか隣に立っていた男がジミーに語りかけた。「君は?」「僕の名はダイゴロー・ゲンジョージ。この計画を阻止するためにやってきた」二人はジミーの実家で話しをした。「なぜ死んだはずの祖父母があわられたんだ?」「あれは異星人の精神攻撃だ。その人にとって一番大事な人のイメージを見せて、円盤の中に誘い込んでいるんだ。君はなぜだか精神攻撃に耐性があるようだな」「円盤に誘い込んで、どうしようって言うんだ?」「それは分からない。しかし、シドニー中の人間をあの中に連れ込むつもりなんだろう」「僕らはどうすればいいんだ?」「それを今考えているんだ」その時、ドアを叩く者がいた。レイチェルだった。「ジミー、どうして来てくれないの?」「ジミー、そいつは精神攻撃だ!」そうと分かっていても、ジミーの心は揺れた。最愛の人なのだ。ジミーは涙を流した。大五郎はレイチェルを手刀でなぎ払った。レイチェルは消えた。「どうしてこんな事になってしまったんだ…」ジミーは泣き崩れた。それを見た大五郎は言った。「やはり、乗り込むしかないようだな」「ダイゴロー、一体どうするつもりなんだ」「俺が円盤に乗り込むよ」「一人で乗り込んでどうなるって言うんだ?」「大丈夫、俺は普通の人間ではないんだ」そして、大五郎は一人で出て行った。公園で光に吸い込まれて円盤に乗り込んだ大五郎は驚いた。円盤の中には、醜悪な形をした異星人たちが所狭しとひしめき合っていたのだ。それを見た大五郎の怒りは頂点に達した。マッハ2.5で動きながら、五百万馬力の力で異星人達をなぎ倒していった。「生き物である以上、精神攻撃も通用するだろう」大五郎は真言を唱えて象に乗った普賢菩薩を出現させ、異星人達を踏み潰した。大五郎は嵐のように異星人を殺戮していった。何十万、何百万という異星人が不気味な体液を撒き散らしながら倒れていく。そこに光で吸い込まれて新たな異星人現れた。大五郎の必殺の手刀がその異星人にのびていく。「うわあ、血の海だ!」その声はジミーだった。大五郎の手刀が後0.5ミリの所で止まった。「君は、ジミーなのか?」「そうだよ、ダイゴロー。ぼくの顔を忘れてしまったのか?」しかし、その顔はグロテスクな異星人そのものだった。「これは…」大五郎は目を瞑り、心頭滅却の真言を唱えた。そして目を開けると、そこにはジミーがいて、あたりは血と死体の山だった。「俺は、異星人の精神攻撃にいつの間にかはまっていたのか…。そして罪もない人達を殺してしまったのか…」大五郎の心を虚無が襲った。「ぐおおおおおおお!」大五郎は咆哮した。その時、円盤の上空に剣を持った大日如来が現れ、円盤を突き刺し、次の瞬間消えた。円盤はバランスを崩し、周りのビルを壊しながらゆっくりと落ちていった。「うおおおおお!」破壊音と共に大五郎の咆哮が響いた。落下した円盤から人々は救出された。シドニーは異星人の手から開放され、国連事務総長をはじめ、今回のプロジェクトに関わった人々は解任された。ジミーは生き残ったレイチェルと両親と共にシアトルに戻った。とある屋敷の一室。一人の男がジミーと話している。「それで、大五郎は今どこに?」「わかりません。気がついたらいなくなっていて…」ジミーは言った。「会長、彼は危険です。あの時の彼はまさに殺戮のために生まれてきた鬼神でした。彼のせいでシドニーの人口の半分が死んだのです」「でも約束通り君の家族は無事だっただろう? 大五郎とシドニーで接触する事を引き受けた時点で君にも分かっていたはずだ」「しかし、これほどとは…思いませんでした」「君との話は終わった。出て行きたまえ」「最後に…会長、約束どおり私の会社へ融資しただけるんでしょうね」「ああ。早く出て行きたまえ」ジミーが出て行くのと同時に側近が入って来る。「獅子蔵様、フレイザーをあのまま帰してよろしいのですか?」「うむ。若王子グループが壊滅状態の今、リオン・ノワールにも新たな表の顔が必要だ」「しかし、大五郎様は予想以上ですね。精神攻撃としてしか機能しない密教の神仏を実体化させて剣で円盤を破壊したんですから。無から有を生み出すのは神の御技ですよ。異星人にとっても予想以上の成果だったようです」「彼らに犠牲は出ていないだろうな?」「はい。あの円盤はリモートで操作されていて、大五郎様の能力を計測する機器しか積まれていませんでしたから」側近が出て行くと、獅子蔵は明かりを消してその暗がりの中でつぶやくように言った。「大五郎…お前が、人類にとって最後の希望なのだ」(おわり)
◆予告各国首脳に異星人からメッセージが送られ、世界中が混乱に陥った。その最中、大五郎をつけねらう謎のチベット僧が出現。彼は敵なのか、味方なのか? 大五郎は宇宙に飛び出し、月面基地でついに獅子蔵と対決する!次回、「二千年前の約束」乞うご期待!(これは冗談ですから)
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▼作者コメント▼
どうやらぼくはWの選択とタイムリミットを避けているようです…。
正直まだ必要性が腑に落ちていないのかもしれません。
なくても面白いストーリがかけるような気がするのですが、ぼくが間違っているのでしょうか?

