ChatGPTを使って物語を作る01

Bingで生成した物語「ロスト・メモリーズ」のイメージイラスト

ぴこ蔵です。Chat AIを使って効率的にストーリーを作る方法を考えています。

2023年4月2日現在、Bing(GPT-4)における「死」や「殺人」や「絶望的な状況」に関する倫理的な制限については、完全に自由なLLMや、言語表現用の機能が付いたAIが、もうそろそろ登場してくると思いますのであまり気にしていません。

ただ、今のところChat AIは、まだまだ「人情の機微」や細かい感情の揺れを理解できていないように思えます。

そんなChat AI(面倒くさいので以降は一般的に伝わりやすい「ChatGPT」と呼称します)と付き合うために、私が実際に使っているありふれたコツをいくつかご紹介します。

・最初に「あなたはプロの作家である」「一流の編集者である」などと決めつけて『ChatGPTをその気にさせる』ことが重要みたいです。これによって、ここで作るストーリーはあくまでも創作物であり、文芸作品であることを認識させるつもりで私はやっております。

・少なくともChatGPTでは『良心回路(倫理規制)』に抵触するような露骨で残酷な「死」や「暴力」の描写は避けたほうがいいでしょう。私は発想を途中で遮断されたくないので、そういう要素は後から自分で書き加えるようにしています。

・うまく使うためには、ChatGPTに質問を作らせて、ChatGPT自身に答えさせる、という方法がかなり有効だという印象があります。

 

私にとってChatGPTは、現時点では「非常に頭が良くて気前もいいが、一緒になって誰かの下衆い悪口を言いあったりはしない、距離感のある友人」というところです。

全てを丸投げにすると予定調和的で穏便なストーリーしか作ってくれませんが、要するに肝心な(読者の感情を揺り動かすような)刺激的な部分は、寂しいけど自分で書くしかないでしょう。

しかし、AIビッグバン時代なので、このような状況も短期間のうちにどんどん変わってくると思います。

私の作った条件を提示してChatGPTに発想させた物語を、ChatGPTの提案を取り入れながらも自分好みに改変していったのが、以下の記録です。

長くなるので制作過程のやり取りはかなり省略・圧縮していますが、本当は全部で20回以上、細かい質問や訂正依頼を繰り返しています。

不採用にしたアイデアも多く、それなりに手間はかかりました。それでも対話する相手がいる楽しさと、即座にまとめてくれる要領の良さには捨てがたいものがあります。

引用符が付いた青字の部分が私からの指示です。

★印の部分はChatGPTからの返事です。

<発想のヒントにした作品>

・第二次大戦下のイギリス。重要機密をヒトラーに届けるために祖国を目指す、冷酷で非情なドイツのスパイ「針」のスリリングなアクション・サスペンス『針の眼』(ケン・フォレット)

・1960年を舞台に、自己中心的に見える母親と暮らす少年のひと夏の恐怖と成長の物語を、超能力を持つ老人との出会いを中心に描いたスティーヴン・キングの『アトランティスのこころ』より『黄色いコートの下衆男たち』

……この2作品のエッセンスを混ぜ合わせて、以下の<イメージ>を作り、まずはChatGPTに投げかけました。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

> あなたはプロの作家です。次のようなイメージの小説を書くなら、どのような話を作りますか? 800文字以内であらすじをまとめてください。3パターンお願いします。

> <イメージ>

> 近未来の戦時下という激動の時代を表現するために、子どもと年をとった者とのロードムービー的な展開で、サイバーパンクなSFをイメージしたビジュアル。

> そんな世界観の下で繰り広げられる、追うものと追われるものとの運命のストーリー。

> もちろん驚愕のどんでん返し入り。

 

★1.「逃亡者」 近未来の戦時下、子どもの主人公は、戦争によって家族を失い、一人で逃亡することに。途中、年老いた元兵士と出会い、彼と共に旅をすることに。二人は、サイバーパンクな世界を駆け抜けながら、追手から逃れるために奔走する。しかし、最後には衝撃のどんでん返しが待っていた。

2.「ロスト・メモリーズ」 近未来の戦時下、子どもの主人公は記憶喪失になり、自分が誰かも分からず彷徨うことに。ある日、彼は年老いた男性と出会い、彼と共に記憶を取り戻す旅をすることに。二人はサイバーパンクな世界を駆け抜けながら、過去を探し求める。しかし、最後には衝撃のどんでん返しが待っていた。

3.「レジスタンス」 近未来の戦時下、子どもの主人公は戦争によって家族を失い、一人で生きることに。ある日、彼は年老いた元レジスタンスの男性と出会い、彼と共にレジスタンス活動をすることに。二人はサイバーパンクな世界を駆け抜けながら、権力者から逃れるために奔走する。しかし、最後には衝撃のどんでん返しが待っていた。

 

> 2.「ロスト・メモリーズ」の設定を変更してください。「年老いた男性」という部分を「年老いた女性」に、また、主人公の記憶を奪ったスパイを追加してください。

> 主人公と年老いた女性の行動の目標は、そのスパイを追い詰めて、主人公の記憶の中にあった機密情報を取り返すことです。この話を簡単なあらすじにしてください。

 

