2005上半期あらすじAWARD
本文へジャンプ 2005.6 

 

●作者: ふたつ星


タイトル : 慕情



美咲は浩介の隣に座った。浩介は美咲の方を見、微笑んだ。

そこは大学の食堂で、浩介はいつも通り仲間達に囲まれている。
美咲以外に京子、里美、伸治。浩介と同じサークルの仲間だ。

法学部は二年生だけでも250人はいて、
ただ学部が同じというだけの美咲は彼等の輪に入っていけない。
そんな時、美咲はいつも浩介を彼等に取られてしまった様に感じる。

それは考えすぎ?
いや、そんな事はない。
京子の浩介に対する態度はどうだ? 
ちょっと馴れ馴れし過ぎやしないか。

そう考え始めると美咲は嫉妬で気が狂いそうになる。

その時、彼らの話が途切れて、しばらく沈黙が場を支配した。

あ。今、浩介は京子に目配せしたんじゃないか? 
確かにウィンクした。
それに対して京子は頷いた? え? 

しばらくすると彼等の会話は何事もなかったかのように再開した。

今のは、気のせい? 
いや、そんなはずはない。この目ではっきりと見た。

やがてチャイムが鳴り、それぞれ授業がある教室へと移動した。
この授業は浩介と一緒じゃない。美咲は気が狂いそうだった。
京子と浩介、このまま二人でどこかに消えるんじゃないのか? 
美咲は浩介の恋人ではない。でもずっと想い続けていたし、自分が一番浩介の事を理解している。
浩介が他の女に取られる事を考えるといてもたってもいられない。
嫉妬はそれからずっと美咲をさいなんだ。

美咲は京子を殺す事を決意した。

もう、殺すしかない。浩介をこのまま取られる訳にはいかないのだ。
美咲は京子の後をつけ、通り魔の犯行を装って京子を殺害した。
「あなた、浩介と付き合ってるでしょ? あなたごときにそれは許されないことなのよ」
美咲は何度も何度も刺した。京子は何も言わずに死んだ。

京子の葬式、美咲は喪服を着て浩介の横に座った。浩介は泣いていた。
美咲は慰めてあげたい気持ちでいっぱいだった。大丈夫、私がいるわ。
時がたち、浩介は元気を取り戻し、いつものように仲間達と時間を過ごすようになった。
美咲はそんな浩介を嬉しく見守っていた。

しかし、そこでまた疑惑が蛇のように鎌首を持ち上げた。

今、里美と浩介、合図しあわなかった?

美咲は里美を殺す事にした。
浩介は自分と結ばれなくてはならないのだ。でなければ、京子を殺した意味がない。
美咲は里美の後をつけ、人のいない公園で里美を殺害した。
里美の心臓を刺した後、美咲は言った。
「あなた、浩介と付き合ってるでしょ? あなたごときにそれは許されないことなのよ」
それに対して里美はか細い声で言った。

「誤解です……。浩介は…、伸治と……。わたしは誤解で殺されるの……?」里美は絶命した。

美咲はショックで泣きながら現場を後にした。

そうなのだ。浩介と伸治は仲が良かった。良すぎるほどに……。
あの時、伸治の肩に回された手は、友達以上の意味だったと……。
美咲はその日、夜の街を彷徨った。

伸治を殺す? 
美咲にはもうそれが自分の本当に望んでいる事なのか分からなかった。美咲は心の中で葛藤した。

しかし、夜が明ける頃、美咲は伸治の殺害を決意した。
もう二人も殺している。やめるわけにはいかないのだ。

伸治を追い詰め、美咲はナイフを振り上げた。
庇うように上げた伸治の右腕にナイフは突き刺さった。伸治は悲鳴を上げた。
美咲がナイフを引き抜き、もう一度振り上げたところに浩介が来た。
「伸治、どうした……」
浩介はさっきまで会っていた伸治の忘れ物を届けるために伸治の家に向かっているところで悲鳴を聞いて駆けつけたのだ。
美咲は浩介を見てひるんだようにあとじさった。浩介は伸治を庇うように立った。
美咲は狂ったようにナイフを振り上げ、勢い良く降ろした……、

自分の胸めがけて。

美咲は死んだ。
その顔は何かから解放されたように晴れやかだった。

その後、警察に事情聴収される浩介の姿があった。

「はい、ええ、あの女、大学で見かけた事があります。同じ学部じゃなかったかな……。
話した事はありません。名前も知りません。ただ、学食なんかで見かけた事があります。それだけです。
ええ、何で伸治がこんな事をされたのか。まったく検討がつかないです。あの女、一体なんなんですか? 
もしかして、京子や里美もあの女が……。殺人狂ですよ。悔しいです、仲間がこんなに殺されて。
知らなかったとはいえあんな気違いと同じ学校だったなんて……。まったく、狂ってますよ…」


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