ふたつ星さんの作品のうち
「たった一人の佐藤さん」「一万メートルの密室」「真夏の雪」は
共通の主人公が活躍するシリーズものとなっておる。
したがって3本分をまとめてコメントさせていただくのじゃ。
「Wの選択」は、主人公の成長(変化)を描く技じゃ。
これがうまく設定できると「感動」が生まれる。
ぜひ身につけてほしいテクニックである。
もちろんこれがなくても面白いストーリーは書けるじゃろう。
オチがスパッと決まれば、キレが出る。
しかし、感動というコクがなくなってしまうぞい。
若いうちはそれでも良いのじゃ。勢いとノリだけで疾走する作品もある。
スプラッタ・ホラーでは主人公の成長というのも不要かもしれん。
じゃがのう、心の中に深く入ってきて読者の人生を変えるのは、
「感動」なのじゃ。
お涙頂戴ではなく、生きていく人間の成長の物語なのじゃ。
「あの人の作品を読んだら、自分の中で何かが変わった」と言わせる。
ぜひ、そんな「感動」を生み出せる作家になってほしい。
「Wの選択」がうまくはまらない場合は、
主人公の設定に原因があることが多い。
この「大五郎シリーズ」じゃが、
主人公を「大五郎」じゃと思うと間違うのじゃ。
続き物のシリーズの場合、探偵役は主人公ではない。
シリーズ全体を通しては主人公と言えるのじゃが、
1作ごとのエピソードにおいては「ホスト」である。
主人公はその回の「ゲスト」が担うわけじゃ。
夜9時台のTVサスペンス劇場を見るがよい。
いろんなシリーズに探偵が出てくるが、彼らは主人公ではない。
「たった一人の佐藤さん」の場合は『きみえ』
「一万メートルの密室」の場合は『若王子玲奈』が主人公じゃ。
「Wの選択」で成長すべきは彼らなのじゃ。
それでは「真夏の雪」の場合は誰じゃ?
ジミー? レイチェル? それとも異星人?
ところが「真夏の雪」だけは大五郎なのじゃ。
この作品で大五郎は苦悩を背負うことになる。
そこが「成長」の始まりじゃ。
ただし、その成長はゲストと比べて時間がかかるぞい。
そんなわけで、シリーズ全体を統合するためにも、
まずはこのシリーズ全体の設計図を書くべきじゃな。
大五郎を主人公に据えて、目的と敵をはっきりさせること。
次に結末をしっかり設定する。
そして作品同士を時系列で並べてみる。
シリーズ全体のあらすじを作った時、初めて
大五郎に「Wの選択」が可能になるのじゃ。
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●題名:飛べない天使(作:のり)
◎●◎オープニング◎●◎
天使であるのに飛ぶことができないマルタ。自分のちょっと
したいたずら心が災いして片方の翼を折ってしまった。
天使は一度翼を折ると、二度大空を飛ぶことができない、
と言われていた。ただし、一つの例外を除いて・・・
自分の宿命を呪っているマルタの前に、大天使ヨセフが
姿を現わした。
「今地上には、お互いにいがみ合う一組の兄弟がいる。
その兄弟を仲直りさせることができたらお前の翼を再生
させてあげよう」 大天使はマルタに翼を再生させるための
大きな試練を与えたのだった。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:もみじまんじゅう
マルタは地上に行き問題の兄弟を観察した。
どうもお互いをいがみ合っているように見える。
仲直りさせるにはこのいがみ合った心をどうにかしなくてはならない。
どうしたものかと思案しながら観察を続けていると
兄弟が持っている羽に気がつく。
それを見たときマルタは思い違いに気づいた。
彼らがいがみ合っているのはあの羽根の所為だと。
そしてその羽根は自分の折れた羽根であることを。
◎●◎クライマックス◎●◎
マルタはその羽を取り返せば争いのタネがなくなり二人が仲良くするだろうと考えた。
そして二人のもとに行き、その羽は私のものだから、返すように伝える。
しかし兄弟はそんな話は取り合わない、マルタは得意の口先三寸で丸め込み、
何とかしようと考えたが、それも上手く行かない、兄弟の犬猿ぶりは生半可ではなかった。
そこで妙案を思いつく、マルタは一つ残った自分の羽をへし折り、
それを兄弟に渡した、これで兄弟が羽を分けあい、仲良くなるだろうと考えた。
しかし兄弟は羽は靴と同じで二つで意味がある、一つずつ持っていてもしょうがない、などと言い出しまたケンカをはじめた。
マルタはこの兄弟の強欲さにはほとほとあきれ返って、自分の手には負えないと、ほとんどあきらめてとぼとぼと道を歩いていた。まったくめんどくさいことに巻き込まれたものだ。
すると同じようにとぼとぼとあるく男がいた、さっきの兄弟の弟である、マルタはあとをつけた。
しばらく歩くと、みすぼらしい小屋に入っていった、どうやらここが家のようだ。
中をのぞくと布団に女性が眠っているのが見えた、さっきの弟が看病をしている、病気のようだ。