★「ロスト・メモリーズ」

近未来の戦時下、子どもの主人公は記憶喪失になり、自分が誰かも分からず彷徨うことに。

ある日、彼は年老いた女性と出会い、彼女と共に記憶を取り戻す旅をすることに。

二人はサイバーパンクな世界を駆け抜けながら、主人公の記憶を奪ったスパイを追い詰める。

彼らの目標は、主人公の記憶の中にあった機密情報を取り返すこと。

しかし、最後には衝撃のどんでん返しが待っていた。

 

> どんでん返しについてもっと詳細に説明してください。

★物語の終盤のどんでん返しは、驚きであり予想外のものです。

例えば、年老いた女性が実はスパイと一緒に働いており、主人公を助けることに独自の動機があったことが明らかになるかもしれません。

または、主人公の記憶が盗まれたのではなく、トラウマ的な出来事から彼らを守るために、彼ら自身の心によって抑圧されていたことが明らかになるかもしれません。

別の例としては、主人公が実はスパイであり、彼自身が追い詰められることを恐れて記憶喪失を装っていたことが明らかになるかもしれません。

または、年老いた女性が実は主人公の家族の一員であり、彼女が主人公を助ける理由が家族愛にあったことが明らかになるかもしれません。

どんでん返しの結末は、物語をより面白くし、読者を驚かせるために作家が創造するものです。可能性は無限であり、最も魅力的で満足のいくどんでん返しが何かを決定するのは作家次第です。

 

> それでは、年老いた女性が実はスパイと同一人物であり、その動機は主人公を目的地に拉致するためだったというどんでん返しにしてください。

> また、結末では主人公が年老いた女性を倒してください。

 

★「ロスト・メモリーズ」 近未来の戦時下、子どもの主人公は記憶喪失になり、自分が誰かも分からず彷徨うことに。ある日、彼は年老いた女性と出会い、彼女と共に記憶を取り戻す旅をすることに。二人はサイバーパンクな世界を駆け抜けながら、主人公の記憶を奪ったスパイを追い詰める。彼らの目標は、主人公の記憶の中にあった機密情報を取り返すこと。

しかし、旅の途中で二人は様々な困難に直面する。彼らは、戦争で荒廃した街を通り抜け、敵対する勢力から逃れながら、目的地へと向かう。

そして、ついに終盤。主人公は衝撃的な事実を知ることに。年老いた女性が実はスパイと同一人物であり、その動機は主人公を目的地に拉致するためだったのだ。主人公は激しい戦いの末、年老いた女性を倒し、自分の運命を取り戻す。

 

  • 追加と訂正の依頼(実際には1つずつやり取りしています)

> ・この物語の視点を「子ども」から「年老いた女性スパイ」に変更してください。年老いた女性スパイは子どもを保護しながら、国家権力からの追手と戦うことになります。

> ・子どもは「脳にインプットされた『ブラックホール兵器』に関する重要な機密を自分の記憶ごと失っており、それを奪った異星人のスパイを追いかけて、記憶を取り戻さなければならない」という嘘を年老いた女性スパイによって信じ込まされます。

> ・しかし、実は機密の記憶を脳から取り出すには、子どもの脳を破壊する必要があります。

> 本当は追手の国家権力も子どもを捕まえてその脳を破壊し、機密を取り出そうとしていたのです。

> ・宿泊所を営む気弱な若い女性を登場させてください。彼女は最初、女性スパイに脅されて二人を宿泊させますが、実は夫に虐待されており、最後は女性スパイの手を借りて夫を警察に告発し、逮捕させることに成功します。

> ・旅の途中で、子どもは女性スパイを助けるために、自分を保護しようとした追手を裏切ります。年老いた女性スパイはそんな子どもを優しく抱きしめます。

> 読者が没入感を得られるように、物語の背景となる世界観をより詳細に描写してください。

>※ そんなやり取りを繰り返してChatGPTにまとめてもらったあらすじに、話を分かりやすく補足するために、登場人物の名前やいくつかの文章を自分の手で書き加えました。※

> あらすじここから↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 

 

ロスト・メモリーズ」 

近未来の戦時下、世界は荒廃し、人々は生き残りをかけて戦っていた。街々は、戦争の影響で荒れ果てており、建物は崩れ落ち、道路は破壊されていた。空気は汚染され、人々はマスクを着用していた。

国家権力は、戦争を制するためにあらゆる手段を講じており、市民の自由は制限されていた。街角には監視カメラが設置され、国家権力による監視が行われていた。

一方で、アナーキーでサイバーパンクなテクノロジーが発達しており、人々はアンダーグラウンドで高度なコンピューターやロボットを使用して生活していた。

まだ子どもの主人公「ムラサキ」は記憶を失っており、なぜか国家権力によって追い回されていた。ムラサキは自分が誰かも分からず彷徨うことに。 

そんな時、彼は「脳にインプットされた『ブラックホール兵器』に関する重要な機密を自分の記憶ごと失っており、それを奪った異星人のスパイを追いかけて、記憶を取り戻さなければならない」という情報を、年老いた謎の女性によって伝えられる。 

