2005上半期あらすじAWARD
本文へジャンプ 2005.6 

 

●作者: ケイジ


タイトル : マインドテロリスト


北尾潤は警察庁長官直属の心理捜査官だ。
その存在は、長官と直属の上司しか知らない極秘のものだった。
北尾は相手心を読む「能力」を持っていた。
捜査でその能力を使うことはあるが、
決して知りえた相手の能力を口外することは無かった。
北尾の「能力」の特殊なところは、相手の良心を増幅させ、
犯した罪を悔い改めて自首させるところにあった。

最近、公安警察がマークしていた、新興宗教の教祖と、
反政府活動家が、相次いで、精神に異常を来たした。
北尾は、事件の背後に「能力」者の影を感じ、捜査する。

事件の現場に立つと、自分のこころに入り込んでくるものがいた。
振り向くと、ひとりの女と目が合った。
北尾の心は邪悪なものに揺さぶられた。
北尾は、精神的疲労が激しく、女を逃がしてしまう。
ふたつの事件の現場写真に写る野次馬に、「あの女」が写っていた。

マスコミに、「黒い霧」を名乗るものから、新興宗教の教祖と、
反政府活動家の事件に対する犯行声明が出た。
さらに、次のターゲットは警察庁だ、という予告もされていた。

北尾は危険を感じ、警察庁長官に護衛を申し出るが、
長官は北尾の存在を公にしたくないため、断った。
次の日、長官は自宅のマンションを出た直後、
大勢のSPの前で、精神を崩壊させた。

北尾と直属の上司は、現場に駆けつけ、女の姿を追う。
上司が女を見つけ、捕まえようとすると、
突然上司は、叫び声をあげ、笑いながら公衆の面前で自慰を続けた。
彼の抑圧された性欲が、増幅され、彼の精神を壊したのだ。

北尾は、女を追い詰めるが、彼女の邪悪な気が心に入り込んでくる。
女は北尾に向かって言う。
「私を抱いてくれたら、悪いことやめてあげる」
女によって北尾のなかの性的なイメージが増幅された。
「なんだ、できないのね」
女は、けたたましく笑った。
北尾は「能力」と引き換えに性的には「不能」だった。
心の奥を覗かれた怒りで、北尾は自分を失いかけた。
北尾のどす黒い怒りが女によって増幅された。
これでは、女の思う壺だ。
北尾は精神力で、これをはねのけた。
女は、姿を消した。

警察内部に理解者をうしなった北尾は、
「能力」の存在を認めない捜査当局から、外された。
失意の北尾に、防衛庁の諜報機関を名乗る男が接触した。
「黒い霧」を名乗ったのは、実は防衛庁が極秘に開発した「心理兵器」だという。
女の名は、本宮ユリカ、といった。
情報は伏せられているが、防衛庁内で多くの犠牲者を出し、
ユリカは脱走したのだった。
男は、非公式にユリカを処分する協力を北尾に求めた。
北尾は了承した。

直後に北尾の携帯にメールが入った。
「彼女によろしく」
北尾は、危険を察し、恋人のアパートに踏み込んだ。
恋人は、別の男と寝ていた。
男は驚いて逃げ出していったが、恋人は、裸で笑い続けていた。
彼女の心は性欲が溢れかえっていて、北尾は吐き気がした。
恋人は、北尾の「能力」について理解してくれていた。
そして性的「不能」に関しても、わかっていて付き合っていた。
もう3年にもなる。
恋人が、北尾に抱かれないさみしさを感じていることを、北尾は知っていた。
そこを、ユリカに衝かれた。
北尾は、怒りで気が狂いそうになった。

外にとびだすと、ユリカが、待っていた。
「やっと本気出してくれたようね」
ユリカが凍りつくような微笑を見せた。
北尾は憎悪を増幅させユリカにぶつけた。
そして、ユリカの首を締めた。
「うれしい…」ユリカが首を締められながら、
恍惚とした表情で、言った。
「早く殺して…おにいちゃん」

その瞬間、北尾の潜在意識の奥底に眠っていた記憶が弾けた。

幼い北尾は、やはり幼いユリカの首を締めていた。
北尾とユリカは、「能力」者である母親の私生児である、双子の兄妹だった。
北尾の「能力」は、幼くして悪意に満ちていて、
母親の「能力」によってなんとか抑えられていた。
一方、ユイカの「能力」は心の闇を包み込むような広さをもっていた。
母親は、北尾の能力によって精神を病み、自殺してしまった。
北尾は母を殺してしまったことで、自分の心の闇がコントロールできなくなり、
精神的に崩壊寸前だった。
ユリカは、北尾の心の闇を自分に向け、首を締めさせた。
ユリカは、北尾の精神を救うため、自分の「能力」を解放し、北尾の「能力」を受け
入れたのだ。

北尾は、精神的空白の期間を過ぎ、政府の息のかかった孤児院に引き取られた。
ユリカは、母親が所属していた諜報機関によって、幽閉され、
「兵器」として、開発された。
年月が過ぎ、ユリカは、自分の死期を悟り、
心の闇に耐え切れずに、兄をさがすために事件を起こしたのだった。

北尾はユリカの心を読み、殺意が萎え、首を離した。
北尾はユリカを、救いたかった。
ふたりの心の闇と光を、合わせたかった。
「ひとつになろう」
北尾がユリカを抱き寄せようとしたとき、

ユリカの額を銃弾が貫いた。

防衛庁の諜報機関の男が放った銃弾だった。



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