マルタはその家を訪ね、弟から話を聞いた。弟の名前は次郎で女はセツ、二人は夫婦だった。
次郎は「さっきは失礼なことをした」とわびて話し始めた。
セツは重い病気で医者からは長くても三年の命だといわれている、次郎は例の羽を見つけ、これを使えば東にある世界一高い霊山“フジランマ”に行き、その頂上にしかないと言われる、薬草を見つけ、セツの病気を治せるのではないかと思ったとのこと、そのため羽が欲しかった。
“フジランマ”はいまだかつて登頂に成功した者の居ない難攻不落の山だった。
マルタは既に次郎への評価を変えていた、次郎は素直で女房思いのいい青年に思えた。
出来れば次郎の願いをかなえてやりたいと思ったが、
残念ながら天使の羽は人間が付けて飛べるという代物ではない、それに薬草の話も疑わしかった。
次郎は続けて話した、例の羽は次郎が見つけたがそれを兄の太郎に取り上げられた、次郎はなんとしてもそれを返してもらおうと、太郎の屋敷に出向いてそのたびにケンカになっていた。
じつは昔、セツを、兄弟共に好きになり、お互いに取り合った過去がある、結局はセツは次郎を選んだ、兄はそのことを妬んでいるのではないかとの話だった。
マルタは話を聞いているうちに怒り覚え、兄の太郎の屋敷に乗り込んで行った。
じつは天使の羽には癒し効果があり、それで人を仰ぐと心身共に癒されるのだ、
それでセツを仰げば少しは体も楽になるかもしれない、太郎から羽根を取り戻そうと思った。
太郎の家は次郎の家とは対照的に大御殿だった。太郎は大規模な貿易会社を経営し、船を何艘も所有し、
大きな図書館を持ち、大学も経営していた、そして世界各国に探検隊を派遣し、開拓を進めていた。
マルタは太郎に羽を返すように言ったが、太郎は
「ダメだ、あの羽は癒し効果があり、大きなビジネスになる」と言って、返してくれなかった。
マルタは実直な次郎とは対照的な強欲な太郎に憤慨した。
マルタは太郎に言った「あんたがそうやって強欲だから、セツさんはあんたを選ばなかったのよ」
太郎はマルタを追い出した、マルタは次郎の家に戻った。
次郎の家は太郎の家を見たあとでは実にみすぼらしく見え、家にあるあらゆる物が古かった。
マルタは次郎に「それにしても、もう少しお金を稼げないものか?」と聞いた。
次郎は「まじめにやってるんだが、どうも上手く行かなくて」とうなだれた。
おそらくまじめな性格が災いして、要領というものを知らないんだろう。
セツは咳をしながら言った。
「マルタさん次郎さんを責めないでください、この人はまじめでまっすぐで人を疑うことを知らない、いい人なんです、
ただ、甲斐性だけは欠落してるんです」太郎はさらにうなだれた。
マルタは「兄ほどとまではいかなくても、チョットはあのしたたかさを見習ってはどうか」と言った。
次郎は、それは、兄の屋敷に行くたびにうすうす思う、と答えた
そして三年の月日は流れる、マルタは成り行きで次郎の家に世話になっていた。
羽がないのは不便だが、なきゃないで何とかなる物ものだ。一日テレビを見てすごした。
太郎の活躍はすさまじかった、経営者としてはもちろん、自ら探検家として、
世界中の秘境を探検し、国民のヒーローのようになっていた。
その激しさは、何かそうしないと死んでしまうんじゃないかという印象受けた。
次郎も少しずつだが、要領よく世間を渡るようになっていた、暮らしぶりも向上していた。
そしてセツは幸せそうだった、ただ死期が迫っているのは明白だった、
医者はあと一ヶ月だろうと宣告した。
そのときニュースが流れた、太郎が世界一高い霊山“フジランマ”の登頂に挑戦するとのことだった、
国民は固唾を呑んで見守った、次郎夫婦やマルタも同様だった。
そして登頂は成功した、次の日、太郎が一握りの薬草を持ってやってきた。
それを煎じてセツに飲ますとセツは元気を取り戻した。
太郎は昔好きになったセツを助けるために、世界中の古文書を探し、大学で研究させ、“フジランマ”に薬草があることを確信した、そこで先遣隊を送り、ルートを調べ、準備を整え、フジランマ登頂に挑んだ、そのために沢山の金が必要だったとのこと。
太郎はマルタに話した。「次郎はまじめでいいやつだが、夢見がちなところがある、天使の羽で飛べるなどということを、
平気で信じるのは、そろそろ卒業してもらいたかった、おれの初恋の人を妻にしてるんだからな」
マルタは「天使の羽には癒し効果があることを知りながら、なぜ次郎に渡さなかったのか、それがあればセツの体を癒すことが出来たはずなのに」と太郎に聞いた。
太郎は「セツには次郎のそばに居ることが最大の癒しで羽など必要ではないと思った」と答えた。
太郎と次郎はお互いを理解し、仲直りをした。
太郎はマルタに「すまなかった」と言って羽を返した。