彼女は自称「異星からやってきたアンナ」。 

彼は年老いた女性・アンナと共に旅をすることに。

二人はサイバーパンクな世界を駆け抜けながら、ムラサキの記憶を奪ったスパイを追い詰める。彼らの目標は、ムラサキの記憶の中にあった機密情報を取り返すこと。 

しかし、旅の途中で二人は困難に直面する。彼らは、戦争で荒廃した街を通り抜け、執拗にムラサキを付け狙う国家権力の追手から逃れながら、目的地へと向かう。 

ムラサキはアンナを、本当は自分の家族なのではないかと感じ始めていた。 

旅の途中、二人は気弱な若い女性と出会う。

その女性は最初、アンナに脅されて二人を宿泊させるが、実は夫に虐待されていた。彼女はアンナの手を借りて夫を警察に告発し、逮捕させることに成功する。 

そんな時、ムラサキはアンナを助けるために、自分を保護しようとした警察官を裏切る。アンナはそんなムラサキを優しく抱きしめる。 

それからというもの、アンナはムラサキに「プロセス」という名前の鍼の奥義を教え始める。「護身のためだ」とアンナは言った。繰り返し行われる特訓は厳しく、ムラサキはへとへとになりながらも身につけていく。 

そして、ついに終盤。ムラサキは衝撃的な事実を知ることに。 

アンナが実は本当に異星人で、二人が追いかけているはずのスパイ、というのはアンナの脳の一部を埋め込んで作られた分身サイボーグであり、彼女がその全ての行動をコントロールしていたのだ。

しかも、その動機はムラサキを目的地に誘導し、UFOに拉致させるためだったのだ。

アンナこそが本物の異星のスパイであり、ムラサキを拉致しようとしたのは彼の脳に埋め込まれた『ブラックホール兵器』の機密情報を奪うためだったのだ。

実は機密の記憶を脳から取り出すには、ムラサキの脳を破壊する必要があった。

ところが、本当は追手の国家権力もムラサキを捕まえてその脳を破壊し、機密を取り出そうとしていたのだ。

しかし、ここにきてアンナの様子は明らかに変調をきたしていた。

「アンナは僕を殺すの?」

「私はお前を殺さない。お前が私を殺す」

そこに国家権力の追手が軍団を率いて殺到し、二人はやむなく荒野に逃げ込んだ。 

すると上空に巨大なUFOが飛来する。国家権力の追手たちはUFOの発した怪光線によってバタバタと昏倒していった。 

UFOは次に二人を機内に吸い上げようとするが、アンナは「逃げていたスパイ・サイボーグ」を呼び戻し、その武器を使って抵抗する。 

しかし、UFOはアンナとスパイ・サイボーグを狙って攻撃し、直撃を受けたスパイ・サイボーグは破壊され、アンナは地面に倒れ伏す。 

アンナは、駆け寄ってきたムラサキに命じて、彼女の手で教え込んだ「プロセス」の手順通りに、彼女自身の経絡に鍼を打たせる。 

怯むムラサキに彼女は言う。 「私はもう動けない。そろそろ平穏を取り戻す時が来た。だから私の心臓を止める必要があるのだ」 

ムラサキは泣きながら最後のひと鍼を打つ。アンナの呼吸が停止し、目を閉じて動かなくなる。 

彼女は死んだと思われた。

が、数分間の沈黙の後、その目がかっと見開かれた。

復活したアンナは、本来の戦闘機能を全解放し、子どもを拉致するために降下してきた巨大なUFOを破壊する。 

すべてが終わった後、年老いた女性が、子どもを連れて、気弱そうな若い女性の営む宿泊所を訪れる。 

二人の女性が抱き合うシーンで物語は終わる。

> あらすじここまで↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

 

以上です。

2000文字程度のあらすじを作るのにかかった時間は、実質2~3時間だと思います。途中で外出したために集中力が途切れたり、進め方に迷ったりしていたので、手順を確立しさえすれば1時間ぐらいで完成するのではないかと思います。

コツとしては、例えば「どんでん返し」や「大逆転」や「タイムリミット」などの『型』を細かく指定して、書かせたい方向性や成果をしつこく要求することが、ChatGPTを使いこなすためには大事だと感じています。

今後は全てのワープロに搭載されるChatGPTを筆頭としたAIを使うことが、作家にとっても大前提となると思います。あらゆる文章はAIを通して生成されるという認識が当たり前になるでしょう。

世の中がそうなった時、読者はむしろ「この文章をどうやってAIに作らせたか」という手順のほうに興味を持ちかねません。

そんな「AIへの手順の提示」は、作家に要求されるもう一つの新しい業務になりそうな予感すらします。

逆に、生身の人間が書いたオリジナルの文章は新たな価値を帯びて、初期のQueenのアルバムに記述されていたような「No Computer」という但し書きが付くようになるのかもしれません。

すでに新時代に突入してしまった今、私の小さな妄想が少しでも参考になれば幸いです。