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タイトル : 『ロボット創世記』
西暦2080年
渡部は愚痴りながらシャトルからステーションに降り立った。
シャトルの受付係のロボットのような対応にうんざりしていたのだ。
彼がこのように思ったのには訳がある、彼はロボット開発の第一人者なのだ。
宇宙ステーションのボロボロの廊下を進んでレストランに向かった。
この宇宙ステーションも50年前はピカピカの、宇宙開発の花形だった。
レストランに着くと地球の見える窓側の席に座った。客は彼一人しかいない。
丸いレトロのさび付いた窓から、地球を懐かしげに眺めた。
ウエイトレスが注文を取りに来て、地球風定食を頼む。なかなかかわいいウエートレスだ。
しばらくするとウエートレスが、地球風定食を持ってきた。
そして渡部に自分も一緒に食事を取ってもいいかとたずねた。
訳を聞くと、このステーションは次の地球行きの便を最後に閉鎖になり、渡部が最後の客とのことだ。
渡部はうなずいて、一緒に食べようと言った。
ウエートレスは表情豊かなよく笑う女性で、しかも知識が豊富で話が弾んだ。
ロボットのような対応の職員に疲れていた精神が癒されるのを感じた。
少しお酒が入って、渡部は自分の話を始めた。
「50年前の話だ」と渡部は言った。
ウエイトレスは驚いて「どう見ても、あなたは30そこそこにしか見えない!」と言った。
「理由は追々話すよ」と言って渡部は話始めた。
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50年前・・・
世間では人類初の月との中継宇宙ステーションが完成したと騒いでいた。
大学時代、工学科の渡部と、経済学科の立花はよき友人であった。
大学を卒業したら、共に会社を作ろうと約束していた。
また幸子という女性をめぐってライバル関係にあった。
幸子は結局渡部を選び二人は結婚することになる、立花はそれを素直に祝福した。
その後、渡部と立花は共にロボット製造販売会社T&W社を設立することになる。
渡部のロボット製造の技術と、立花の商売のセンスによって業績はアップしていた。
しかし、次第にロボットに人間のような感情を与えたいと考える渡部と、
ロボットはあくまで道具であると考える立花との間に亀裂が入るようになる。
ロボットの前に立っている渡部、そしてロボットに名前を聞く。
ロボットは答える「R3002、T&Wシャセイデス」そしてぎこちなく笑う。そうプログラムされているからだ。
この人間味のない受け答えが、渡部には我慢できなかった。
とうとう渡部は会社を辞め、新しい理想のロボット製造会社を作る事を決意する。
そして渡部は感情のあるロボット開発に没頭し、時間の多くをそれに費やすことになる。
妻の幸子はそれに少々不安を覚えるようになる。
立花の会社はその後も新しい商品をヒットさせ、業績を上げて行った。
渡部はその様子を苦々しく見ていた。
渡部の会社は、渡部が感情のあるロボット開発に没頭しすぎたために、業績は次第に悪化して行った。
数年の月日が経ち、渡部の会社は倒産寸前まで追い込まれていた。
そこに立花が数年ぶりに尋ねてくる。
立花は渡部に同情し、会社に戻ってこないかと持ちかけた。
渡部は首を振った、そして見せたいものがあると言って、立花を研究室に連れて行った。
研究室には一台のロボットが置かれていた。
二人が入るのを見るとロボットが言った。「こんにちは博士、お客様ですか?」そして自然に笑った。
立花はそれを見て驚いた。
「プログラムされた受け答えではない、このロボットが自分で考え答えているんだ」渡部が言った。
「ここまで凄いものを完成させるとは、さすがだな」立花は言った。
「これはもうすぐ商品化できる、これが完成すれば君の会社も危うくなるんじゃないか」渡部は嫌味を込めて言った。
立花が共同開発を持ちかけたが、渡部はそれを断って立花を追い返した。
渡部は勝利を確信していた。
しかし数日後とんでもないことが起こった、ロボットが研究室から盗まれていたのだ。
渡部は立花が盗んだと思い、立花の家に押しかけた。
立花はそんなことはしていないと言った。
渡部が「なら家の中を調べさせろ」と言うと立花は「それは出来ない」と言う。
それを渡部はロボットを隠し持っているからだと判断して、立花に詰め寄った。
そのとき「もうやめて!」と言う声が聞えた。
それは妻の幸子の声だった。
幸子はロボットにばかりにかかりきりで相手をしてくれない渡部に寂しさを感じ、立花と関係を持ってしまったのだ。
渡部は二人を責めることはなかった、そんな気力もなかった。
車に幸子を乗せて、家に向かった。
渡部は車の中で、幸子にロボット開発をやめると告げる。
すると幸子は涙を流して、ロボットをクローゼットに隠したことを告白する。
急いで家に帰ってクローゼットを開けるとそこにはロボットがいた。
ロボットは言った「こんにちは博士、かくれんぼは終わりですか?」
その後、渡部はロボットを立花に売り、幸子と別れた。
幸子がその後立花と結婚したようだと風の噂に聞いた。
喪失感に襲われていた渡部にある会社の広告が目に入る。
『月面冷凍保存で未来にタイムスリップ!』
渡部はその会社に申し込み、40年の未来までコールドスリープをすることになる。
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「そしてそこからさっき月で目覚めて、いまこのステーションに来たと言う訳だ」渡部がウエートレスに言った。
「そう、辛いことがあったね」ウエートレスが同情して言った。
「それにしても、40年も経てば、ロボットがそこら中にあふれていると思っていたんだが、なんだか拍子抜けだよ」渡部はそう言って笑った。
ウエートレスも笑う。
渡部はウエートレスを見て言った「君を見ているとなんだかなつかしい感じになるよ」
「私、そういう口説き文句って好きですよ」ウエートレスがそう言って笑った。
最終の地球行きシャトルに乗り込む渡部、ウエートレスが渡部をタラップまで見送った。
「これから地球に降りて、色々見てみるつもりだよ、世の中がどうなっているかとかね」渡部が言った。
「随分変わったから、きっと驚くわ、気をつけてね」ウエートレスが言った。
「ありがとうおかげで楽しかったよ」
「こちらこそ」二人は握手をした。
渡部が機内に入ってから言った「そうだ、よかったら君の名前を聞かせてくれないか」
ウエートレスが答えた「R5208、T&W社製です」
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