マルタは兄弟が仲良くなったことに満足し大天使ヨセフに報告に行った。しかしよくよく考えるとマルタは次郎の家でのらくら過ごしていただけで、兄弟は勝手に仲良くなったのだ、マルタが仲良くなるように仕向けたわけではない、まあしかし、そこら辺は適当に脚色すればいいだろう。何もしないのに目的を達成するなんて、私って天才だわ、マルタはそんなことを考えていた。
マルタは大天使ヨセフに報告した「あの兄弟はどうしょうもない、不仲な兄弟でしたが、私が七転八倒、右往左往、堅忍不抜の活躍をしたおかげで何とか仲直りさせることが出来ました」大天使ヨセフは「ばかも〜ん!」と一喝した、そして言った。「あの兄弟はケンカをしていたがそれぞれ心根はいい連中だ、そのうち仲直りするのは分かっておった、ワシは、怠惰で軽薄なお前に、あの兄弟の“兄の行動力”と“弟の素直さ”を学んで欲しかったんじゃ、お前は自分の羽を自分で折ったと思っておるようだが、じつはワシが策を講じて隠密に折らせたんじゃ、そうすればおまえもちょっとぐらいは、物事にまじめに取り組むじゃろうと、考えたんじゃ!それをお前は三年間、次郎の人のよさに漬け込み、のらくらと暮らしただけで、挙句の果てに、ワシにそんな嘘をついて、点数を稼ごうとは言語道断!修行が足らん、ワシがいい修行場所を用意したから行って来い!」「ひえ〜〜〜!」

なぜか和風な設定にハマってしまった。
それにしても人間的に出来すぎの兄・太郎。
人が良くて優しい弟・次郎。
どうしてこんな二人が喧嘩しているのか。
よっぽどセツさんが魅力的なんじゃろうな。女性の力は凄いのう。
その魅力の一端でも垣間見えると、恋の話が盛り上がるのに。
そしたらキューピッドのマルタももう少し活躍できるのじゃなかろうか。
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末っ子天使のマルタの羽はまだ完全ではない。心が成熟するごとに、漂白され白くなるといわれる羽はまだ短く雷雲のような灰色だった。
マルタの兄や友人たちは、ある時はマルタの羽も今に美しくなるから心配するなと励まし、ある時は羽の美しさよりも大事なものがあると諭していた。だがマルタはその言葉を信じることはできなかった。清廉ささえ漂うほどの純白の羽を使い、誇り高く空を舞う兄たちや、日ごとに羽を白くしていく同年の友人たちに対して、マルタは劣等感を持っていたのだ。その想いが、よけいにマルタの羽を黒く染め上げていたのだが、マルタは気づかない。
マルタはせめて、飛び方だけでも上達しようと努力していたが、全く報われない。短く灰色の羽ではやはり飛ぶことはできないのだ。自分の努力を無意味と感じたマルタが、練習をやめようかと迷っていたある日、大天使ヨセフは、マルタたち若い天使を呼び出すと、地上へ研修旅行へ行く許可を出す。だがその条件は、期日までに規定の「羽の白さ」を持ちえたものだけだった。
みなが歓声をあげ、旅行について話し合う中、マルタだけは悲しみと悔しさで一杯だった。人間と天使の関わりについて学ぶならば、書物だけではなく、実際に行ってみるのが一番早い。そう言って研修旅行の必要性をヨセフに申し出たのは、マルタだったのだ。
だが、期日までに条件を満たす白い羽を手に入れることは不可能だ。諦めたマルタは、羽を白くするために努力していたあらゆることをやめてしまう。
まだ間に合う、大丈夫だと、口をそろえてマルタを励ます兄弟や友人たち。彼らは、マルタを勇気づけるごとに羽を白くしていた。
それを見ながら、マルタは思う。本当は、マルタのことなど心配していないくせに。自分自身の羽を白くするために、同情しているふりをして、心の中ではマルタのことを嘲笑っているのだ。それなのに、口先だけはマルタを励ましている。今に見ていなさい。お綺麗な白い羽を心と同じ色にしてやる。
審査の日、マルタの兄たちは、真っ黒な羽で現れて、みなを驚かせた。マルタが寝ている兄の羽にペンキをぶちまけたのだ。
どうしたのかと問うヨハネに、兄の一人が言う。自分たちのような真っ黒の羽を持つものでは、地上へ行くことはできないだろう。だから代わりにマルタを行かせてやってほしい。研修旅行の企画を出したのは、マルタなのだから。
兄たちの様子がよく見えるようにと、木の上からそれを聞いていたマルタは、仰天し、転げ落ちてしまう。マルタの名を呼び、駆け寄ってくる兄たち以外の誰もが、凍りついたように黙り込み、マルタを見つめていた。マルタが不審に思い始めた時、マルタの兄が呻くように言う、この黒い羽は一体どうしたのか、どうしてこんなに折れ曲がっているのかと。
それに気づいたマルタは驚愕する。
天使は一度翼を折ると、二度大空を飛ぶことができないと言われているのだ。
さめざめと泣くマルタの前に、大天使ヨセフが近づいてきた。
「今地上には、お互いにいがみ合う一組の兄弟がいる。その兄弟を仲直りさせることができたらお前の翼を再生させてあげよう。期日は、明日の晩月が上るまでの間だ。それを過ぎると、お前の羽は永遠に戻らず、空へ戻ることもできないだろう」
地上へ降りたマルタが問題の兄弟を観察すると、どうもお互いをいがみ合っているように見える。その原因は互いへの嫉妬であるようだ。
それを見ながら、マルタは微笑んだ。兄弟なのだから、このくらいけんかをしても問題はない。気にする必要はない。大天使ももうろくしたものだ。
マルタの兄たちは、末っ子である自分をいつも甘やかしていた。マルタのわがままもいつも許してくれたし、けんかもしたことはない。だが、それは彼らがマルタを愛してくれていたからではなく、マルタの兄たちが、マルタよりいつも優秀であったからだ。優秀すぎるゆえに、マルタとぶつかる必要がなかったのだ。だから、本気で向き合ってくれなかったのだ。一度くらい、この兄弟たちのように、本気で兄弟とけんかをしてみたかった。マルタは、落ち込んだ。だが、今は自分の兄弟のことは関係がない。この二人の兄弟を仲直りさせなければならないのだ。そして、そのためには、このいがみ合った心をどうにかしなくてはならない。
どうしたものかと思案しながら観察を続けていると、互いに欠点を挙げ連ねて、口汚く罵りはじめた二人の手には、いつしか刃物が握られていた。
部屋の中に二人の兄弟が仲良く映っている写真がいくつもあることに気がついていたマルタは驚愕する。その最も新しい日付は、ほんの数日前なのだ。一体彼らに何があったのだろう。
困惑するマルタは、兄弟が持っている羽に気がつく。その黒ずんだ不恰好な羽は兄弟の手の中で、人界にはふさわしくない不気味な存在感を持っていた。
マルタは思い違いに気づいた。彼らがいがみ合っているのはあの羽根のせいなのだ。マルタが目を凝らしてよく見ると、その羽は折れた自分の羽だった。
マルタは愕然とする。それでは、この二人の兄弟がいがみ合っていたのは、マルタの羽を手にしたせい、マルタの心が招いたことなのだ。
マルタは自問する。自分は、あの兄弟たちのように、いがみ合い殺しあうことを望んでいただろうか。マルタは兄たちの美しい羽に憧れ、彼らに近づきたいと思ってきたのだ。そして、マルタ自身を認めて欲しかったのだ。
マルタは動揺を隠せない。いつの間に、このような汚らしい心を育ててしまったのだろうか。
マルタは、対峙した兄弟の前に飛び出すと、兄弟が持っていた羽を取り上げた。そして、自分の羽だということも忘れてにぎりつぶした。同時にマルタの背にも鋭い痛みが走ったがマルタは気にしなかった。
驚いた様子でマルタを見つめる兄弟にマルタは言った。個性を持つ異なる人間同士が、互いを比べあい、自分が持ちえぬものを持つ相手を嫉妬するなど無意味なことだ。自分は自分だろう。
兄弟を叱りながら、マルタはそれが自分自身にも当てはまることに気づいた。だが、時すでに遅く、月は上っていた。もう自分は兄弟の元へは戻れないのだ。そう思いながら月を見上げるとそこには兄の姿があった。微笑みながら兄は帰ろうという。
マルタが自分の羽根を握りつぶしてしまったことを話すと、兄はマルタ羽が再生していることを教えた。
マルタが研修旅行の企画を出したときから、マルタは立派な天使になると、みんな思っていた。マルタほど、人間と天使の関わりについてマルタほど真剣に考えた天使はいなかったのだから。マルタだけは、それに気づかなかったけれどね。そして今のマルタには、新しい羽を持つ資格があると兄は微笑んだ。
マルタの兄は、ヨハネからマルタを案じるばかりで、その実力を信じていないと指摘され、そのせいでマルタを追い詰めていたことに気づいたとマルタに謝罪した。
兄たちに愛されていたことを知ったマルタは、自分の方が悪かったと素直に謝罪する。
無事にマルタが戻ってきて安心した。これからはずっと傍にいるから。そうマルタの兄が口にしたとたん、兄の羽が灰色に染まった。
マルタは兄の意外な弱点に驚いた。兄は、マルタ離れができていなかったのだ。
天界へと戻ったマルタは、「自分は自分だ」と呪文のように口にしながら、一生懸命飛ぶ練習をしている。マルタが落ち込むたびに、心のあり方で色が変わる羽は、ころころと色を変えていたが、少しずつ白さを増している。マルタ本人は、全く気づいてはいないけれど。 (完)
天使の羽根はその心の成熟度で色が変わるという設定がいい。
これで成長ぶりが一目瞭然なのじゃ。
小道具の使い方がうまいのう。大事な技術じゃ。
後は、セリフで説明しすぎないことを心がけてほしい。
できるだけアクションで「見せて」やれば、さらに小道具が生きる。
例えば
> マルタが自分の羽根を握りつぶしてしまったことを話すと、兄はマルタの
> 羽が再生していることを教えた。
このシーンであるが、握りつぶした羽根を差し出せば状況はわかるし、
兄天使はそんなマルタの手を握って空に舞い上がり、急に手を離しても
「マルタの羽根の再生」が伝えられるのではないかな?
なんたって主人公は天使じゃから、一度風を切って飛翔してほしい。
空を飛ぶシーンはカタルシスをもたらすのである。
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天使の羽根は奇跡の種子・・・思いを育む力がある。
マルタが羽根を折った日、
それは他の数人の天使と飛ぶのがあまり上手くない天使を
からかっていた時だった。
誤って羽根を壁にぶつけてしまい折ってしまったマルタ。
その時彼女は「なぜ自分だけこんな目に・・・」
と他の天使達に対して嫌悪の念を抱いていた。
その時のマルタの気持ちが羽根に宿り、地上に舞い降りてあの兄弟の
いがみ合いを生む結果となる。
二人のいがみ合う姿を見て、マルタは気づいた。
あの時の自分の心の醜さ、自責の念の足りなさに。
このままあの羽根を放置していたら
あの兄弟はお互いを信用することも出来なくなる。
マルタは急いで羽根を取ろうとするが、すでに羽根は
兄弟に癒着をしていてマルタにはつかむことが出来なくなっていた。
もうマルタには兄弟の対立を止める術が無くなっていた。
焦るマルタ。
そこに女性が入ってきて兄弟のいがみ合いを止める。
彼女はマルタの存在に気がつく。
そしてこの全盲の女性が兄弟のいがみ合いの切っ掛けでもあった。
いったん兄弟のいがみ合いは治まったので全盲の女性サナエとマルタは
場所を移した。
マルタはこのサナエに事の顛末を話す。
天使の姿が見える彼女ならばあの羽根を取ることも出来るかもしれない。
そう考えたのである。
サナエはそれを承諾する。
そしてサナエも、この兄弟げんかのきっかけが自分の不注意から始まった事を話す。
その時、兄弟がお互い彼女のためと思って行動が今のいがみ合いに発展してしまった
のである。
またサナエはマルタに
「この兄弟げんかのきっかけを作ったのは私、たとえあの羽根の所為で
こんな事になってしまったとしてもあなたの所為では無いわ。
このきっかけを作ってしまった私の所為よ。」
と少し哀しい笑顔で兄弟の元に向かった。
マルタはサナエの言動を見て、自分が哀しくなった。
彼女はマルタの存在を認めたにも関わらず、責めなかった。
それに引き替え自分は全てをサナエに任せてしまった。
もしかしたら羽根を取っても手遅れかもしれない。
もう一度考えてみよう、私に出来ることは・・・?
マルタは一つだけ方法が有ることを思い出す。
「私は・・・、天使!!」
マルタは片方の翼を広げ、飛び始める。
そしてたった一つの思いを込めて大きく羽ばたいた。
他人を思いやる想いを込めて。
その羽ばたきとともに折れるもう一つの翼、舞い散る羽根。
その羽根は兄弟の元におちて癒着した羽根に触れると、互いに消えた。
すると先ほどまでのいがみ合いはウソのように無くなったのだ。
サナエは舞い散る羽根を見てマルタの元に向かったがそこにはもうマルタの姿はなかった。
数ヶ月後、とある病院で産声を上げる女の子の赤ん坊。
それを見た母親は
「まるで天使のようね。」とつぶやいた。
そしてそれを優しい笑顔で見つめているヨセフの姿があった。(了)

マルタが原因で仲が悪くなってしまった兄弟。
責任を感じたマルタは天使としての命を投げ出して
兄弟の仲を修復する。しかし、天使が死ぬということは
赤ちゃんになって人間界に生まれ出るということなのじゃ。
天使という設定でのみ許されるこの特別ルールで、
悲劇になりがちなこの物語タイプが見事なハッピーエンドになった。
このタイプの話の場合、注意しておきたいことがある。
物語の途中で主人公が退場して視点が消失してしまうために
ストーリーの語り手役が必要になるのである。
それがサナエなのじゃ。ほぼ完璧な構造である。
どうせならせっかく作ったその視点を最後まで生かしきって、
サナエを赤ん坊の母親にすれば良いのではないかな?
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●題名:殺す、殺す、自分(作:s-taichi)
◎●◎オープニング◎●◎
「また、死ねなかった。おまけに無関係の人まで…」
忌毛樽(いもうたる)は囚人護送車の中でつぶやいた。
周りにいる警官や、護送される犯罪者も彼を気の毒そうに見つめる。
忌毛は悪を呼び込む特殊体質の男である。
彼の周囲は常に凶悪犯罪が起きてしまうのだ。
自分が生きていては社会に迷惑がかかると自殺も試みたがどうしても死ねない。
彼は不死者だったのだ。
十回目に試みた飛び降り自殺も失敗し、
それどころか人を巻き込んでしまい死なせてしまう。
そんなわけで彼は殺人犯として現在護送されている。
その護送車を謎の人物が襲った。
次々と殺される警官と囚人。
だが忌毛は、奇跡的に襲撃者を倒す。
襲撃者の正体は伝説の殺人鬼集団「13階段」の一人だった。
不死身の肉体の秘密を手に入れようと忌毛を襲ったのだ。
奴らが不死身となったら世界は殺戮に包まれる。
忌毛は、殺人鬼と自分を共に葬る過酷な戦いを決意する。
◎●◎どんでん返し◎●◎
◆作者:s-taichi
忌毛は一人で戦う覚悟を決めていた。
だが、忌毛に協力者が二人現れる。
忌毛の護送車に乗り合わせた刑事、佐伯とその娘である。
最初は心を開かない忌毛だったが
共に「13階段」(メンバーは奇妙なことにほとんどが特徴のない一般人)と
戦ううちに二人と絆が生まれた。
その絆は彼にとってかけがえのないものだった。
だが佐伯の娘が敵に拉致され拷問されて精神崩壊を起こしてしまう。
しかも拉致の手引きをしたのが佐伯だということが判明する。
佐伯も「13階段」の一人で忌毛を揺さぶるために自分の娘を利用したのだ。
本性を現した佐伯を倒す忌毛。
しかし、死ぬ間際の佐伯からは凶暴性が消え、
しかも自分が「13階段」だったことも覚えていなかった。
忌毛に協力して敵と戦って死んでいくという幻想を見ていたのだ。
佐伯の言葉から忌毛は恐るべき「13階段」の秘密に気がついた。
そして、本当の敵・発狂したはずの佐伯の娘があらわれた。
◎●◎クライマックス◎●◎
オープニングの後、忌毛は警察で取調べを受け、仮釈放される。
「13階段」に手を焼いている警察が自分を餌に連中を捕らえようとしていると思った主人公は単独で敵と戦うことにする。
だが、警察署の玄関で忌毛の護送車に乗り合わせた刑事、佐伯が忌毛を待っていた。無差別に人を殺す「13階段」がどうしても許せず、共に戦いたいという佐伯。忌毛は、特異体質のために差別されて育ち、人間に対して複雑な感情を持っていた。だが、繊細な彼は「幸福に生きる人間」が好きで幸せな人を望遠鏡でこっそり眺め、空想の世界で彼らになりきっていた。
空想遊びと体質による差別のために彼はどんどん消極的になっていった。
彼の夢は「人間の幸福を守る」ことだがそのために彼自身が挑戦できたことは、人との交流を徹底的に拒み、犯罪という不幸に巻き込まないこと。もしくは自殺して自分の存在を消し犯罪を未然に防ぐことぐらいだった。もちろん自殺は成功しなかったが。
繊細で悲惨な環境で育った彼に、自分の体質を変え幸福をもたらそうなどという積極的な考えは起こるはずも無く、ひたすら受動的に生きてきたのが忌毛の人生だった。
佐伯を不幸に巻き込むまいと、佐伯の協力を拒む忌毛だったが彼の熱心な説得に負け彼と共に戦うことになる。佐伯には死んだ妻と一人娘がいた。妻は原因不明の難病の苦しさで自殺、娘も母親の遺伝か同じ難病を抱えあまり長くは生きられない。
だが娘はいつも気丈に振舞っていた。彼女は「ブレーンとして父と共に「13階段」と戦う」と言って事件に協力することになった。
最初は、佐伯と娘に心を開かない忌毛だが一丸となって彼の肉体の秘密を手に入れんとする「13階段」と戦ううちに、心が通い始める。忌毛に僅かだが積極性が生まれるようになる。自殺未遂もしなくなる。
不死身の体を生かした戦闘術も身に付け、「13階段」と互角に渡り合うことさえ可能になった。
(ここから、話は希望の見える展開に進んでいく)
忌毛は佐伯が自分に協力する本当の理由が「13階段」に対する憤りではなく、娘を救うため自分の不死の秘密を知ることであると悟り始める。
忌毛は何とかして自分の不死の秘密を見つけ、佐伯の娘を救いたいと考える。
彼の自殺願望はここではっきりと打ち消される。
忌毛が精神的に満ち足りていくと共に悪を呼び込む特異体質も少しずつ改善し始める。
彼の特殊体質は生まれつきの肉体的なものだけでなく、精神的なものも関わっているとわかり、精神的アプローチによる体質改善の希望も見えてきた。
半分ぐらい倒すと「13階段」の正体も少しずつわかり始めた。彼らのほとんどが何ら特徴の無い一般市民であること。突然凶暴になり殺人鬼となること。凶暴になって初めて戦闘能力が常人を遥かに凌駕するようになること。もっとも特徴的なのが、殺人鬼になったときの記憶が存在せず、別の記憶が刷り込まれて自分が殺人鬼であるという自覚が無いことである。
しかし、かすかに記憶が残るメンバーも存在し、「殺人鬼かもしれない」と自分に怯えていた。
鑑識により「13階段」の頭に極小の腫瘍が人工的に埋め込まれていることが判明した。
記憶の書き換え、凶暴化、戦闘能力の急上昇、全て腫瘍が原因だった。何者かが腫瘍を使って一般人を殺人鬼に変え操っていたのだ。「13階段」は加害者であると共に被害者でもあったのだ。
忌毛は腫瘍を徹底調査して殺人鬼を量産する黒幕を突き止めようとする。だが、佐伯は腫瘍の話を聞くと何かに怯え捜査に消極的になる。不審に思う忌毛だが、とりあえず調査を続ける。
犯人はよほど狡猾なのか腫瘍を調べても一向に手がかりが見つからない。
(ここから話はだんだん暗くなる)
そんな時、佐伯の娘が「13階段」に拉致されひどい拷問を受けてしまう。
彼女はあまりの苦痛に精神崩壊を起こし廃人になり、病院に無期限入院する。
悲しみに我を忘れる忌毛を残りの「13階段」が奇襲する。
忌毛は苦しみながらも、必死になって倒す。12人目までは倒したが最後の一人がいない。
そこに、最後の一人が現れた。なんとそれは佐伯だった。佐伯は「自分が黒幕で他のメンバーを操っていた。世界には純粋に作られた悪が必要だ」などと
支離滅裂なことをいって忌毛に襲い掛かる。娘を誘拐させたのも彼だった。
誘拐の目的はただ、忌毛の精神にダメージを与え、急激な精神ダメージが
どう不死身の体に影響するかを調べることだった。
あまりの衝撃に感情が爆発した忌毛は、死闘の末高い戦闘力を誇る佐伯に打ち勝つ。
忌毛に倒され、虫の息である佐伯。助かりそうにない。忌毛はその目が悲しみに満ちていることに気がつく。
彼は力を振り絞って、忌毛に最期の言葉をつぶやく。「娘を頼む…」次の瞬間、佐伯は自分の頭を突然隠し持っていた大口径の銃で吹っ飛ばした。
事件は一応解決したかに見えた。しかし、忌毛の頭は疑惑で一杯だった。
佐伯の目に浮かんだ悲しみ。彼が黒幕なら、なぜ悲しむ必要があるのか?
彼は自分の娘を拷問させた父親だ。わざわざ「娘を頼む…」などと言い残して死ぬだろうか?
そもそも娘はもう廃人になってしまっていて、どうにもならない状態なのに。
しかも死ぬことがわかっていて、どうして自分の頭を銃で吹き飛ばしたのか?
ひょっとして頭の腫瘍を隠すためではないのか?
何の手がかりも無い忌毛は最後の望みとして、佐伯が最期に言った言葉をヒントに事件に決着をつけようとする。彼の娘が事件の鍵なのだ。
まず佐伯の娘の難病を調べようとした忌毛だが、どの医者も「原因不明」と
だけ言って全くわからない。業を煮やした忌毛は病院から彼女のカルテを盗み出す。
カルテには「脳に原因不明の腫瘍」と記されていた。
驚く忌毛の前に佐伯の娘が姿を現す。彼女が全ての事件の黒幕だった。
父親の佐伯は彼女に操られていたのだ。頭を吹き飛ばしたのも腫瘍の発見を
恐れたからであった。
彼女の抱える難病は悪を作り出すというものである。
忌毛と同様の特殊体質の一種で、自分の頭にある腫瘍を他人に植え付けて操り、犯罪を犯させるのだ。
腫瘍を植え付ける行為は人間における生殖活動と同様動物的本能であり、
理性でおさえることは難しい。
彼女の母親は病気の苦痛からではなく、悪を作る自分の本能を恐れて自殺したのだ。
母親と違い、自殺することが出来なかった娘は本能に負け悪を作っていたのだ。
だが自分の寿命が長くないと悟ると、永久に悪を作り出すことの出来る子供が欲しくなった。
そこで、悪を引き付け不死身の体を誇る忌毛と子供を作ろうとしたのだ。「13階段」は自分との子供を作るのにふさわしいか、忌毛をテストするためのものであった。
忌毛の精子を狙い襲いかかる娘。彼女の体は難病ながら桁外れの戦闘能力を誇る。
おまけに特殊体質の細胞を駆使した攻撃は忌毛の不死身の体にさえもダメージを与えた。
戦意を喪失して逃走しかける忌毛。しかし、佐伯達との交流、そして「娘を頼む…」と言う父としての佐伯の叫びを思い出す。立ち直った彼は真正面から娘と戦い辛くも打ち勝つ。
戦いが終わり、傷だらけになった忌毛が、静かに立ち上がる。
彼は特殊体質で苦しむ人を助けるために、戦いつづけることを決意していた。

ポイントとなるのは
「忌毛が佐伯親子に心を開くきっかけ」である。
後で全て偽りだったとわかった時に、主人公の怒りと悲しみを生む
大事なエピソードになるので、しっかり作っておきたい。
これはWの選択を完成させるための重要ポイントでもある。
人間と人間が深く理解しあうまでにはどんなプロセスを経るのかを
現実生活で観察してみてほしい。そこがこの物語のポイントじゃ
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